庭・garden
2018年9月7日更新
【プロがつくる庭】アパートの駐車場 人集うリゾートに
vol.02 このコーナーでは、和洋問わずプロが手掛けた多彩な庭を紹介します。
ハイドアウト オキナワ ウルマ(うるま市石川)
地下に浄化槽 デッキでカバー
「ハイドアウト オキナワ ウルマ」の庭。中央のウッドデッキテラスの下には浄化槽が埋まっていて、「植栽が出来なかった」と葉棚さん。制約をカバーしながらリゾート感を演出。テラスの周りを葉が大きいナツメヤシやミツヤヤシ、ブーゲンビレアやブラシの木などが囲み、訪れた人々の目を楽しませる
リノベ前 ▲
以前は、230平方メートルのコンクリート張りの駐車場だった
木の高さ抑えて風対策
数カ月前までここは、コンクリート敷きの駐車場だった。うるま市石川にあった共同住宅を用途変更し、ことし7月にオープンしたコンドミニアムリゾートホテルのガーデン。
潮風に揺れるヤシの葉を、ウッドデッキテラスからボーっと眺める人々。花ブロックの向こうにはキラキラ輝く東海岸。宿泊客だけでなく近隣の住人もフラッと訪れる癒やしの空間に生まれ変わった。
手掛けたのは葉棚達也さん。大幅なリノベーションは、制約も多かったと言う。最たるものは「地下に浄化槽が埋まっていて、敷地の半分以上は木を植えられなかった」こと。浄化槽の上はデッキを張ってリゾート感を演出。その周囲に、塩害に強いオリーブやブラシノキ、ウェストリンギアなどを植栽した。
「風対策に支柱は有効だが、ガーデンの雰囲気を印象付けるヤシには、あえて支柱をつけなかった。高さを3メートルと低めにしたので風で倒れることはない。風で湾曲して成長すれば、それは庭の味になる」
骨太のオリーブに鋼の鉢
ガーデンの入り口には高さ60センチほどの本部石灰岩製の花壇がある。「この花壇は、外からガーデンを見たときに、中央にバーンと広がるデッキテラスをほどよく隠し印象を和らげる役割がある」。内側から外を見たときも、花壇とその上の木々がゆるく目隠しする
リノベ前 ▲
経年変化楽しむ緑と鉢
シンボルツリーは、幹の太さが直径1メートルはあろうかという、樹齢150年超のオリーブの木。通常、オリーブの木は繊細な姿で優しい印象だが、このオリーブは力強く、他の木々を従える“王者の風格”すら感じさせる。「スペインから1カ月ほどかけてゆっくりと船で運んできた。1年半ほどうちで養生し、ここで元気に枝を伸ばしている。訪れる皆さんに元気を与える『パワースポット』になれば」。
オリーブを支える大きな鉢の、茶色の源はサビ。「これはコールテン鋼といい、ヨーロッパでは建材や鉢など広く使われている」。シンボルツリーのパワフルさをハードな鉢がより引き立てる。「サビているのは表面だけで、腐食が内部には進まない鋼材。耐用年数は200年以上とも言われる。年月がたつとサビの色が深みを増し、黒っぽく渋い風合いになっていく」と葉棚さん。
庭の敵のはずの潮風を味方に付け、木々も鉢も味わいを増す。生まれ変わったガーデンの、これからが楽しみだ。
シンボルツリー 鉢にも注目!
庭に入ってすぐ目を引くのがシンボルツリーのオリーブ。樹齢150年以上で、どっしりした幹からパワーを感じる。またコールテン鋼製の鉢と相まって存在感を放つ。葉棚さんは「この木と鉢のセットは、日本ではほかにないと思います」と語る
奥の茶色い壁に描かれているのはシンボルツリーのオリーブ=上写真=をモチーフにした同ホテルのロゴ
ハイドアウト オキナワ ウルマ
うるま市石川東恩納1710-1
098-963-0600
設計・施工/HADANA
http://www.hadana-g.com
編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1705号・2018年9月7日紙面から掲載
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。