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2015年11月13日更新

海・空・緑身近に 夫婦でゆったり|アトリエ・ダグ・アーキテクト

「2人でのんびり。好きなことをして過ごせる家を」と、東京から沖縄へ移住したKさん夫妻(夫74・妻57)。本島北部の海を望む傾斜地に新居を構えた。木とコンクリート打ち放しが調和した空間でジャズをBGMに海や緑、空を眺めて過ごす、穏やかな暮らしを手に入れた。

海の景色と音楽溶け込む

Kさん宅(夫婦 自由設計 RC造)


中庭から住宅のエントランス、リビングを見る。中庭を軸に間取りが構成されたKさん宅。リビングの中央(西側)の窓の先には東シナ海の景色が広がる

海沿いの国道から緩いカーブの坂道を上がった一角に建つKさん宅。コンクリート打ち放しの三つの箱を横にずらして並べた、奥行きを持たせた外観が印象的だ。
エントランスの扉を開けると、サルスベリや芝が育つ中庭が現れホッと気持ちが緩む。中庭を囲むように、西側に住居、東側には織り手である夫人のギャラリー兼工房が並ぶ。
玄関からリビングへ進むと硬質な外観とは一変、室内は木肌のぬくもりに包まれる。西側の窓、深い庇のあるウッドデッキ越しにエメラルドグリーンの海が見える。物件探しの際「坂道から海が開ける景色を見た時、ここに家を建てたいとピンときた」と夫妻。
リビングの片側の壁一面には本棚がしつらえてあり、その間にある扉の先は小さい書斎になっている。Kさんは「大音量でジャズを聴きながら、1日の大半はリビング周りで過ごしてます」という。
リビングから台所を隔て見晴らしのいいダイニングへ。隣に浴室、寝室が並ぶ。水回りとダイニングを寝室近くにしたのは、「後々、介助が必要になってもこのスペースで生活できるように」との考えから。「使い勝手が良いし、今年18歳になる愛猫のびくもお気に入りの場所」と夫人。

高齢になっても自宅で
東京から夫人の故郷、沖縄に移住を決めたのは約3年前。「親の介護を終え、2人暮らし。体調を考え、暖かい所で過ごしたい」と思ったのがきっかけだ。
設計の依頼先は、人柄や好みが合うことを重視して選定。建築士には「車いすが必要になっても過ごしやすく。大音量で音楽が聴ける。機能的に使えること」などを希望した。
完成した住宅はリビングと中庭を軸に、海や緑を眺めながらぐるりと巡れる構成。両親や祖父母の代からのいすや火鉢をはじめ、古い本類もしっくりとなじむ。「どこに居ても、互いの様子が伝わるので安心。手を掛けながら家を育てていきたい」と夫人。Kさんは、「大音量で聴く音楽、景色もごちそう。今まで住んだ家で一番居心地がいい」と笑う。
季節や時間で色が変わる海、朝露に濡れる緑、満天の星空―。自然の景色と音楽とが軽やかに調和して、心を和ませてくれるよう。 


リビングでくつろぐKさん夫妻。ほんのりとした明るさと木肌の質感が相まって、しっとり落ち着いた雰囲気。玄関とを仕切るのれんは、夫人が庭に育つサルスベリで染めて織ったもの。50年以上になる年代もののソファセットもしっくりなじむ


見晴らしのいいダイニング。「朝、デッキに出てコーヒーを飲むのが楽しみ」とKさん(写真アトリエ ダグ アーキテクト提供)


リビング隣にある和室。中央にある火鉢は、Kさんが育った家で使っていたもの。和室の色調もあえて深みのある黒っぽい色を使って、陰影を和らげシックな雰囲気に


ここがポイント
海の眺め取り込み 日差し、視線は緩和

東と西側では1・7メートルの高低差があるKさん宅の敷地。設計者の下地恒さんは、高低差のほぼ中央(90センチ)を視点の基準とし、リビングを配置。リビングの東側に中庭を並べ、ここを軸に居室と工房兼ギャラリーを振り分けた。
「どこからでも中庭や海が見えるよう目線の高さにも配慮しながら、建物の配置や間取りを工夫した」と下地さん。日中の大半を過ごすリビングやダイニング、和室は、海が見える西側に配置。軒を低く深く、デッキスペースに奥行きを持たせることで、西日の光や暑さを和らげた。
工房は庭を挟んでリビングと一直線に並べ、リビング越しに海まで見えるつながりを確保。大音量で音楽を聴いても気にならない距離を保ちつつ、互いの気配を伝える効果も得た。
「高齢になっても過ごしやすく」との要望には、台所からダイニング、トイレ・浴室、寝室までコンパクトにまとめて生活動線を短く。寝室は中庭を眺めてくつろげるよう、広めにスペースを確保している。
天井高を抑えた和室や隠れ家のような書斎など、大小さまざまな空間が緩やかに連なり奥行きを感じさせるKさん宅。古い家具や本が調和して、よりあたたかみのある雰囲気に。下地さんは「これから植物が育ち外観もより表情豊かになるはず」と期待を寄せた。

 


リビング側から台所、その先のダイニングを見る。細長い台所は廊下の役目も担う。中庭を眺めながら調理ができ、カウンターはワークスペースにもなる


寝室の壁は調湿作用のある珪藻土を使用。自然素材でコンクリートの質感を和らげるとともに、墨色を混ぜた色みに調整し、光の反射を和らげるよう工夫している


住宅横に設けた「ギャラリーのばる」。夫人が沖縄の絣(かすり)技法で織ったタペストリーやストールのほか、陶芸家の作品や革製品も展示。問い合わせ先はメール(mnord5160@yahoo.co.jp)


敷地に対し建物を45度斜めにずらして配置。通りからの視線を避けつつ部屋ごとで異なる眺望が楽しめるようにした


[DATA]
家族構成:夫婦、猫1匹
敷地面積:549.05㎡(約166.08坪)
1階住居床面積:112.75㎡(約34.11坪) 工房・ギャラリー:37.5㎡(約11.34坪)
建ぺい率:36.53%(許容60%) 容積率:27.37%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:アトリエ・ダグ・アーキテクト 下地 恒
施 工:(有)名嘉工務店 比嘉伸次
電気・水道:松電 松田貴啓
キッチン:MOV 照屋涼子
造 園:HADANA 葉棚達也

[設計・問い合わせ先]
アトリエ・ダグ・アーキテクト
098-836-8813
http://www5.plala.or.jp/dug/
写 真/比嘉秀明撮影
編 集/週刊タイムス住宅新聞編集部

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1558号・2015年11月13日紙面から掲載

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