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2019年10月25日更新

敷地50坪弱 フル活用|(有)門一級建築士事務所

[お住まい拝見|密集地に賃貸併設4階建て]那覇市の住宅密集地。48.5坪の敷地を最大限に生かし、賃貸併設の4階建てを建てたOさん。南側の大開口から光と風をたっぷり取り込み、空と緑を眺めて心地よく暮らす。


非日常をテーマに、落ち着いた雰囲気にまとめた3階LDK。南側の大開口を開け放てば、植栽帯を設けたベランダまでフラットに続き、心地よい陽光と風が室内に届く


非日常を楽しむ

Oさん宅
RC造/自由設計/家族5人
アプローチを彩る植栽が、住宅地に潤いを与える4階建ての建物。1階が駐車場、2階は賃貸住宅になっていて、3階と4階がOさんの住まいだ。

LDKのある3階は、「非日常」をテーマにしたパブリックスペース。4階に家族の個室と水回りをまとめ、上下階で公私を明確に分けた。

シックな色味で立体感のある織り調クロス、天然の石、美しい木目。使う建材一つ一つにこだわった空間に、夫人お気に入りの絵画が映える。「早起きしてリビングに座っていると、小鳥のさえずりも聞こえて気持ちがいい」と夫人。

音の響きがいいリビングで音楽を聞き、映画を見るのがOさんの楽しみ。間接照明で夜はグッとムーディーに。キッチンからは、ベランダに掘り込みで設けた花壇の緑も眺められる。「マンションでは鉢植えでガーデニングを楽しんでいたけれど、土植えにしたことで植え替えの必要がなくなり、水やりも楽になりました」


ベランダからLDKを見る。隣接する仏壇と床の間スペース(写真右側)は、引き戸で仕切って個室化できる

好きなもので彩る
いつかは一戸建てをと思いながら、20年余りマンションで暮らしていた。Oさんの実家の隣の土地を購入できることになり、50代前半で家づくりに着手した。

夫人は県建築士会のウェブサイトで全登録会員の情報をチェックし、好みの建物を手掛ける建築士に設計を依頼。「実は、20年前に新聞で見て気になっていた建築士さんだったと後になって気がつきました」と、その縁に驚く。

返済を考慮したOさんは、賃貸住宅の併設を希望。「50坪もない土地。賃貸住宅までできるのか不安でしたが、何げないつぶやきまで丁寧に設計に反映してくれる建築士さんが全てかなえてくれた」

夫人は、「絵や植物など、好きなものを一つ一つ集めて、家を彩っていくのがこれからの楽しみ」と、目を細めた。


外観。ベランダのガラス製の手すりが、スタイリッシュな印象を与える


ここがポイント
天空率で高さ制限緩和
周りの道路や建物への日当たりや採光を奪わないよう、道路斜線制限や日影規制といった建物の高さ規制が厳しい地域に建つOさん宅。南側前面道路の斜線制限により、建物の高さは13メートルに抑える必要があった。4階建てで最大限の面積を確保するため、建築士の金城豊さんは「天空率を用いて、高さ制限の緩和を図りました」と話す。

天空率とは、任意の測定ポイントから正射影投影(魚眼レンズで空を見上げたもの)された天空図で、建物の投影されている範囲を除いた空の見える割合のこと。「屋上の塔屋は、建築面積の8分の1以内に収めて階数に含まれないようにし、天空率で高さ制限の適用範囲から除外することで設けることができた」

明るさと風通しを重視し、平面計画で、各階南側に大開口を設けた。加えて塔屋が、建物中央部に配した階段室に光と風を取り込む役割を担う。「垂直の軸を作ることで煙突効果が生まれ、風も流れます」

間取りでは琉球風水も意識。水回りを北西にまとめ、スムーズな家事、生活動線に配慮。プライベートスペースの4階は、階段を囲むように子ども室と水回り、室内物干し場、主寝室を配置。「物干し場からクローゼットを抜けて主寝室へ出入りでき、階段を中心に回遊できるようにしています」。使い勝手の良さは、Oさん一家のお墨付きだ。

3階の玄関前やベランダは、夫人の希望で床面を掘り込んで植栽帯を設けた。植物と水を吸った土の重さを踏まえて構造計算し、造園の専門家のアドバイスを受け排水にも配慮。「植物が成長すると、光と風を取り入れながらプライバシーを守ることができます」と、金城さんは説明した。


4階廊下から階段室を見る。鉄骨と木を組み合わせ、蹴上げをなくした階段は、屋上の塔屋から入る光と風を階下に届ける


3階の階段脇にある洗面室。シックなしつらえで空間になじむ



3階、玄関正面にあるOさんの趣味室となっているシアタールームは、約4.8畳。階段下を利用して設けた


4階のトイレは、洗面・脱衣室と仕切らず一体的な造りにした。「広く使えて便利」と夫人


天窓から光を取り込む4階の物干し場。ピンクの引き戸から、主寝室へ出入りできる


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:160.52平方メートル(48.55坪)
1階床面積:93.83平方メートル(28.38坪)
2階床面積:65.21平方メートル(19.72坪)
3階床面積:67.76平方メートル(20.49坪)
4階床面積:75.5平方メートル(22.83坪)
建ぺい率:58.32%(許容60%)
容 積 率 :141.55%(許容160%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリートラーメン構造
設  計:(有)門一級建築士事務所 金城豊、大城壮史
構  造:建築設計 明 澤岻安正
施  工:LSD design(株) 新里宜広
電  気:屋宜電気工事 新高悟
水  道:(資)明光電気 仲村彰
キッチン:(株)LIXIL 前田島りえ子
琉球風水アドバイス:横川明子
植栽アドバイス:コンテナスタイルオーガスタ 伊波英雄


[問い合わせ先]
(有)門一級建築士事務所
098-888-2401
http://www.jo1q.com


撮影/比嘉秀明 取材/比嘉千賀子(ライター)
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1764号・2019年10月25日紙面から掲載

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比嘉千賀子

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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