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2020年12月18日更新
コロナ影響 地価景況マイナス|気になるコト調べます![68]
沖縄県不動産鑑定士協会(髙平浩一会長)は12月1日、地価動向や半年後の見通しなどについての景況感をまとめた「県不動産市場DIレポート」を発表した。新型コロナウイルスの影響を大きく受け、地価動向DIは半年前の5月調査から2期連続でマイナスとなっている。さらに半年後も下落感が強まると予想した回答が多かった。
沖縄県不動産市場DIレポート
※「DI」とは、現況や先行きの見通しの指数。例えば地価動向DIであれば「上昇」と判断した業者の割合から、「下落」と判断する業者の割合を引いたもの。プラスであれば地価動向の景況感は前向き(上昇傾向)に考えられていると言える。
住宅地は下落感弱まる
同調査は県内の不動産業者にアンケートを取り実感値などを集計したもので、5月と11月の年2回行われている。今回は1477社のうち、のべ303社から回答を得た。
地価動向に関する実感値は、前回5月に引き続き住宅地、商業地、軍用地すべてでマイナスとなった=下表。特に軍用地の下落感が強く、前回調査から25.4ポイント低下してマイナス34.9、商業地は1.3ポイント低下してマイナス20.3だった。
※指標で2014.11~2020.11までの数値は実感値、2021.5の数値は、調査時点における半年後の予測値を示している
一方で、住宅地は前回より12.9%ポイント上昇してマイナス9.1となった。「厳しい状況が続いているものの、宅地に関しては少し下落感が弱まった」と不動産鑑定士の伴清敬さんは話す。
ちなみに緊急事態宣言が発令された前回5月調査における、半年後(11月)の予測値は住宅地でマイナス71.1ポイント、商業地でマイナス72ポイント、軍用地でマイナス58.6ポイントだった。「それと今回の実感値を比較すると、そこまで下落感は強まらなかったようだ」。
ただ、今後半年後(2021年5月)の予測は、住宅地でマイナス34.2、商業地はマイナス42.7、軍用地はマイナス39.7と下落感が強まる傾向がみられる。
半年後の予想値 県内全域で下落
地域ごとの住宅地動向DIを見ても、全地域で改善した=下表。「前回調査では全エリアで急落していたことを考えると、地価の下落感は総じて薄らいでいる。特に那覇市小禄地区や、本島南部、本島北部、離島部はプラスに転じている」
その一方で、国際通りや那覇市松山などの繁華街を含む那覇市西部や那覇市東部、那覇市周辺部は「まだマイナス値が大きい。地域によって地価の方向性への感度にばらつきが見られる」と説明する。
今後半年間の予測値については、今回の実感値と比較して「ほぼ全域で地価下落を予測する向きが強い」と話した。
ほかにも、新型コロナウイルス感染拡大による影響とその見通しについても調査を実施した。成約価格や取扱件数の変動については左ページに掲載している。
調査の詳細は、県不動産鑑定士協会のホームページ(http://www.fudousan-kanteishi.okinawa)で確認できる。
特別調査 新型コロナウイルスの影響と今後の見通し
ことし3月以降の「売買の取引件数」の変動
住宅地では県全体の約4割が0~10%の下落と回答。商業地では約4割が0~30%の下落と回答し、いずれでも「下落なし」の回答を上回った。
地域別にみると、地価水準の高い那覇市西部、東部のほか、価格上昇が著しかった那覇市周辺部や離島部で下落回答が高かった。商業地でも地価水準の高い那覇市西部や東部での下落回答率が高く、特に松山や国際通りを含む那覇市西部では10~30%下落したとの回答が2割を超えた。
コロナの影響はどのくらい続くと思うか
住宅地、商業地ともに5割程度が半年以内~2年以内の影響と回答。なお、分からないとの回答率は住宅地に比べて商業地の方が約1割高く、先行きの不透明感は商業地の方が強い結果となった。
ことし3月以降の「成約価格」の変動
住宅地、商業地ともに成約価格などと比べて、5%以内の小幅な減少回答率が少ない一方、30%を超える強い減少回答率が大きく、より鮮明な後退傾向がみられた。
新型コロナウイルスによる不動産市場への影響に関する意見(概要)
・企業や個人の収入減少により、不動産購入意欲が低迷している。
・事務所・店舗の退去、賃料の低い賃貸物件への引っ越しが見られる
・企業、個人ともに投資意欲が高かった状況からの変動のため、影響は大きい。
・宅地や中古住宅の需要はまだあるが、新型コロナウイルスの影響で銀行の融資条件が厳しくなっている
・コロナ収束後を見据えて動いている層、値が下がるのを待っている業者もおり、不動産価格の大幅な下落はないと思う
・リモート勤務を前提とした県外からの移住が少しずつ増えている
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取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1824号・2020年12月18日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。