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2021年9月10日更新
[沖縄・移住]暮らしをサイズダウン シニアから楽しむ沖縄移住[6]
[文・写真/青木 容子]
60代後半で沖縄に移住した青木容子さん。本連載は、青木さんが移住に伴って、資産整理や断捨離などの暮らしをサイズダウンした経験と、沖縄で生活する中での楽しみを紹介します。
身軽で楽しみが尽きない暮らし
これまで5回にわたって静岡から沖縄に移住するまでの体験をつづってきました。息子たちは独立し、親をみとり、60代で移住。今後の暮らし方を考えて、「元気なうちに整理しておこう」と、持ち物を整理、静岡の家やアートギャラリーといった不動産を手放し、手に入れたのは沖縄での「身軽で楽しみの絶えない生活」です。
沖縄では借家暮らしを続けています。家を持たないことに周りから心配されることもあります。ですが、六畳一間から始まった私たち夫婦は、家を持つことをそこまで重視していなくて、むしろ、ものは減ったし、夫婦どちらかに何かあった時は借家を返すだけなので整理しやすいと、精神的なゆとりさえ持てています。不動産の売却金で残っていた返済を清算できた、固定資産税にとらわれないといったお金の部分でも身軽になれました。家とギャラリーは、最後に売れた最も高額なアート作品となりました。
最近のお気に入りは、北谷のビーチで静かな波音を聞きながら夕日を眺める至福の時間。帰りの時間を気にしなくていい生活になり、日没後の神秘的な空の色も楽しめる
旅感覚の日常に豊かさ
私たちの人生のテーマは「旅」。新しい環境での生活や人との縁にワクワクする。沖縄はすぐ近くに海があり、日常に旅がミックスされています。雨が降っても傘をささないように、人々はおおらかで、カチッとし過ぎることのない雰囲気がとても好きです。自分のありのままの姿を受け入れられているように感じられて、とても肌に合います。そして何より、今まで住んできた地域と違う暮らし・文化に触れ、面白い発見や楽しい刺激があって、移住して5年たった今でもワクワクが尽きません。
移住当初は修学旅行生も受け入れる民泊を営んでいましたが、年齢とともにできなくなることも増え、「今その時で楽しくできることをしよう」と切り替えてきました。朝食は毎日同じメニューに、家での料理は簡単に…。どうやったら省けるか、その上で豊かな暮らしにするには、と考えるのも楽しみの一つです。今は静岡のアートギャラリーでの人脈やノウハウを生かして北中城村でアートショップを営んでいます。県外との架け橋となって、沖縄の人にもアートの楽しさや面白さを伝えながら、ここでの暮らしを楽しんでいます。
=おわり
沖縄らしさを味わえる那覇の平和通り。改修中の牧志公設市場近くなどをぶらぶら歩くのも楽しい
あおき・ようこ/1948年、長崎市生まれ。夫・嘉一郎とともに、90年から静岡県富士宮市で企画アートギャラリー「芸術空間あおき」を経営。2016年に沖縄移住し、北中城村瑞慶覧のカフェ「沖縄物語」内でアートショップを営む。☎︎090・4799・2873
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1862号・2021年9月10日紙面から掲載