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2015年5月22日更新

家具が映える空間 台所軸に会話弾む|(有)門一級建築士事務所

沖縄本島南部、糸満市に建つ冨名腰さん(41)宅では、キッチンを中心に家族4人が自然と集い、会話を楽しむ。さりげなく設けられた収納や動線計画、白と黒の内装が特徴的。生活感を表に出さず、お気に入りの家具でくつろげる住まいだ。

生活感を隠しスッキリ

冨名腰さん宅(家族4人 自由設計 RC造)


1階リビングをダイニング・キッチン側から見る。高さ4メートルの天井と、庭に面した開口部が、実際の床面積より広く感じさせる。壁際の黒いカウンターは幅9メートルで、収納になっている

カフェと間違える玄関
冨名腰さん宅は、LDKの北側に子ども室、南側に夫婦の寝室を配したT字形の平屋建て。外装は白、内装はモノトーンと、シンプルな色合いが印象的。
とりわけ幅9メートルのカウンターが目を引くLDKは、高さ4メートルの天井や、幅6メートルの開口部で広さを強調。おしゃれなホテルのような雰囲気だ。
「子ども室や寝室は、勉強したり眠るだけで、普段はみんなリビングで過ごす」と冨名腰さん。外から帰ってきたら必ずリビングを通る造りなので、安心感もあるという。
以前住んでいたアパートではキッチンから家族の様子が見えなかった。夫人(40)は「今はキッチンが家の中心にあるので、料理中でも家族と会話でき、食事の準備も手伝ってくれるようになった」と笑顔。
道路側に窓のある玄関ではクリスマスツリーやひな人形など、季節のディスプレーを楽しむ。通りから見た人が、カフェと間違えて来ることもあるという。広い玄関や二つ並んだ洗面台のおかげで「娘が2人いても出かける準備で後がつかえなくなった」と冨名腰さんのお気に入りだ。

「白い」からこそ掃除
仕事で本島北部に単身赴任していた夫人が、赴任を終えるのに合わせ家づくりを開始。
インターネットや雑誌で見た家のシンプルな造りが気に入り、手掛けた設計事務所を訪問。建築士の話しやすい人柄や、風水を取り入れた提案などが決め手となり依頼した。
白いタイルは汚れが目立つのが不安で悩んでいたという夫人。「友人に『白だからきれいに掃除する』と言われ、決心した」。実際、こまめに掃除するようになったという。
収納も一工夫。リビングのカウンターの下は大容量で、小物類が片付く。キッチンの後ろ側にある壁一面の収納は、、引き戸や扉でサッと目隠しできる。さらに、寝室から浴室まではパブリック空間と分けられているので「急な来客でも気にならない」と夫婦で喜ぶ。
冨名腰さんはスッキリしたリビングに映える黄色いソファでくつろぎながら「家族一緒の時間が増えた」と満足げに話した。


1階のキッチンとダイニング。写真奥は全面に収納が設けられている。右は子ども室、左は夫婦の寝室につながる


仲の良い姉妹が一緒に使う子ども室。長女は「共通の趣味のものを飾るのが楽しい」、次女は「勉強を教えてもらったり、一緒に雑誌を見て過ごす」と話す


広々した玄関。視界が抜ける写真奥のガラスの前で、季節のディスプレーを楽しんでいる
 

ここがポイント
ストレス減らす工夫徹底

冨名腰さん宅を設計するにあたり、一級建築士の金城司さんが徹底したのが「ストレスを減らす工夫」だ。
まず動線を明確化。パブリック空間は東西に、プライベート空間は南北に、それぞれ直線でつなぎ行き来しやすく。プライベート空間とキッチンは回遊できるため、食事を作りながら洗濯するなど効率よく家事ができる。引き戸や扉を閉めれば来客中でも気兼ねなく入浴や就寝も可能だ。
必要な場所に物が片付けられるよう、収納も随所に.玄関のシューズクローク、リビングのカウンター、キッチン脇のデッドスペースを活用した掃除用具入れ、食器や家電がしまえるキッチン背後の収納棚、季節物まで収まるウオークインクロゼットがそれだ。
内装にも配慮。建材や色数はまとめ、照明や配線類は天井や壁を掘り込んで隠したり収納の上に設置してすっきり。スイッチ類も目立たず手が届きやすいよう、通常より低めに取り付ける細やかさ。「見なくて済むものは極力見せないようにすることで、家具や緑が映え、リラックスできる空間を目指した」と説明する。
北側以外は隣地に囲まれた敷地条件で、明るさと風通しの良さを確保。南側は隣家が近接するものの最大3メートル高低差があり、さほど視線が気にならなかった。そこで南側に庭を設け、その庭に向けリビングを配置。窓を開ければ北側に設けた坪庭に向け、風もよく通る。寝室や子ども室は西側に寄せ東に開くことで、気持ちの良い朝日を取り込んだ。


キッチンの裏側に設けられたインナーバルコニーは、風通しが良く物干し場として使用。普段は行き来しやすいよう開け放している。雨の日は戸を閉めて、除湿機で洗濯物を乾かす


隣地との高低差は最大3.2メートル。隣家から家の中が見えないようにしながら、光を取り込めるよう軒の深さを調節


洗面室と浴室。洗面室には洗面台がニつあり、「忙しい朝でも混まない」と冨名腰さん


外観。夕暮れ時、ライトアップされて浮かび上がった姿は幻想的

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:268.7㎡(約81.28坪)
1階床面積:117.19㎡(約35.45坪)
建ぺい率:43.61% 容積率:42.76%
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式 構造
設 計:(有)門一級建築士事務所 金城司、與儀拓也
構 造:建築設計・明
施 工:(株)金城組
電 気:日章電気工事(株)
水 道:(株)琉泉設備
塗 装 工:(有)吉永
内 装:とみしろ装飾
[設計・問い合わせ先]
(有)門一級建築士事務所
098-888-2401
http://www.jo1q.com
写 真/高野生優・フォトアートたかの撮影
編 集/徳正美

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1533号・2015年5月22日紙面から掲載

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