メンテ
2024年12月13日更新
20年超のブロック塀は注意!|知っておきたい!補修・改修のキホン⑨
今ある家に住み続けるには定期的なメンテナンスが欠かせない。が、何から手をつけていいか分からない人も多いのでは? 外装を中心に建物全般の補修改修を手掛けるタイズリフォームの赤嶺雄一郎さんに、ポイントを解説してもらう。今回は、全国で倒壊事故が多発しているブロック塀について。県内のブロック塀事情やセルフチェック・対処法を紹介します。

文・赤嶺雄一郎 ㈱タイズリフォーム代表取締役
20年超のブロック塀は注意!
倒壊事故が多発
2018年6月に発生した大阪北部地震をご記憶でしょうか? この地震でブロック塀が40メートルにわたり倒壊し、通学中の女児が亡くなる痛ましい事故が発生しました。
1978年の宮城県沖地震でも同様の事故が発生し、81年に改正された建築基準法でブロック塀の耐震基準も引き上げられましたが、現行規定に適合しない古いブロック塀や経年劣化した塀が倒壊する事故が全国各地で多発しています。
千鳥目地は注意
ブロックのJIS規格寸法は、長さ39センチ×高さ19センチ×厚さ10~19センチです。積み方には「芋目地積み」と「千鳥目地積み」の2種類があります=写真1。ブロックを積む際、縦横に鉄筋を配しモルタルで固めたものがブロック塀となり、建築基準法では鉄筋の径は9ミリ以上、縦筋と横筋の間隔はいずれも80センチ以下と規定されています。

写真1 右の芋目地積みはブロック間に容易に鉄筋を入れられるのに対し、左の千鳥目地積みはブロックを持ち上げ、穴に鉄筋を通しながら落とし込む必要があるため施工が難しく、鉄筋量も不足しがち。笠木(最上部に施工する仕上げ材)があると、ブロック内に雨水が入りにくくなる
芋目地はブロックとブロックの間のつなぎ目に鉄筋を縦横にしっかりと入れられるのに対し、千鳥目地は「ブロックの穴に配筋」しなければならないため、鉄筋量が少なくなりがちです。また、塀の高さが1.2メートル(6段)を超える場合は、3.4メートルごとに控え壁を設ける必要があります=図1。
図1 ブロック塀のチェックポイント

鉄筋不足多い沖縄
ブロック塀の耐用年数は30年程度と言われていますが、沖縄は地震が少ない地域であるため、旧基準で設置されたブロック塀が現在でも数多く残っています
2018年に県が実施した県内のサンプリング調査では、多くのブロック塀が前述した建築基準法の何らかの規定に適合していないことが判明。特にほとんどのブロック塀は無筋か鉄筋が不足している状況でした。言うまでもなく、鉄筋が少ないブロック塀は地震や風圧などに弱く、災害時に倒壊する恐れが高くなります。
セルフチェック可能
鉄筋や基礎の有無、正確な傾斜の測定などは専門家でないと判断が難しいと思いますが、セルフチェックできる項目も数多くあります。具体的には①1981年以前に設置されたものか、②設置20年以上経過しているか、③表面に著しいコケやカビが発生していないか、④千鳥目地で積まれていないか、⑤高さが2.2メートルを超えていないか、⑥大きなひび割れや傾斜がないか、⑦塀の頂部に笠木(かさぎ)があるか、⑧ブロック塀が擁壁(ようへき)を兼ねている、または擁壁の上に設置されていないか、などが挙げられます。
擁壁とは、高低差がある土地の土砂が崩壊するのを防ぐため斜面を補強した壁のことで、原則鉄筋コンクリートで作ることが望ましいですが、ブロック塀が擁壁を兼ねている場合も多く見られます。
フェンスや植栽に
ブロック塀は一度設置されると長きにわたりメンテナンスがおざなりになりがち。隣人との共有物であればなおさらです。外壁塗装工事を実施される際には、同時にひび割れの補修や塗装の実施をお勧めします。
また、老朽化したブロック塀を新規に作り替えると高額な費用を要するため、軽量で比較的安価な「目隠しフェンス」や「手入れが容易な植栽」への変更、L型の鋼製支柱で補強する工法などもあります=写真2。

写真2 ブロック塀専用に開発されたL型の亜鉛メッキ鋼材で補強を行った例。基礎くいも併設するため、塀を強固に補強できる。
万が一、ブロック塀の倒壊で事故が発生した場合は、所有者に管理責任が問われます。セルフチェックで判断できない場合は、専門家に調査を依頼されることもご検討ください。

【教えてくれた人】
あかみね・ゆういちろう/㈱タイズリフォーム代表。1級建築士、マンション維持修繕技術者、既存住宅状況調査技術者、宅地建物取引士
◆㈱タイズリフォーム
電話=098·975·7815
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2032号・2024年12月13日紙面から掲載