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2022年9月2日更新

[沖縄・お住まい拝見]コートが生む広がり|久友設計(株)

[開放的なバリアフリー住宅]終(つい)のすみかとして、2世帯住宅への改装も視野に入れ、バリアフリーの2階建て住宅を建てたTさん。LDKに隣接する2つの吹き抜けのコートが、空間にも暮らしにも広がりをもたらす。

1階のLDK。吹き抜けになったコートに面しているため、明るく、開放的。
1階のLDK。吹き抜けになったコートに面しているため、明るく、開放的。グレーを基調にダークブラウンの造作収納を組み合わせたキッチンが、落ち着いた雰囲気をプラス


将来見据えて

Tさん宅
RC造/自由設計/家族5人

「人生の最期もこの家で迎える。だから、バリアフリーと将来の2世帯住宅へのリフォームを意識して建てました」と話すTさん。

駐車場からスロープを通り玄関へ。段差を低くした玄関を入ると、あとはフラット。吹き抜けになったコートに面して明るく、開放的なLDKが広がる。グレーを基調にシックに仕上げたキッチンは夫人のお気に入り。「脇に水回りがまとまっているので、家事がスムーズ」と夫人は話す。

コートは、家族のくつろぎの場。バスケットボールにバドミントン、バーベキュー。時にはテントを張って、プチキャンプも楽しむ。夏場の主役はプール。「夜でも気兼ねなく遊べる。室内の電気を消して星を見たり、子どもが寝た後、足だけつかりながら夫婦でお酒を飲んだり、ぜいたくな時間を過ごしています」

「長女が生まれた時にもらった泡盛のかめを置きたい」と設けた和室は、小上がりに。「腰掛けるのにちょうどいい高さで、車いすからも楽に移乗できる。将来は寝室です」

2階には、子ども3人の部屋と寝室がある。廊下の突き当たりに設けたデスクが、Tさんのワークスペース。「ここは、2世帯にリフォームした時に玄関になる場所。憧れだった書斎ができてうれしい」

キッチンからリビング、コートを見る。アイランドキッチンとつなげたダイニングテーブルの配置は、夫人の希望。
キッチンからリビング、コートを見る。アイランドキッチンとつなげたダイニングテーブルの配置は、夫人の希望。「子どもたちと一緒に料理をするなら、ぐるりと囲めるアイランドがいいと思いました。隣にテーブルがあるから配膳も楽」と夫人


リビング脇にある小上がりの和室。下部は収納。

リビング脇にある小上がりの和室。下部は収納。地窓で隣接する北側のコートからも光を取り込む
 

杉板模様のコンクリート製ルーバーが印象的なコート。夏場はプールが大活躍。

杉板模様のコンクリート製ルーバーが印象的なコート。夏場はプールが大活躍。ルーバー脇の勝手口の外には、犬を飼った時のために専用のシャワーも設けた


やりたい事がかなう
12年前、夫人の父の知人から土地を購入。同時期にTさんが起業したため、教育資金も考慮して新築を延期した。「建てたい気持ちを胸の内にしまって、事業をサポートしてくれた妻に感謝。その気持ちをこめて、デザインは全て妻に任せました」

設計は、建築家展に参加した夫人が、デザインに一目ぼれした建築士事務所に依頼した。「光と風通しの良さ、生活感がありそうでない雰囲気が気に入って。私たちの要望の上をいく提案を建築士さんがしてくれて、充実した家になりました」

子どもたちと一緒に料理をするなど一緒に過ごす時間を増やしたい、会社のスタッフを呼んで食事会をしたいといった、家族や人とのつながりを大事にする夫妻の、やりたい暮らしができる環境が整った。「あとは、犬を飼えると最高ですね」と笑った。

 


ここがポイント
コートで光・風・抜け

北東に前面道路があり、L字に変形した敷地。東と南には隣家が近接し、前面道路に向かって緩やかに傾斜していた。Tさんが希望したスロープの設置にあたり、「適切な勾配を取るため、土地の高低差を利用して建物の配置と玄関、スロープの位置を決めました」と、設計を手掛けた建築士の三井康介さんは話す。

建物を南側の奥に据え、玄関は東側に配置。傾斜をそのまま生かして道路側に4台の駐車スペースを確保し、スロープの出入り口は駐車場の最奥、西側に設けた。「車いすならポーチ西側のスロープから、徒歩なら玄関に近い東側の階段を上ってと、東西両側から出入りできるようにしました」

プライバシーと開放感を両立させるため、各居室でコートを囲むプランを採用。1階と2階で公私の空間も分けた。1階は段差をなくしたバリアフリー。LDKを挟むように、北側と南側に設けた二つのコートが、室内の明るさと風通し、開放感を高めるカギ。「壁面を杉板型枠のコンクリート製ルーバーにすることで、堅牢かつ風も光も、視線も抜ける。吹き抜けになっているため、上下階に家族の気配を伝える役割も担います」。デザイン的にも凛(りん)とした雰囲気を醸し出す、見た目のアクセントになっている。

2階部分は将来、2LDKの間取りにリフォームできるよう、随所に工夫を盛り込んだ=左リフォーム後のイメージ図面参照。外階段を設け、東側に玄関を作ることを想定し、廊下の突き当たりははめ込み窓にした。

「子ども室やギャラリー廊下の壁は、取り払いやすいよう板壁に。将来、キッチンにすることを想定して、西側の子ども室の床下には、給排水栓の立ち上がりを設置しています」。将来への備えが光る。

2階、廊下突き当たりに設けたTさんのワークスペース。

2階、廊下突き当たりに設けたTさんのワークスペース。将来は玄関になる予定

寝室。1番眺めのいい場所にコーナー窓を設けて、開放感を演出
寝室。1番眺めのいい場所にコーナー窓を設けて、開放感を演出

 

道路からの利便性を考え、玄関東側には階段を設けた。

道路からの利便性を考え、玄関東側には階段を設けた。正面がスロープ


杉板模様の仕切り壁とルーバーが印象的な外観。
杉板模様の仕切り壁とルーバーが印象的な外観。仕切り壁の裏側に玄関があり、写真右手がスロープの入り口になっている


屋内外でバリアフリーを重視。スロープから玄関への動線はコンパクトに。屋内外でバリアフリーを重視。トイレは車いすでの出入りを考慮し、広く取った
屋内外でバリアフリーを重視。スロープから玄関への動線はコンパクトに。トイレは車いすでの出入りを考慮し、広く取った


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども3人
敷地面積:233.94平方メートル(約70坪)
1階床面積:76.73平方メートル(約23坪)
2階床面積:62.62平方メートル(約19坪)
建ぺい率:36.18%(許容50%)
容積率:59.56%(許容100%)
用途地域:指定なし
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設  計:久友設計(株) 三井、小浜
構  造:Lifetect
施  工:ブレス創建
電  気:糸洲電機
水  道:山商

問い合わせ
久友設計(株)
電話098・974・4327
https://www.hisatomo-p.com/


撮影/比嘉秀明 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1913号・2022年9月2日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

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