新しい年に台所から幸せ広げる|対談|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

家づくりのこと

対談

2018年1月5日更新

新しい年に台所から幸せ広げる|対談

一級建築士の金城司さんと料理研究家でファイナンシャルプランナーの岡田有里さんが「週刊タイムス住宅新聞」の視点から「プロが語る『現代キッチン考』」、「週刊ほーむぷらざ」的アプローチとして岡田さんのおもてなし術などを紹介します。


 

食を通して学ぶ 大切な家の要

プロが語る「現代キッチン考」

岡田
家造りの際に台所を考えた時、人や物の「流れ」がスムーズであることを大切にしました。自宅で料理教室を開いているので、一度に最大10人が台所に立ちます。
当初は夫との2人暮らしで料理教室を開くことが前提でしたが、妊娠が分かり、子育てする場としての視点も入り、家族3人がスムーズにストレスなく暮らせることを考えました。

金城
私も設計にあたって「流れ」を重要視しています。生活動線がスムーズでないとストレスがかかり、一つずつは小さくても積み重なると大きくなってしまいます。ストレスをいかに無くすかが、建築上のテーマの一つでもあります。
家事動線は特に大切で、使い勝手の良さはもちろんですが、空気がよどみなく流れる空間を考えています。

岡田
私の家に来た方は台所に何も置かれていないので驚かれることが多いんです。実は、私の妹の家もこんな感じです。生まれ育った場所がベースになっていて、母親は調味料一つさえも出しっ放しにせずに、上手に片付けをする人でした。物が出されていないのでさっと掃除ができて楽なんです。


シンプルデザインで
掃除を楽に、簡単に


金城
先ほど話した生活のストレスを無くすために「掃除が楽で簡単」というのは大事です。シンプルなデザインにすることで「きれいに保たなければいけない」という意識も芽生えるでしょう。
空気の流れが止まるとほこりもたまります。流れを止めないために、最近、設計に取り入れているのが24時間、開けられる換気用の小さな窓です。人が出入りできない大きさで、トイレや浴室などの水回りに使います。
部屋の窓をたくさんほしいと希望する方もいますが、実は掃除が大変で結局、開けなくなってしまうケースもあり、全体のバランスが重要だと思います。


さまざまな情報から
想像力や交渉力も


岡田
確かに、スタイリッシュなデザインで美しさを保つためには、強い意思と努力が必要になります。きれいにするために疲れるのは嫌なんです。

金城
最近の住宅では子ども部屋が小さくなる傾向があり、その代わり、ダイニングテーブルで宿題ができるようにキッチンと一体化した設計が増えています。
キッチンは料理だけではなく、作業や勉強の場にもなる「家の要」です。食材や道具、火を使い、音やにおいも出ます。子どもは見ているだけで料理のリズムを体で覚えたり、包丁や火などの危険も含めて一番学びが大きい場所だと思います。

岡田
息子は私が料理をしている間、近くで勉強やお絵かきをしながら様子を見ています。すると材料や切り方など、断片的な情報からどんな料理になるのかを想像するようになったんです。
自分の苦手な料理だと分かると「あの材料にした方がいいんじゃあない」と、さりげなく交渉してくるんです。特に教えてもいないのに分かるんですね。

 

家族で描く 未来の暮らし

ライフプランの中心に

金城
私も自分で料理をするのですが、後片付けが「面倒くさい」と思っていたんです。でもある日、きれいな水が蛇口から出てくることに気が付きました。これってぜいたくなこと。器も「どうしてこんな形なのか」とか考えたりします。
姉が陶芸家なので、作り手の立場になると、食べ終わった食器を洗わずにそのままにしておくといけないのでは、と考え、器にも感謝するようになりました。食材の面白さにも出合い、料理をすることで癒やされています。それを作るキッチンって本当にすごいですよね。


プロの情報を聞き
イメージ具体化


岡田
料理を教えるほかにファイナンシャルプランナーとしての活動もしていますが、住宅ローンの相談もあります。人生のさまざまな変化に合わせたプランが必要になってきますが、家の中の台所から未来のビジョンも生まれてくると思っているんです。
料理のにおいや音、お母さんの味、さまざまな思い出が、人生を表す絵として脳裏に残され、それをベースに自分の未来を描きます。家を建てるには建築士やキッチンプランナーといった建築のプロからの情報が入り、イメージが具体化されてきますよね。
私もファイナンシャルプランナーとして、一般的には知られていない情報を足していき、その方の人生を豊かに色鮮やかにしていきます。人と話すことで未来の自分の生き方を整理し、人生を冷静に考えることができると思っています。

金城
キッチンは食事を作り、それを食べることで力になり、そこから未来に向かう場でもありますね。人を作り、その家族や関わる人の歴史や文化も作ります。

岡田
台所の役割って「家の要」として重要ですね。
 


特集記事
岡田流「キッチンMAGIC」






【プロフィル】
金城司 きんじょう・つかさ
門(ジョウ)一級建築士事務所取締役、一級建築士。2017年沖縄建築賞正賞を受賞。


岡田有里 おかだ・ゆり
料理研究家。ファイナンシャル アライアンス(株)沖縄支店 ファイナンシャルプランナー



(撮影協力/(有)モブ、着物提供・着付け/京ごふく よしだ)


毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1670号特別号・2018年1月5日紙面から掲載

対談

タグから記事を探す

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2138

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る