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2020年8月28日更新

リビングは夢の図書館|(株)山口瞬太郎建築設計事務所

[お住まい拝見〕|本島南部のKさん(40)宅は、リビングの壁一面が大きな本棚になっており、図書館のように本が身近にある平屋。キッチンを中心とした家事動線や7.2帖のウオークインクローゼットもありすっきり暮らせる。


リビング・ダイニング。壁一面の本棚は、厚い棚板などのどっしりした印象により、まるで公共図書館のよう。夫婦が好きな雑貨店の収納ボックスがぴったり収まるサイズの棚には、本やおもちゃ、日用品、置物などがきれいにしまわれている

 

7.2帖の収納ですっきり

Kさん宅
 RC造/自由設計/家族4人 

ストレス解消した動線
勝連産の石材「トラバーチン」を積み重ねたひんぷんが出迎えるKさん宅。リビング・ダイニングは16.3帖で、大きな開口部もあり開放的。しかし、それよりも目を引くのが、高さ3メートル×幅6.8メートルの壁一面に広がる本棚だ。
読書好きなKさんの「日本中の本が収められた国立国会図書館で、毎日本を読んで過ごしたい」という夢を基に建築士が提案した。
棚板が厚くどっしりした印象で、下段は長男(5)や長女(2)、中段より上を夫婦が使う。数百冊の本だけでなく、おもちゃや日用品、小ぶりの植物なども並び、収納や飾り棚としても活躍する。
Kさんは「本が身近で、子どもたちが本に触れる機会も増えた。自分から図鑑で調べたりもしている」と、自身と同じ本好きに育ちそうな子どもたちを見て目を細める。

一方、夫人(42)のお気に入りは、キッチンを中心とした動線。リビングや水回り、ウオークインクローゼットまで最短距離で移動できる。
玄関とリビングの間にウオークインクローゼットや洗面室があるのも、「帰宅後、リビングに着くまでに服を着替えて手を洗える。リビングに脱ぎっぱなしの服がなくなり、ストレスから開放されました」と喜ぶ。


外観。三角形の庇がアクセント。コストを抑えながらも、雨にぬれずに車に乗り降りできるよう、この形になった



キッチン側から見たリビング・ダイニング。東側(写真奥)の壁全体が大きな開口部になっているため、中と外がつながっているように見える。外の景色も楽しめるため、夫人は「星の話をするようになった。冬には朝日もきれいに見える。普通の朝ご飯が豪華に見えますよ」と笑顔


合理的な家に
建築士との家づくりに対し、「作風を押しつけられてしまうんじゃないか」と不安を持っていた夫婦。依頼先選びに迷っていたが、4年ほど前、建築士へのインタビューが掲載された雑誌記事を見て「この人なら思いをくみとってくれそう」と夫婦の意見が一致。依頼することにした。
「合理的な家に住みたい」という夫婦の要望に応えるため、建築士は回遊できる造りで動線を効率化。和室は子どもの成長に応じて2室に分けられるほか、キッチンと壁で隔てながらも小窓で互いの様子が分かるようになっている。
Kさんは「家と一緒に年をとっていけそう」と笑顔。大きな本棚のある住まいには、図書館の本よりも豊かな家族の日々が納められていく。


玄関から一直線に延びる廊下。長男は「走るのが速くなったのはこの直線のおかげ」とうれしそう。回遊できる造りということもあり、子どもたちは自由に走り回る



7.2帖の広いウオークインクローゼット。家族全員の衣類や荷物などがまとめて収納されている。寝室とつながっているため、起きてすぐに着替えられる。ハンガーをかけるバーや棚板の位置は付け替え可能。子どもたちの正面には姿見の鏡がある


ここがポイント
本棚は躯体の一部
Kさん宅の敷地は、間口が狭く、奥に向かって細くなっていくような長細い形。両隣には住宅があり、右手にあたる南側の隣家は2階建てでもあった。
そこで建築士の山口瞬太郎さんは、敷地の形に沿う建物を提案。不整形でデッドスペースになりがちな北側は、リビングの本棚や寝室のヘッドボードなどとして生かすことにした。

その本棚は、もともと木製の家具を活用する予定だったが、「コストを抑えるため造作した。まず、本棚の骨組みの縦部分を躯体と一緒にコンクリートで製作。その太さが約10センチだったため、全体のバランスが合うように、棚板は厚さを約5センチにして木で作った」と山口さん。Kさんの好きな公共図書館のような大きいスケールの棚になった。また、棚の高さや幅、奥行きは、夫婦が好きな雑貨店の収納ボックスが、ぴったり収まるサイズになっている。

採光は、隣家からの視線を考慮して向きや大きさを調整しながら、ハイサイドライトやトップライトを随所に設けて確保。さらに、部屋に囲まれた廊下や水回りにも光を入れるため、坪庭を配置した。山口さんは「坪庭に面した廊下のドアを開ければ住宅内を巡る風の出口にもなる」と説明する。

間取りは家事動線を重視し、キッチンを中心に各部屋を配した。寝室との動線上にある7.2帖のウオークインクローゼットは、家族全員分の衣類だけでなく、来客用の布団や季節ものの家電なども収納されており、納戸としての役割もある。

そのほか、細部の仕様や色合い選びは写真共有アプリを活用。夫婦と山口さんが写真でイメージを伝え合い、決めていった。


ハイサイドライトで明るいキッチン。ステンレス製の広い作業台は「磨けばピカピカになり気持ちいいから」と夫人がこだわった部分。床は60センチ角の大きなタイルで掃除しやすい


和室。リビングと一体化させたり、引き戸を閉めてゲストルームとして使うこともできる。写真右手の壁には小窓があり、キッチンの様子が見える。将来を見据え、2室に仕切れるようになっている



浴室。窓の外の坪庭のおかげで、採光や換気に役立つ大きな窓を設けられた。トップライトもあり、とても明るい


木のぬくもりを感じる寝室。造り付けのヘッドボードは「メガネを置くのに便利」とKさん。道路に面しているが、防音ガラスで静か

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[DATA]
家族構成:夫婦、子ども2人
敷地面積:225.08平方メートル(約68.01坪)
1階床面積:101.2平方メートル(約30.61坪)
建ぺい率:57.52%(許容60%)
容積率:44.96%(許容200%)
用途地域:未指定
躯体構造:壁式鉄筋コンクリート造
設計:(株)山口瞬太郎建築設計事務所 山口瞬太郎、古堅宗高
構造:(株)濱川構造設計
施工:成道建設
電気:富山電気
水道:(有)海西工業


[問い合わせ先]
(株)山口瞬太郎建築設計事務所
電話=050-3365-7595
https://yoaa.jp/


撮影/矢嶋健吾 取材/出嶋佳祐
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1808号・2020年8月28日紙面から掲載

この記事のキュレーター

スタッフ
出嶋佳祐

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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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