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2016年11月18日更新

吹き抜け・開口大胆に|アトリエトラッド

那覇市内の住宅密集地にあり、通学路に面して建つTさん宅。吹き抜けになったリビングの大開口と、開口に一体化した中庭が、視線を気にせず開放的に暮らせるカギだ。

中庭で密集地でもカーテン要らず

Tさん宅 RC造/自由設計/家族4人

高さ5.3メートル。2階まで吹き抜けになったリビングの大開口と、その先に広がる植栽が育つ中庭が開放感を生む。壁は打ち放し、床と天井を夫妻の好きな木張りにしたことで、温かみのある空間に
 

開放感で増す楽しみ
Tさん宅は、鉄筋コンクリート造2階建て。通学路になっている前面道路から見ると、窓もなく閉鎖的な印象だが、室内に入るとその表情は一変する。吹き抜けになったリビングの東側には、高さ5・3メートルの大開口。その先には植栽の整った中庭があり、開放感いっぱい。「住宅に囲まれているけど、家の中からは空が見え、カーテンなしでも視線も気にならない。庭を眺めながらお酒を飲むのが楽しみになりました」とTさんは笑う。
1階にLDK、2階に個室と水回りをまとめたシンプルな間取り。リビング西側で印象的なのが、吹き抜け上部にかかる橋のような廊下。2階北側にある寝室と南側の子ども室、水回りをつなぎ、構造上の梁の役割も果たす。「建築士からの最初の提案でこの設計が出てきて、私も妻もひと目で気に入りました」。
階段の下にはピアノが収まり、長女(7)と次女(6)が楽しそうに練習する。夫人は、「実家から愛用していたピアノを持って来る予定だったので、何度も寸法を測って調整してもらいました。音の響きも良く、ピアノを弾くのが楽しみになりました」とうれしそう。

こだわりが彩りに
長女の小学校入学を見据え、マイホームをと考えたTさん夫妻。購入した敷地は「小中学校が近く、接道の幅も広くて使い勝手がいいことが決め手になった」。設計は、住宅情報紙で見て、好みの住宅を手掛けていた建築士に依頼した。
キッチン設備やインテリア選びでは、県外にも足を運んだ。夫人は、「ショールーム回りが趣味みたいになっていましたね」と振り返る。キッチンの壁と玄関収納には華やかなベネチアンモザイクタイル。駐車場と中庭の仕切りは、変形しにくい再生木の格子で。中庭には植栽を。どれも夫妻のこだわりだ。予算を踏まえ、「建築士さんと、お互いに意見やアイデアを出しながら話し合いました。おかげで満足のいく家ができました」。
風が涼しくなると、中庭とつながるデッキテラスが第2のダイニングとして活躍する。「バーベキューセットも買いそろえながら、もっと楽しく活用していきたい」とTさん。暮らしの楽しみはますます増えそうだ。


天窓からも陽光が注ぐリビングの西側。スッキリ見えるようにデザインされたコンクリートの階段と、橋のような廊下が印象的


2階南側にある洗濯室。ガス衣類乾燥機も備えているが、天窓からの光で干した洗濯物もカラリ


2階の廊下。リビングに面した東側は手すりから視線が抜け、宙に浮いているよう。階段に面した西側には本棚が設けられている。奥に見えるのがウオークインクロゼットで、その隣に寝室がある
 

ここがポイント
大開口で内外を一体化

海に近い住宅密集地にあり東西と北の三方に住宅が近接、南側の前面道路は通学路になっているTさん宅。家づくりで課題となったのは、①プライバシーを守りながら、明るく風通しのいい空間づくり、②支持層までの深さが不規則な地盤への対策だった。
まず①では、外壁の開口部を必要最小限の数、大きさにとどめ、外からの視線と騒音をカット。その代わり、LDK東側に約4坪の中庭を設け、光と風をたっぷり取り込む。
吹き抜けになったリビングの開口部は高さ5・3メートル。中庭と室内を一体的に見せる。中央部ははめ込み窓で、左右に熱を逃がすための開閉窓がある。中央部にはめ込まれた窓ガラスは、「横桟を入れたことで厚さは10ミリと薄くでき、費用も抑えられて安定感も増した」と、建築士の渡慶次脩さんは話す。
東側が全面開口になっている分、躯体を支える梁の役割を担っているのが、2階の南北をつなぐ約4メートルの廊下だ。幅1メートル、スラブ厚20ミリ。吹き抜けの上部をわたる橋のようなイメージで、空間デザインにもなるアイデアが光る。
敷地は地盤調査の結果、支持層までの深さが不規則だと判明した。コスト面から検討を重ねた結果、②では、ベタ基礎を採用して土地への圧力を減らすことで、地盤補強なしでの建築が可能になった。「ただ、万が一に備えて、地盤保証制度も利用しました」
海に近い立地のため、外まわりにもひと工夫。コンクリート打ち放しに見える外壁は、実は塗装仕上げ。海風からコンクリートを保護しつつ、デザイン性を損なわないよう多色使いの吹き付け塗装で色ムラを出し、石目調を表現した。


リビング北側にあるダイニングキッチンは天井高を抑え、落ち着いた雰囲気。キッチンの壁のモザイクタイルが華やぎを添える。デッキに続く掃き出し窓部分の床は、日差しや雨を考慮しタイル張りに


2階の壁に入ったスリットがアクセントの外観。打ち放しのように見えるが、実は塗装仕上げ。夫妻の目に留まった代官山の商業施設の外観をモチーフに、石調の塗装を施した


デッキから中庭を見る。植栽の奥に再生木で仕立てた間仕切りと扉があり、駐車場に出入りできる


玄関。家族は右手のシューズクロークから出入り。中央の間仕切り壁の一部がステンレス板になっていて、マグネット収納も活用できる

[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:159.14㎡(約48坪)
1階床面積:83.86㎡(約25坪) 2階床面積:60.24㎡(約18坪)
建ぺい率:52.70%(許容60%) 容積率:76.67%(許容200%)
用途地域:第一種住居地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設 計:アトリエトラッド 渡慶次脩
構 造:鈴江構造計画室
施 工:(株)紀建設
電 気:丸嘉電気工事社
水 道:(有)インター設備
キッチン:㈲MOV
造 園:艸木

[設計・問い合わせ先]
アトリエトラッド
098-850-4747
http://www.atelier-trad.com
写真/矢嶋健吾撮影  編集/比嘉千賀子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1611号・2016年11月18日紙面から掲載
 

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住まいと暮らしの情報紙「タイムス住宅新聞」元担当記者。猫好き、ロック好きな1児の母。「住まいから笑顔とHAPPYを広げたい!」主婦&母親としての視点を大切にしながら、沖縄での快適な住まいづくり、楽しい暮らしをサポートする情報を取材・発信しています。

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