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2019年5月3日更新

内外つなぎ孫も伸び伸び|(株)エー・アール・ジー

[お住まい拝見|建て替えで採光・通風を改善]自宅を建て替えたSさん(73)宅は、鉄筋コンクリート造2階建て。採光・通風に役立つ大きな開口が開放感を生むLDKで、毎日訪れる孫たちが元気に遊ぶ。

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孫がフラフープで遊べるほど広い1階LDK。奥の和室とつなげて使えるほか、幅7.2メートルの開口部を開け放てばテラスとも一体化する
 

顔を見渡せるリビング

Sさん宅
RC造/自由設計/家族2人
那覇市内、起伏の激しい住宅街に建つSさん宅は、外観、内装ともに白が基調で明るい雰囲気。特に約24.5帖と広い1階LDKは、幅7.2メートルの窓を開け放つことができ、光とともに気持ちの良い風も入ってくる。「夏でもクーラー要らず」と話すSさんと妻(72)は、その空間で日中、テレビを見たりして穏やかに過ごす。

夕方になると様子が一変。近くに住む孫の姉妹が学校帰りに毎日やってきて、フラフープや縄跳びを披露したり、剣道のすり足や素振りを練習。Sさんは「孫たちの運動場になっています。でもにぎやかで元気をもらえる」とその様子をうれしそうに見守る。

さらにリビングは、戸を開け放って、隣の和室やテラスと一体化して使うことも可能。「盆や正月など、集まったみんなの顔を見渡せるのがいいね」とSさん。その際の食事を準備するキッチンは、「娘と嫁の3人で立っても広々」と夫人。「最近は、孫が野菜や皿を洗ってくれるんですよ」と、家事のコツを受け継がせる場にもなっている。


1階和室。床の間の袋には琴が入っており、孫姉妹の姉がここで練習する。姉は「上手になって、三線が得意なおばあちゃんと一緒に演奏できるようになりたいな」と夢を語る
 

キッチン。奥の寝室との間にはウオークインクローゼットがあり、夫人は「朝起きて、着替えて、食事の準備と効率良く動けます」


成長示す柱を再利用
築20年以上の自宅を建て替えたSさん。以前は「急な上り坂で親の介護の車も入ってこれなかった」ほど、車の出入りが不便だったため、約10年前から計画は立てていたという。そんなとき、前面道路の拡張工事計画が発表され、「どうせ工事をやるんなら」と建て替えを決意。設計は、中学時代の同級生が会長を務める設計事務所に依頼した。

夫婦は将来、2世帯で暮らすことを考えていたこともあり、建築士は上下で世帯を分けられるよう、1階にLDKや寝室、水回りをまとめ、夫婦の生活が1階だけで完結する造りを提案。床は全面フラットでバリアフリーにもなっている。

廊下には以前の家で使っていた柱。そこには20年以上かけて子や孫の身長が記されてきた。Sさんは「家族の成長が一目でわかる。この柱だけは持って来たかった」。Sさん家族の歴史が新たな住まいにも刻まれていく。
 

以前の家で使っていた柱に身長を記す姉妹。この姉妹の親が幼かった頃のものもあり、家族の成長を記録し続ける


ここがポイント
建物囲む「風の道」

建て替えに当たり、Sさんが改善を求めたのは大きく2点。①前面道路と建物との間にあった約4メートルの高低差による急勾配を緩やかに、②東側と南側をぐるりと囲むよう壁によって暗く湿った雰囲気の室内を明るく快適に、というものだった。

そこで建築士の崎浜国男さんは、まず①を解決するため、2メートルほど地盤を削り、道路からの傾斜をなだらかに。車の出入りをしやすくした。

②の湿気は、随所に「風の道」を設けて改善。「建物とよう壁との間にスペースを設け、風が建物の周囲を巡るようにした。また、そこに面して窓を配置したことで、大きく開いた西側から光とともに入ってくる風が、東と南の窓から抜けていく」=断面図。さらに2階は、熱気が天井の傾斜に沿って上昇し、東からの採光も兼ねて設けた高窓を抜けて出ていくようになっている。



構造も工夫。東側のよう壁と建物を梁でつないで一体化した。「建物の一部として構造計算することができ、よう壁のボリュームを抑えつつ強度を確保できた」。

そのほか、回遊できる造りで家事動線に配慮。将来、2世帯で暮らす際に備え、2階の倉庫には水道の配管などを準備し、浴室にできるようにもしている。
 

サービスヤード。写真左手のよう壁の強度を増すため、梁で右手の建物とつないでいる。通風を確保するための「風の道」にもなっている。梁と梁の間にはガラスを入れたことで、雨が降っても洗濯物が干せる


外観。ひんぷんとして設けた正面の壁は、西日による建物への熱の影響を軽減する役割もある。傾斜地である周辺環境に溶け込むよう、斜めに傾けたデザインになっている


高窓から明るい光が入る2階プレイルーム。孫姉妹の部屋として使っており、泊まる際のベッドもある。妹は「もう一つの家みたいな感じ」


2階テラスと庭園を結ぶ橋。高低差のある庭園と家との行き来をラクにする

[DATA]
家族構成 :夫婦
敷地面積 :635.83平方メートル(約192.34坪)
1階床面積:138.49平方メートル(約41.89坪)
2階床面積:97.76平方メートル(約29.48坪)
建ぺい率 :26.74%(許容60%)
容 積 率:37.15%(許容200%)
用途地域 :第一種中高層住居専用地域
躯体構造 :鉄筋コンクリート造壁式構造
設  計 :(株)エー・アール・ジー 崎浜国男
構  造 :Lifetect一級建築士事務所
施  工 :(有)東洋建設
電  気 :(株)丸輝電気
水  道 :アクティブ工業(株)
キッチン :MOV

風  水 :横川明子


[問い合わせ先]
(株)エー・アール・ジー
098‐877‐5556
https://arg2000.co.jp


撮影/比嘉秀明 編集/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1739号・2019年5月3日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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