[沖縄・お住まい拝見]「井」の字の間取りで広々|コバヤシ401.Design room|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

お住まい拝見

お住まい拝見

2022年2月18日更新

[沖縄・お住まい拝見]「井」の字の間取りで広々|コバヤシ401.Design room

[家事ラクなワンルーム]家事・掃除のしやすさを考え、広々ワンルームを希望したUさん家族。木目模様がついたコンクリートの壁と梁(はり)を「井」の字にして建物を支え、使いやすい間取りに。床は一続きながら、印象的な梁や天井高で空間にメリハリをつけた。

杉板型枠コンクリートでモダンな印象のUさん宅。床がフラットにつながるワンルームだが、天井から垂れる梁が緩やかに部屋を分けている
杉板型枠コンクリートでモダンな印象のUさん宅。床がフラットにつながるワンルームだが、天井から垂れる梁が緩やかに部屋を分けている


機能も広さも重視

Uさん宅
RC造|自由設計|家族4人

玄関の脇にある南側のテラスから室内の土間スペースまで濃いグレーのタイルが続き、高さ約3メートルのガラス窓から光が差し込む。室内に入ってまず目を奪われるのが、木目の浮き出た大きな杉板型枠コンクリート。「どこかに使いたい」という夫人(40)の希望をもとに、建物を支える壁や梁に施され、モダンな印象を与える。

家は平屋。間取りは井の字に分けられ、真ん中にダイニング、周囲に居室を配置している。大きな梁(はり)で区切られているように見えるが、床はほとんど一続きで、部屋の扉を開け放って大きなワンルームのように使う。「ロボット掃除機だけで掃除できてラク。休みの日は子どもたちがずっと走り回って大変だけど」とUさん(41)は笑う。

将来、仏壇を継ぐ時のために設けた和室は、LDKと合わせると約38帖のパブリックスペースに。今は長男(10)の勉強部屋になっており、学校のプリントを畳いっぱいに広げて宿題。家族がいつも目の届く場所で過ごす。
 

南のテラスから光が差し込んで明るい室内。右手キッチンからはどの部屋にも目が行き届く。小上がりの和室は下が収納になっている
南のテラスから光が差し込んで明るい室内。右手キッチンからはどの部屋にも目が行き届く。小上がりの和室は下が収納になっている
 

キッチン。冷蔵庫の隣のドアの向こうがパントリー。中にはウオーターサーバーなどが置かれ日常的に出入りするため開け放している。写真左手に洗面・家事室

キッチン。冷蔵庫の隣のドアの向こうがパントリー。中にはウオーターサーバーなどが置かれ日常的に出入りするため開け放している。写真左手に洗面・家事室


まとめて収納で完結

次男(4)が生まれてアパートでは手狭になったため、家造りを決めた夫婦。見学会などのイベントで事例を見て、「自分たちがイメージしているものに近いと感じた」建築士に依頼。将来、Uさんの両親から譲り受ける土地に建てた。

夫婦が求めたのは、掃除も家事もしやすい平屋。キッチンと洗面・家事室が横並びで行き来しやすい上、「荷物が多いので大きな収納も助かっている」とUさん。洗面・家事室の隣にファミリークローゼットが設けられ、洗濯も身支度もここで完結する。

夫人は使い勝手の良さを考え、LDKに加え、寝室の広さにもこだわった。約9帖と広々取ったことで「将来介護ベッドを使うことになっても安心」と笑う。

二つのテラスで風通しも良く、和室や子ども室などの白壁はサンゴしっくい仕上げで調湿に期待。「住み始めて、アレルギーがある次男の体調が少し落ち着いてきた気がする」とほほ笑む夫婦。希望の広さも機能も兼ね備えた住まいがそこにあった。

洗面・家事室。長い洗面台は衣類を畳んだり、身支度がしやすいよう配慮
洗面・家事室。長い洗面台は衣類を畳んだり、身支度がしやすいよう配慮


ファミリークローゼットは約3帖と大容量。洗面・家事室の隣にある


ここがポイント
高さでメリハリ
構造生かし大開口


Uさん宅を手掛けた建築士・小林進一さんは、「夫婦は使い勝手のいい広さを重視。井の字に配すことで部屋同士をつなげて使いやすく、構造的にもスッキリした」と話す。行事の際はテラスから和室とダイニングを一体に、家族で過ごす際はLDKを中心にと、シーンに合わせて組み合わせられる。間取りに沿って井の字に壁と梁を設けることで、凹凸なく建物を支え、杉板型枠コンクリートにしてアクセントも兼ねた。

天井は区切られたエリアごとに変化。「高さの緩急で部屋の用途に応じたメリハリをつけた」。ダイニングにあたる中央部は3・8メートルと伸び伸び。一方、個室や水回りなどの周囲部は、中央部から軒先へ流れるように低くなり、落ち着きを感じさせる。屋根は天井の形状と同じで、「夫婦が求めた、シンプルながら一ひねりある外観にもつながった」。

近接する隣家や前面道路からプライバシーを守るため、壁ですっぽり囲った外観に。風通しや採光は、外壁の内側にテラスを設け、南北から取り入れている。ここでポイントになっているのが、高さも幅もあるガラス窓。「構造的に影響のない場所に設けることで大きく開け、屋外の心地よさが感じられるようにした」

広さを重視し大きな空間になった分、エアコンの効きなど熱環境に配慮し、外壁にも屋根と同じ遮熱塗料を使用している。「エネルギーや周囲との関係性に配慮した都市型の住宅になったと思う」と小林さんは話した。

南側のテラスから和室を見る。ガラス窓の高さは最高3.5メートル、幅5メートル弱。行事の際の出入り口にもなる。植栽は造園業を営む夫人の父親に依頼し、一緒に木を選んだ

南側のテラスから和室を見る。ガラス窓の高さは最高3.5メートル、幅5メートル弱。行事の際の出入り口にもなる。植栽は造園業を営む夫人の父親に依頼し、一緒に木を選んだ

 

ダイニングの天井高は3.8メートル。天窓は北方向から安定した光を取り入れる

ダイニングの天井高は3.8メートル。天窓は北方向から安定した光を取り入れる

寝室は約9帖と広々。白壁はサンゴしっくい仕上げ
寝室は約9帖と広々。白壁はサンゴしっくい仕上げ

リビングは天井高が抑えられ落ち着きある雰囲気。木の格子戸の向こうがスタディーコーナー、その左に子ども室がある
リビングは天井高が抑えられ落ち着きある雰囲気。木の格子戸の向こうがスタディーコーナー、その左に子ども室がある


外観。周囲からプライバシーを守るため、すっぽり壁で囲った。屋根は防水・遮熱塗装、外壁にも遮熱塗装を施し、熱が伝わりにくいよう配慮

外観。周囲からプライバシーを守るため、すっぽり壁で囲った。屋根は防水・遮熱塗装、外壁にも遮熱塗装を施し、熱が伝わりにくいよう配慮
 


[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:247.94平方メートル(約75.00坪)
1階床面積:118.89平方メートル(約35.96坪)
建ぺい率:49.67%(許容50%)
容積率:47.95%(許容150%)
用途地域:第一種低層住居専用地域
躯体構造:鉄筋コンクリート壁式構造
設計:コバヤシ401.Design room 小林進一
構造:チーム+1  / 施工:金城組
電気:ゼネラル電設 / 水道:琉泉設備
造園:東海造園
 
問い合わせ
 コバヤシ401.Design room
 電話098・923・2439
 https://kobayashi401.com/


撮影/矢嶋健吾 取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1885号・2022年2月18日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2395

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る