お住まい拝見
2015年8月21日更新
光、風通し良好 家事もしやすく|(株)エー・アール・ジー
沖縄本島中部、宜野湾市に暮らすSさん(81)は、40年以上住み慣れた自宅を建て替えた。地下車庫のある2階建ての新居は南向きで、日当たりも、風通しもいい。Sさんは「家事もしやすくなって最高。思い切って建て替えて本当によかった」と目を細める。
建て替えで快適
Sさん宅(家族2人 自由設計 RC造)
1階のリビング・ダイニング。南側の庭に面した掃き出し窓から自然光がたっぷり入り、写真右側のキッチンまで明るい。奥(西側)には、和室と寝室が隣接する
住宅街の角地にあるSさん宅。地下車庫内に設けられた勝手口の先には2階まで続く内階段があり、家族はそこから出入りする。「勝手口からの出入りは、前の家のときからの習慣。雨の日でもぬれずに済むから楽ですね」と長男(44)は話す。
1階は、家事動線に配慮し、対面式キッチンをぐるりと囲むようにリビング・ダイニング(LD)や水回り、サービスヤード、寝室が配置され、洗濯物もスムーズに干せる。対面式キッチンはSさんの希望。「お客さまの対応をしながらお茶請けも用意できるから、とても便利」と声を弾ませる。
南側の庭に面したLDは明るく、掃き出し窓を開け放つと心地よい風が吹き込む。「夏でもエアコンがいらないくらい」と長男。LDから延びるウッドデッキに腰掛け、庭の緑や流れる雲、月を見るのがSさんの癒やしになっている。
現在は2階で寝起きするSさん。将来は、キッチン西側に設けた寝室に移る予定。壁の仕上げや照明選びは子どもたちに任せたというが、「寝室だけは、落ち着けるよう壁も木張りにしてもらいました」とこだわった。
思い出の家具も調和
以前の住居は2階建て。1階部分は築60年、増築した2階部分も40年になっていた。道路より低い敷地に建っていたため、「暗いし、何より湿気がひどかった。子どもたちとも相談して、建て替えることにしました」とSさん。
設計は、友人がよく知る建築士に依頼した。「とても丁寧に対応してもらった。新鮮な提案がいろいろあり、とても満足しています」とにっこり。
LDに置かれた木製のテーブルセットや引き出し棚は、以前の家で使っていたもの。「亡き父の趣味も残したい」と、長男を中心に磨いてつや出しした。木目の背板が印象的なキッチン、うるし和紙張りの和室の引き戸など、手持ちの家具との調和を考慮した内装ともマッチし、新居にもしっくりなじんでいる。庭木の一部も、以前の庭から移植した。
「生活スタイルは以前とほぼ変わらない。でも快適さは段違い」と長男。Sさんも「この家で暮らせて本当に幸せ」と目を細めた。
リビングからキッチンを見る。キッチン裏手には水回りが配置され、回遊できるようになっている
玄関。基本的には来客用。正面のサービスヤードが光を届けるだけでなく、奥行きを感じさせる役割も果たす
物干し場として重宝している1階東側のサービスヤード。アルミルーバーが視線を遮りながら風を取り込み、天窓からは自然光が注ぐ。正面のドアからは、洗濯機を置いたユーティリティーにつながり、「天気を気にせず、洗濯物がすぐに干せて助かっています」とSさん
ここがポイント
盛り土で庭 湿気を解消
Sさん宅は、南、東側が道路に接する角地に建つ。以前の住まいは、南側の前面道路から60センチ以上低い土地に建っていた影響で湿気が多く、一年中、除湿機を使っていたという。建て替えにあたり、設計を手掛けた一級建築士の大城朝博さんは、湿気の問題を解消しながら住み心地を高める計画を立てた。重視したのは、日当たりと風通しの確保。1階南側道路に面する土地を1メートル盛り土し、植栽のできる庭を配置した。道路との高低差を生かし、東側には地下車庫も設けた。庭に面して設けたリビングの約4メートルの開口部が、室内に光と風を届ける要。大城さんは、「リビングを盛り土した南側に設けたことで、眺めも良くなりました」と説明する。東側のサービスヤードは天窓を設けて光を取り込み、壁面をアルミルーバーにすることで風を通しながら外からの視線は遮った。
室内は、高齢のSさんの暮らしやすさを中心にプランした。将来も見据え、家事動線を1階に集約。キッチン西側に寝室も設けた。洗面、シャワー室は2階にも用意。2階東側の二つの洋室の仕切り壁を石膏ボードにすることで、プライバシーを確保しながら、2世帯住宅にも改築しやすい構造にした。
Sさん一家手持ちの家具のデザイン、風合いに合わせて提案した内装も、家族の安らぎにつながっている。
1階和室。写真右側のうるし和紙仕立ての引き戸を開けると、リビングにつながる。床の間には黒檀を用いた。仏壇はSさんの身長に合わせて作業がしやすい高さにしつらえた
アルミルーバーを用いたモダンな外観。道路の高低差を利用し、東側には半地下駐車場を設けた(建築士提供)
2階の洗面・シャワー室。2世帯にも改装しやすいよう、上下階に水回りを設けた(建築士提供)
以前の家で亡き夫が育てた庭木の一部を植栽した庭。ウッドデッキで緑や空を眺めるのがSさんの楽しみ
[DATA]
家族構成:母親、息子、犬2匹
敷地面積:143.01㎡(約43.26坪)
地下1階床面積:48.09㎡(約14.54坪)
1階床面積:100.01㎡(約30.25坪) 2階床面積:68.13㎡(約20.60坪)
建ぺい率:69.93%(許容70%) 容積率:123.73%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:(株)エー・アール・ジー 大城朝博
施 工:CM分離発注による専門工事業者10社
[設計・問い合わせ先]
(株)エー・アール・ジー
098-877-5556
http//www.arg2000.co.jp
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1546号・2015年8月21日紙面から掲載
この記事のキュレーター
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- 比嘉千賀子
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編集者
住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。