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2025年12月5日更新

なぜ? 義務化でも進まぬ相続登記 沖縄の空き家アドバイザーが考える、背景や対策|どうするその空き家㉑

文/山入端学(全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部事務局長)

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 文/山入端 学
(全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部事務局長)

全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部の山入端学さんが、空き家問題の背景や沖縄の現状、具体的な活用方法を紹介。今回は、昨年施行された相続登記の義務化に関して、手続きがなかなか進まない背景や具体的な対応策について解説する。
 
進まぬ相続登記
諦めず相談を

当連載は2024年4月、スタートしました。同年4月1日から相続登記が義務化され、相続で不動産を取得したと知った日から3年以内に登記の申請が必要となりました。義務化の背景には、所有者不明で管理できない土地など不動産が増え、周辺環境や治安の悪化、公共事業の阻害など、多方面に影響の恐れがあったことがあります。

相続登記の必要性については徐々に知られていますが、私たちが受ける空き家のご相談で意外と多いケースが、相続登記がなかなか進まず途中で諦めたというものです。

内容をうかがうと、相続人の一部が県外や海外に住んでいる、あるいは行方不明となっているケースが多く挙げられます。特に、相続人が連絡を取ることができない場合、手続きが停滞しやすく、相続財産の管理や処分に支障をきたすことも少なくありません。




行方不明者財産
管理人を選任へ


しかし、こうした場合でも、諦める必要はありません。登記手続きをストップしてしまうと、さらにコストがかさんだり複雑な手順を踏んだりすることにもつながりかねません。法律に基づいた対応策を取ることで、相続登記を進めることが可能です。

まず、行方不明の相続人がいる場合の主な対応方法として、検討すべきなのが「不在者財産管理人」の選任申し立てです。これは、家庭裁判所に申し立てることによって、行方不明者の財産を管理する人(不在者財産管理人)を選任してもらう制度です。不在者財産管理人は、行方不明の相続人の代理人として遺産分割協議に参加できるため、協議を円滑に進めることが可能になります。

また、行方不明者が長期間(通常7年以上)消息を絶っている場合は、「失踪宣告」の申し立ても選択肢となります。失踪宣告が認められると、その人は法律上、死亡したものとみなされるため、他の相続人のみで遺産分割が可能となります。ただし、失踪宣告には厳格な要件があるため、慎重な検討が必要です。


調停や審判など
家裁申し立ても


一方、何らかの事情により遺産分割協議が整わない場合には、家庭裁判所に調停や審判の申し立てができます。調停では、家庭裁判所が間に入り、相続人間の合意形成をサポートします。行方不明者について、ご自身で調査することが難しい場合には、弁護士や司法書士へ調査を依頼することをおすすめ致します。

また、相続登記を進めるにあたり、相続人調査の徹底が求められます。

まず、司法書士事務所に依頼(委託)し、戸籍謄本や住民票、各種公的書類を用いて相続人の現住所や所在を徹底的に調べてもらいます。これにより、単なる連絡不通なのか、実際に行方不明なのかを確認することができ、適切な対策を講じることが可能になります。

行方不明の相続人がいる場合、手続きが複雑になるため、弁護士や司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家は、状況に応じた最適な対策や、必要な書類作成・申し立てなどをサポートしてくれます。

相続人の中に県外や海外に住む人、あるいは行方不明者がいる場合でも、法律にのっとった方法で相続登記を進めることは十分に可能です。

お伝えしたように、不在者財産管理人の選任や失踪宣告、家庭裁判所の調停・審判など、状況に応じた制度を活用し、専門家の力も借りながら、諦めずに手続きを進めていくことが大切です。

相続登記は数カ月から数年と時間がかかるケースもあります。しかし、将来のトラブル防止や、あとあと後悔しないためにも、早めに専門家へご相談することをおすすめ致します。




やまのは・まなぶ
1969年生まれ、名護市在住。昨年、(一社)全国空き家アドバイザー協議会沖縄県名護支部を設立し事務局長就任。(同)城コーポレーション代表社員。沖縄県宅地建物取引業協会会員。北部地区宅建業者会副会長

全国空き家アドバイザー協議会 沖縄県名護支部
電話=0980・43・1613

 
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2083号・2025年12月5日紙面から掲載

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