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2017年7月14日更新

扇形の土地にV字の家|いとみね設計工房

[お住まい拝見・中央に庭 内側に開く]西原町の住宅地。道路側の間口が狭く、奥に向かって広くなる扇形の敷地にTさん宅はある。隣地境界線に沿ってV字型に居室を配し、間に中庭を配置。内に開く家で快適に暮らす。

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Tさん宅は、和室とキッチンがある写真手前の棟と、寝室や子ども室がある奥の棟がリビングでつながる。二棟の間にある庭が家中に風と光を届け、家族の気配を伝える

 

入ると広いギャップ住宅

Tさん宅
RC造/自由設計/家族4人

外観は、閉じていてコンパクトな印象=左写真。そのはず、外観正面の間口は約7メートル。敷地の中でここが一番狭い。
だが1歩室内に入ると、ギャップに驚く。玄関の先にあるリビング、そこから中庭へ続く大開口へ向け、視界がパーッと開ける=右下写真。
三角形の上がりかまちから右に行けばキッチン・ダイニングと和室、左に行けば子ども室や寝室がある。左右、V字型に奥行きのある造りだ。
すべての居室はV字の真ん中にある中庭に向かって開いており、閉じた外観とはうらはらに、非常に明るく風通しも良い。
V字の家、というと奇抜に思えるが、Tさん夫妻は「平屋で、どこにいても家族の気配が分かる家」という昔ながらのウチナー屋的な造りを要望した。
この形になった理由は、敷地が変形地だったことにある。接道側が一番狭く、奥に向かって広くなる扇形。立地が気に入って購入したが、敷地の形がネックとなり、何年も寝かせていた。
親戚を通じて出会った建築士に見せると「面白い家ができるよ」と言われ、出てきたのがV字プランだった。



南西にある和室。写真右側・東側の開口部はオープンデッキに続く。子どもたちはデッキを通路に、家じゅうをぐるぐる走り回って遊んでいる


外観。夫人の要望で、瓦屋根や木の扉で南欧風にしている

 

公私の動線分ける

人を招くことが多く、取材日も「午後からは友人たちとバーベキューをする」と準備をしていたTさん。ウッドデッキにテーブルとイスをセッティング。忙しく動き回る背中を追い、幼い子どもたちは居室からデッキへ、デッキから居室へぐるぐる走り回っていた。
夫人は、V字にしたことで「お客さんが出入りする空間と、家族のプライベート空間の動線がきっちり分かれていて助かっている」と満足げに語った。


Tさん宅の玄関からリビングを見る。大開口から中庭へ向けて視線が抜ける。来客は一様に「外から見るより広くて明るい!」と驚くそうだ(写真左)
寝室や子ども室がある棟の廊下。トイレ側から寝室を見る。西側の中庭へ向けて開いていて、明るい。その光と風が各居室へもめぐる(写真右)




ここがポイント

境界線に沿い2棟
家そのものを塀に


中庭から居室を見る。デッキが2棟をつなぐ。取材時も、子どもたちは居室からデッキへ、デッキから居室へとぐるぐる走り回って遊んでいた


道路側以外の三方は2階建ての住居に囲まれた住宅密集地。そこに家を建てるにあたり、「扇形の敷地は利点となった」と、設計した一級建築士、糸嶺篤成さんは語る。
「どこにいても家族の気配が感じられる家」というTさん夫妻の要望と周辺環境をすり合わせ、糸嶺さんはコートハウスを提案。居室を公と私の2棟に分け、中庭越しに目が届くような間取りにした(イラスト)。


当初のコートハウスプラン

糸嶺さんが描いたプランイラスト。最初は普通の四角いコートハウスを提案した。


敷地の形に合わせてV字に

当初の案から、「敷地のカタチに合わせて居室を斜めに配置。その分、中庭を広くすることができた」と話す


それから実際に敷地を見て、建物2棟をV字に配置した。「隣地境界線に沿って建物を並べることで、デッドスペースを無くし、中庭を大きく取った」。
南側に設けた大きな中庭のおかげで、「各居室は中庭へ開くことができる。それ以外の開口部を最小限にして、外からの視線や騒音をシャットアウト。家そのものに外壁の役割を持たせた」と説明する。外壁分のコスト削減につながった。
特に駐車場のある玄関側は、外壁が無いため車の出し入れがしやすくなり、駐車スペースも広くなった。人を招くことの多いTさん宅ではありがたい配慮だった。


ダイニングとリビングの間は、アーチの壁で緩く区切っている。夫人好みの南欧風の雰囲気を演出しつつ、視線を遮らず空間にメリハリを付けた


[DATA]
家族構成 :夫婦+子ども2人
敷地面積 :289.94平方メートル(約87.7坪)
1階床面積:110.01平方メートル(約33.2坪)
建ぺい率 :38.17%(許容60%)
容 積 率:37.94%(許容200%)
用途地域 :第一種住居、第一種中高層 住居専用
躯体構造 :鉄筋コンクリート壁式構造
設計監理 :(有)いとみね設計工房 糸嶺篤成
構  造 :(有)長嶺総合設計 長嶺安一
施  工 :(株)ライト工務店
電  気 :(有)開成電設
水  道 :南光開発(株)



[問い合わせ先]
いとみね設計工房
099-223-5761
 


写真/泉公(ララフィルム) 編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1645号・2017年7月14日紙面から掲載

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スタッフ
東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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