小さくても5層で広く|コバヤシ401.Design room (株)|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

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2019年11月29日更新

小さくても5層で広く|コバヤシ401.Design room (株)

[お住まい拝見|38坪の三角地 スキップフロアで家中つながる]38坪の三角地に立つGさん(37)宅。箱のような家の扉を開けると、5層のスキップフロアを貫く吹き抜けが登場。半階上がったキッチンの先には、緑も見えるリビングが広がっている。

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玄関扉を開けると、地下1階から2階までを貫く吹き抜け空間に圧倒される。「子どもたちがリビングで遊んでいても、1階で明日の準備をしていても目が届くし、声もよく通る」と夫人


土間仕上げで伸び伸び

Gさん宅
RC造/自由設計/家族4人

敷地は町の入札で手に入れたが、Gさんいわく「ほかに入札者がいなかった」ほど細長い三角地だ。「実家の隣の地区で学校や高速が近く、子育てするにもいい環境だったのが決め手。狭い分、建築士は、東京など狭小住宅に慣れた人を紹介してもらいました」

完成した家は、一見窓のないコンクリートの箱のようだが、室内は地下1階から2階までスキップフロアでつながる5層仕立て。下から寝室、水回り、キッチン、リビング、納戸とエリア分けは明確だ。

リビングと納戸以外すべて土間仕上げなのは「きれい過ぎると、ちょっと傷がついただけで目立つから」と夫人。あえてざらつきを残したラフな雰囲気も、伸び伸びとした暮らしにつながっている。

外観。通りに面する北側はあえて窓をなくし、箱のように



2階東側にあるリビング。天井高は最大3.4メートル。東と南に設けた窓から外まで視界が広がり、実際以上に広く感じる


1階西側のキッチンからリビングを見る。間をつなぐ階段は腰掛け代わりにも。キッチンに立つ夫人と同じ目線で話せる。1階まで目が届くよう、目の前にある階段中央部は蹴上げを抜いた


収納は向きも調整

Gさんは「シンプルな箱のような外観と外水栓」、夫人は「家事のしやすさ」と要望も明快。特に夫人がこだわったのは収納だ。

「使いづらいと結局テーブルに物が置きっ放しになる」と帰宅後の家族の動きをシミュレーション。その動線上に手洗い場やランドセル・カバン置き場を配置し、引き戸の位置も何度も調整した。そのかいあって「物が散らからなくなりました」と満面の笑顔。コンパクトにまとめた水回りは「洗濯関連は全部ここで済むし、洗面室も朝夫婦で立ち子どもたちがそばで準備していても十分な広さ」と喜ぶ。

家族がくつろぐのは1階キッチンと、半階上がった先に広がる2階のリビングだ。リビングは天井高最大3.4メートル、南と東の窓からは「風も入るし緑や散歩中のヤギも見える」とGさん。床で寝転んだり、階段に腰掛けてくつろいだり。キッチンに立つ夫人にとっては「リビングにも階下にも目が届く」安心感もある。

「小さくても中はこんなに広くて想像以上!」。夫妻の笑みが満足感を物語っていた。
 

扉の向きなど夫人こだわりのキッチン脇収納。階段を上がってきたら手前の扉を開けてカバンや携帯電話類を置き、そのまま左手に抜ければキッチンへ
 

1階のウォークスルークロゼットと奥の物干し場兼脱衣室。「洗濯物を畳むのが嫌い。これなら乾いたら隣に移動するだけですむので楽」と夫人



南東側から見た住宅外観。写真左手の南側は里道に接しており、最大約2メートルの高低差がある


ここがポイント
層で階高変え床面積確保

敷地は北側が道路に接する東西に細長い三角地。地区計画上、住宅は道路から1メートルセットバックしなければならず、里道を挟んで隣家が建つ南側は最大2メートルほど高低差があった。そこで建築士の小林進一さんは2階建て分の高さに5層のスキップフロアを提案。「リビングは見晴らしのよい2階に上げて南東に開き、天井高最大3.4メートルを確保。それ以外は1.8メートル~2.4メートルとメリハリをつけることで、全体のボリュームは抑えつつ必要な床面積を確保した」と説明する。

注目したいのはリビング。実際は10畳だが、それ以上に広く感じるのは、スキップフロアと蹴上げを抜いた階段のおかけで上下左右に視線が抜け、「見えている部分すべてを空間として体感できる」ため。「吹き抜けは家族の息づかいを家中に届ける効果もある」。

夫人こだわりの家事動線も見どころの一つ。1階東側に水回り、西側にキッチンと家事空間をまとめ、さらに収納は通り抜けられるウオークスルーにすることで「行ったり来たりする必要がなく、流れの中で効率良く家事ができるようになっている」と話す。

内外装は、「きれい過ぎないシンプルな打ち放し」との要望に合わせ、普通合板型枠で素朴な印象に。キッチンはブロックで囲み、リビングの床はノコ目を残したフローリングに、階段手すりや照明、スイッチ、イスなどは鉄製の黒でまとめるなど、素材感を生かした。


地下1階の寝室。天井高2.1メートルと少し低めだが、テラスを設けたことで窓が大きく取れ、狭さは感じない。テラスは採光・通風だけでなく隣家との緩衝空間の役割も


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:128.21平方メートル(38.73坪)
地階床面積:14.95平方メートル(4.52坪)
1階床面積:50.39平方メートル(15.42坪)
2階床面積:40.84平方メートル(12.35坪)
建ぺい率:40.93%(許容50%)
容 積 率 :76.63%(許容150%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設  計:コバヤシ401.Design room (株) 小林進一
構  造:コバヤシ401.Design room(株) 小林進一+成底佐一郎
施  工:米元建設工業(株)
電  気:屋宜電気工事
水  道:ライフ工業


[問い合わせ先]
コバヤシ401.Design room (株)
03‐5499‐5279/090‐2633‐8306
http://kobayashi401.com


撮影/矢嶋健吾 編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1769号・2019年11月29日紙面から掲載

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