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2023年11月3日更新

【8】塗装の役割と種類|建物を美しく保護 快適さも[マンション修繕のススメ]

文・あかみね かつじ/一級建築施工管理技士
一言で「塗装」と言っても役割はいくつかあります。特に建物にとって厳しい環境の沖縄では、塗装は見た目だけでなく、外壁を保護したり室内を快適にしたりと大切な役割を担います。今回はその役割と塗料の種類について解説します。



耐久性高めて安全保つ

塗装の役割は主に三つです。一つは「保護」。雨、風、紫外線、汚染物質、カビ、藻類などから建物を守ります。そうすることで建物の耐久性が向上し、ひび割れや爆裂などの劣化や損傷を防ぐことができます。建物の安全を保ちやすくなるほか、メンテナンスの頻度も減らせます。

次に「美観と装飾」。建物の外観を美しく装飾し、見た目を良くします。建物に個性を与えたり、周囲の環境に調和させることもできます。

三つ目が「機能」。塗料の中には特殊な機能を備えたものもあります。例えば、外からの熱を遮り室内を快適に保つ遮熱塗料、光による化学反応で汚れを分解する光触媒塗料などです。


塗装面に水をかけた様子。水を弾いて、コンクリートに水が浸透するのを防ぐ



Before
          
After。塗装することで建物の印象が変わる


高性能だと価格も上昇

現在、建築物で塗装で使用されている塗料は大きく5種類に分けられます。含まれる樹脂などによって性能や価格が異なります。

最もスタンダードなのがシリコン塗料。シリコン系やアクリルシリコン系を主成分とした合成樹脂塗料で、耐久年数は約10~15年。最近では耐久年数15~20年のフッ素塗料もよく使われるようになってきました。さらに耐久性の高い無機塗料もあります。

ただし耐久年数はあくまでも目安。日差しがよく当たる建物の南面など、環境によっては目安よりも短い年数で劣化することもあります。塗装表面が粉状になるチョーキングなど、保護機能が低下しているサインを見逃さないようにしながら塗り替えるようにしましょう。

塗装表面が粉状になるチョーキング。塗り替え時期の目安とされる


目的や予算に合わせて

1平方㍍あたりの塗装単価は、アクリル塗料なら1000~2000円程度、無機塗料なら3500~5500円ほどです。ただし、マンションの場合、塗装範囲が広いので差額も大きくなります。それぞれの目的や予算、環境に応じて選ぶようにしましょう。

例えば、室内の壁の塗装なら、劣化要因が少ないのでアクリル塗料も視野に入れるといいでしょう。また、とにかく塗り替えの回数を少なくしたいなら、シリコン以上の性能の塗料が選択肢となります。2~3社から見積もりを取った上で塗料の特徴を聞き、比較・検討するといいでしょう。


 建築物で使われる主な塗料 
※塗料名下のカッコ内は耐久年数
※金額は施工費含む。足場費用は含まない 


アクリル塗料(約3~5年)
他の塗料と比較して圧倒的に価格は安い(約1000~2000円/平方㍍)が耐久性は低く、塗り替えを考慮するとトータルコストは高め。

ウレタン塗料(約5~10年)
アクリル塗料よりも価格は高い(約1200~2500円/平方㍍)が、それに比例して耐久性もUP。近年、外壁塗装に使用する頻度は減少傾向。

シリコン塗料(約10~15年)
外壁塗装で最もスタンダードな塗料。価格(約2300~3500円/平方㍍)と耐久性のバランスに優れている。

フッ素塗料(約15~20年)
シリコン塗料より耐久性が高く、塗り替えを考慮したトータルコストは抑えられるが単価は高い(約3000~5000円/平方㍍)。他の塗料と比べると弾力性はなく、塗膜が硬めなのでひび割れが起きやすい。

無機塗料(約15年~)
紫外線にさらされても劣化しにくい無機物の性質を利用することで、高い耐久性を有する。汚れにも強く燃えにくい。一方、フッ素塗料と同様に塗膜は硬く、ひび割れを起こしやすい。高耐久だが単価は高い(約3500~5500円/平方㍍)。



 ひとことアドバイス 

・塗料にはそれぞれ、主成分が水の「水系」 と、シンナーを含んだ「溶剤系」があ る(シリコン塗料の水系、シリコン塗 料の溶剤系など)。最近はSDGsの観点から環境に配慮した製品が増加しており、人や自然に優しい水系塗料が主流になりつつある。





あかみね・かつじ/TNOコンセプト(株)・本気でペイント事業部営業部長、一級建築施工管理技士
電話=0800・2000・486

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1974号・2023年11月3日紙面から掲載

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