しっとり和モダンに|建築設計工房Paraya|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2016年10月21日更新

しっとり和モダンに|建築設計工房Paraya

沖縄県本島南部の閑静な住宅街に、「憧れの和モダンな雰囲気」を取り入れて2階建ての家を建てたOさん夫妻。しっとり趣ある空間に愛着ある北欧家具や雑貨がマッチ。「好きなもの」に囲まれて暮らす。

北欧家具がマッチする空間 「好き」を散りばめて

Oさん宅 RC造/家族4人

1階キッチンから見たLDK。木と漆喰(しっくい)で仕上げた空間に、北欧家具や雑貨が映える。掃き出し窓には、カーテン代わりに収納可能な障子も設置した


地元素材を取り入れ
エジソンランプがともる玄関。そこからトンネルのような廊下を通り抜けた先に、LDKが広がる。室内は温かな間接照明に包まれ、芝庭の緑が一層際立つ。「フルオープンで明る過ぎる家は、あまり好きじゃない。しっとり、すっきり、機能的な和の雰囲気を取り入れたかった」と夫妻は話す。
新婚旅行でコルビジェ設計の建物を見に行くほど建築好きなOさんの影響で、夫人も「マニアに」。こだわりも明確で、家の随所に表れている。例えば和の雰囲気は、カーテン代わりに取り付けたリビングの障子や、壁付けにしたキッチン小窓の十字の木枠に。「木枠から透けて見える緑が好き。障子は閉めても程よく明るくて、クーラーの効きもいい」と夫人。作業台のみのキッチンは、設計前から依頼を決めていた職人の手作り。「物をしまいこまずに済んで掃除もラク」と考えてのことだ。
落ち着きを演出するのに一役買っているのが、琉球漆喰と間接照明の組み合わせ。漆喰は2階の個室以外、すべての壁・天井に用いられている。Oさんの「地元素材を使いたい」との希望によるものだ。玄関ポーチやデッキ周りを印象的に彩る花ブロックも、2種類を使い分けた。

既製品は極力使わず
先に家を建てた妹の勧めで、「妹宅の斜め前」に敷地を購入。父親の入院を機に、「北部の実家にいる母親やきょうだいが集まりやすいように」と家づくりに着手。気心の知れた先輩に設計を手伝ってもらった。
好きな建築家はライトや吉村順三。既製品は極力使いたくないこと、10年かけて集めてきた北欧家具や雑貨類への愛着を語り、住まいへの思いを託した。夫妻は「細かい要望も多かったけど大工さんがよく応えてくれた」と感謝する。
仕事でなかなか休みが取れないOさんも、「前より家にいる時間が増えました」。ソファでくつろいだり、和室で子どもたちと昼寝したり。そんな家族をお気に入りのいすに腰かけて夫人が見守る。「好き」に囲まれた充足の暮らしが垣間見えた。


キッチンは壁付けにし、北側の緑が眺められるよう窓を設けた。天板の下に市販の棚を入れて使用。鉄瓶やかごなどこだわりの雑貨がインテリアに


LDKの掃き出し窓を開け放って。落ち着いた空間に、借景となる隣家の島バナナや芝庭の緑が映える

 

ここがポイント
大小、明暗にメリハリ LDKの快適さ高め

敷地は住宅やマンションが建つ住宅街の、袋小路の先端。設計者の島袋勝也さんは、「芝庭とつながるリビングをいかに居心地よく感じさせるか」に最も気を配った。
その仕掛けの一つが、空間のボリュームや明るさのメリハリ。「あえて照明を絞り天井も低めにした玄関から、細長いトンネルのような廊下を通り、広がりのあるLDKへ誘うことで、快適さがより際立つ」と説明。LDKへの入り口は小上がりにし、廊下からの眺めをステージ風にしているのも、LDKへの期待感を高める効果を狙ってのことだ。
水回りの黒いタイルも同様。室内の色味を抑えることで、トップライトから差し込む光や、窓外の緑を際立たせている。
素材使いもポイントだ。床は木、天井から壁は漆喰、キッチンはステンレスの天板のみと、内装は素朴な素材でシンプルに仕上げたことで、夫妻の好きな家具や雑貨が映える。
リビングの一角に設けた和室や、廊下、ゲストルーム、トイレは、柔らかみのある漆喰に合わせて丸みのある天井に。「母体に包まれているような安心感」も感じさせる優しい空間となった。


階段ホールからLDK側を見る。アーチ状の入り口が、こだわりの家具やペンダントライトのあるダイニングの一角を絵のように切り取る。吹き抜けも、上部のトップライトから差し込む光が漆喰の壁に映り込んで幻想的


2階の洋室は一続きにして使用。木製の机やおもちゃ類、照明は「長く使える物を」と夫妻が選んだもの


玄関。照明は正面のエジソンランプとダウンライトのみにし、ギャラリーのような雰囲気に。左手にシューズクロークを設けたことで、物が散乱せずすっきり


外観。ポーチや2階オープンテラスに用いた印象的な花ブロックが周囲からの視線を緩やかに遮る

[DATA]
家族構成:両親、夫婦+子ども2人
敷地面積:280.45㎡(約84.83坪)
1階床面積:116.26㎡(約35.16坪) 2階床面積:48.90㎡(約14.79坪)
建ぺい率:42.71%(許容50%) 容積率:48.6%(許容100%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート造壁式構造
設 計:大城顕+建築設計工房Paraya 島袋勝也
構 造:庵
施 工:㈱謝花組

[設計・問い合わせ先]
建築設計工房Paraya
0980-56-2955 www.paraya-architect.com
写真/矢嶋健吾  編集/徳正美
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1607号・2016年10月21日紙面から掲載
 

お住まい拝見

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
徳正美

これまでに書いた記事:91

編集者
美味しいもの大好き!楽しい時間も大好き!“大人の女性が「自分」を存分に謳歌できる”そのために役立つ紙面を皆さんと作っていきたいと思っています。

TOPへ戻る