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2024年8月16日更新

利便性の高い家族信託 軍用地の相続にも有効[相続計画始めよう!地主・家主の生前対策⑤]

家族がもめないための「幸せ相続計画」の普及・啓蒙をする「全国幸せ相続計画ネットワーク」。60を超える士業や企業が会員に名を連ねる。今回は同ネットワークの共同代表・亀島淳一さんが「家族信託」について解説する。「認知症対策だけでなく、軍用地の相続にも有効」と説明する。

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利便性の高い家族信託
軍用地の相続にも有効

家族がもめないための「幸せ相続計画」の普及・啓蒙をする「全国幸せ相続計画ネットワーク」。60を超える士業や企業が会員に名を連ねる。今回は同ネットワークの共同代表・亀島淳一さんが「家族信託」について解説する。「認知症対策だけでなく、軍用地の相続にも有効」と説明する。
 
「家族信託」は分けにくい不動産の相続や、整理に時間がかかる借地の相続などにも有効

財産の凍結を防ぐ

前回は、軍用地相続は分け方でもめやすい、相続税の納税資金が足りずに売却するケースもある、ということを紹介しました(7月19日号)。

相続でもめる理由の多くは財産の分け方。相続で家族をもめさせない対策のひとつとして考えられるのが「家族信託」です。

近年、相続に関連するワードとしてよく耳にするようになった家族信託。認知症対策としての活用がよく知られています。家族信託は、「元気なうちに、大切な財産を信頼できる人に託す」仕組みで、柔軟性も高く、さまざまなメリットを得られる利便性の高い制度です。

基本的な仕組みとしては、財産を管理する権限や名義を信頼できる家族に託し、その財産が生み出す利益を誰が受け取るのかを決めます。財産管理の権限を家族が持つことで、当初、所有していた人(例えば親)が認知症になっても、財産が凍結されることはありません。それが家族信託が認知症対策として有効だといわれる理由です。

この仕組みを利用して、財産の分割対策もできます。例えば、軍用地が1筆あり、年間地代は300万円。これまでは親の名義で、親だけが地代を受け取ってきたとします。将来、4人の子どもたちにどう分けて相続させようかと悩んでいる場合、共有や分筆を考えるかもしれません。

共有や分筆は、価値を下げたり売りにくくなったりするだけでなく、次の世代以降の相続が難しくなりトラブルの種にもなりがちなので、相続の専門家としてはあまりおすすめできません。

内容の柔軟性も高い

こんなときに有効なのが家族信託です。例えば、名義と管理権限は長男に移し、父親が存命の間は地代を父親が受け取るように設定します。名義を変える際に贈与税はかかりません。その後、父親が亡くなっても名義は長男のままにしておき、地代だけを子ども4人で公平に分ける、といったようなことが可能です。分けにくい不動産も、収入(お金)だけを分けることで、分配しやすくなります。

ほかにも、子どもの中に浪費家がいた場合の対策としても使えます。一括して渡すとすぐに使い切ってしまう心配がある場合、地代を毎月一定額ずつ渡すよう家族信託で定めておくこともできます。

軍用地のほかにも、アパートなどの収益物件や借地の相続対策にも使われています。

内容次第で柔軟に活用できる「家族信託」。ただ、それが本当に必要かどうか、どのような目的のために、どういった内容の信託を組むのかを考えることが大切です。

とても便利な制度なのですが、残念なことに正しく活用されていない事例も少なくありません。次回は家族信託のその他の活用法や失敗事例についてお伝えします。

 
【今回のポイント】
・権利を分離する家族信託。認知症対策で広まる
・分けにくい不動産の相続にも有効
・共有や分筆を回避し、不動産の価値を下げない



全国幸せ相続計画ネットワーク


【執筆】
全国幸せ相続計画ネットワーク
共同代表・亀島淳一

士業(税理士、司法書士、弁護士)を中心に、全国の相続の専門家が「相続計画」という新しい考え方の普及・啓蒙活動を行う。

相続相談窓口:電話=050・1809・0106
https://souzoku-planning.org/

※9月15日(日)10時から、読谷村地域振興センター・大会議室(2階)で、相続専門家特別講演会「軍用地相続 生前対策はじめの一歩」を開催する。参加無料(要予約)。

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2015号・2024年08月16日掲載

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