リノベ
2021年5月21日更新
【沖縄】「鉄筋コンクリート造のげた履きの家」|今ある家をバージョンアップ[13]
敷地内に駐車場が確保できない場合など、1階のピロティ(げた履き)部分を駐車場にした鉄筋コンクリート(RC)造の住宅を沖縄ではよく見かけます。ピロティに壁を作り、水道と電気があれば、問題なく住めるように思えますが、そのためには事前にいろいろな確認が必要です。 文・徳里政俊(リノベーション協議会沖縄支部 支部長)
case13「鉄筋コンクリート造のげた履きの家」
ピロティ部分に増築できる?
◆相談&課題2世帯住宅にするため、駐車場にしているピロティを住宅にしたい。
◆リノベのプロが提案!
延べ床面積、耐震基準など要確認。
クリアしていれば工事できるかも。
延べ床面積に入っているか?
「1階のピロティを増築して2世帯住宅にしたい」という相談を受けることがあります。その際、既存建物の設計図書や建築確認済証が残っているかが重要になります。残っていた場合、ピロティの床面積が延べ床面積に入っているかどうか確認します。延べ床面積に入っていれば、工事できる可能性がありますが、工事可能面積は今の法律に基づいて調べる必要があります。
一方で、延べ床面積に入っていなかったり、各種書類が残っていない場合は、増築の確認申請が必要となります。まず建物が「既存不適格」でないか調べなければなりません。「既存不適格」とは、建築した当時は適法な建物だったものの、法律の改正によって現在では適法ではなくなったものを指します。既存不適格の状態のまま増築をすると、違法建築になってしまいます。増改築を行う場合には、不適格となった状態を解消して、現在の法律に適合するようにしなくてはなりません。
【Before】
駐車場として利用していた約22坪のピロティ。「息子家族の住まいをここに増築したい」と相談を受け、当時の確認済証を確認した上で工事がスタートした
【After】
1階ピロティに増築した息子家族の住まい。間取りは2LDKで、水道や電気、ガスなども使える
現行の耐震基準クリアが必須
既存不適格となる要因の一つが耐震基準。不適格を解消するためには現行の建築基準法に適合させる必要があります。
木造の耐震補強工事とは異なり、RC造の場合、工事前に既存建物の鉄筋の配置を調査した上で、鉄筋の太さや配筋方法を決定。物件によっては既存建物のコンクリート強度を確認することもあります。木造に比べ、RC造の耐震補強工事は、調査に費やす期間や工事期間、コスト面での負担がはるかに大きくなります。
施工方法と周辺環境も大事
増築の確認申請が不要だとしても、適切な施工方法でなければひび割れを起こし、雨漏りや塗装の剥がれを招いたりします。
また、新しく窓を設けるなら、採光や換気を確保するためにも、周辺環境が大事なポイント。隣の建物との距離が近いと、日光がほとんど室内に入らなかったり、プライバシーの問題で窓が開けられなかったりと、住環境としては好ましくない場合もあります。
このように、ピロティ部分に増築するには専門的な知識や情報が不可欠です。また、住宅ローンを利用する場合は融資条件も要確認。まずは建築士などの専門家に相談されてはいかがでしょうか?
執筆者
とくざと・まさとし
1978年嘉手納町出身。西日本工業大学建築学科卒業。2016年にLa.fitを立ち上げ、20年に(株)アーキラボ ラフィットとして法人化。建築士、宅地建物取引士など多数の資格を有する。(一社)リノベーション協議会沖縄支部長を務める。
◆(株)アーキラボ ラフィットの強み
考え方や好みは、十人十色。既成概念にとらわれず、住む人、使う人にとことん向き合い、「デザイン」「住み心地」「価格」のバランスを大切に一緒に作り上げます。
うるま市字塩屋307-5 電話098-988-5128
https://al-lafit.co.jp/
■リノベーション協議会とは 消費者が安心して既存住宅を選べる市場をつくり、既存住宅の流通を活性化させることを目的に、2009年7月に発足したリノベーション業界団体。全国1000社弱の企業等が参画し、優良なリノベーションの統一規格「適合リノベーション住宅(R住宅)」を定め、普及推進している。その年のリノベNo.1を表彰する「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」も年々注目が集まっている。https://www.renovation.or.jp
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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1846号・2021年5月21日紙面から掲載