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2024年8月16日更新

【人物紹介】沖縄ならではの風景 建築から|株式会社ADeR代表取締役の仲本昌司さん[ひと]

戸建てから集合住宅、商業ビル、城址公園といった公共建築まで、幅広いデザインを手がける(株)ADeRの仲本昌司さん(45)。今春、イタリアの国際コンペでシルバーデザイン賞を受賞した。「沖縄の古民家を再構築した住宅が、世界で認められた意義は大きい」と喜ぶ。

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「愉しさ」味わえる住まいカタチに



株式会社ADeR
代表取締役 仲本 昌司さん


〈プロフィル〉なかもと・まさし 1979年、那覇市出身。2002年、京都造形芸術大学卒業。(株)髙﨑正治都市建築設計事務所、(有)アトリエ門口をへて、17年アデル一級建築士事務所設立。18年、株式会社ADeRとして法人化。

◆一級建築士事務所 株式会社ADeR:豊見城市翁長4-10、
 アトリエ:宜野湾市新城1-17-8-302、
 電話=098・800・1869


-イタリアの国際コンペで受賞した。

県内や国内でもさまざまなコンペが開催されていて私もチャレンジしてきましたが、世界中から応募がある国際コンペは、建築物として、より空間の美しさや表現力が求められると思っています。また沖縄で主流のコンクリート建築は重量感があり、高度な石工技術とセンスが息づくイタリアの石像文化に近いところがある。そこでどう評価されるかにも興味がありました。今回世界で認められたことで、自分の感覚は間違っていなかったと自信になりました。

受賞したのは、沖縄の古民家を現代技術で再構築した住宅です。屋根を3分割し高窓を設置。そこから北側の安定した光を取り込み、風を通すよう計画しました。大きな勾配屋根を支える柱は4本。視界を遮るものを極力省いて開放感を高めたことで、コンクリートの素材感も沖縄の空や緑の美しさも際立つ、シンプルでダイナミックな空間となっています=下写真


「三枚屋根の家」。室内からテラス越しに南庭を見る。視界に入る柱が少なく、天井・壁・床のつながりが内外の一体感を一層高める(ADeR提供)

-仕事で大切にしているのは?

受賞作もそうですが、余白、愉(たの)しさをいかに造るか。ここで言う愉しさとは、何かをエンジョイする楽しさではなく、その環境だからこそ感じられる光や風、自然との一体感を味わうことです。

特に住宅は建築費の高騰もあってコスト・機能重視になりがち。ですが、コンクリートが贅沢品になりつつあるからこそ、建てるならその良さを最大限に生かしつつ、沖縄の気候や敷地の周辺環境、予算を受け入れ、愉しさを味わえる住まいをいかにカタチにしていくか、そこに尽きると思っています。

-独立し7年。今後の目標は?

沖縄だからこそできることを大事にしたい。住宅だけでなく、商業施設や公園などの公共施設、ビーチや街路樹なども含め、その土地の文化や気候風土を生かしながら、そこにしかない建築物を造っていくことが地域の価値を高めることにつながる。そうして沖縄にしかない風景ができれば、それが沖縄の価値となり、味わいになります。

そのためには自ら発信することが重要。足がかりとして、オフィス兼宿のような沖縄の良さを存分に味わえる建物を自分たちで建てて運営するプロジェクトを進行中です。また歴史文化を踏まえた開発・保全の在り方や、まちづくりの基本構想を提案できる体制を整え行政に働きかけられるよう準備を勧めています。そうすることで仕事の幅が広がり、自分たちも愉しむことができますからね。

建築の道を志して23年。多くの人と出会い、国内外の建築を見てきましたが、「美しいな」と感動するのは、やっぱりその地だからこそ生まれたもの。今後も沖縄ならではの建築や風景を模索し続けます。
 

伊の国際コンペで銀賞
古民家再構築「三枚屋根の家」
仲本昌司さんが設計した「三枚屋根の家」=上写真=(ADeR提供)がこの春、イタリアの国際コンペティション「A’DESIGN AWARD(エーダッシュデザインアワード)2023-2024」で、建築・構造デザイン部門のシルバーデザイン賞を受賞した。

同コンペは建築をはじめ工業デザイン、ファッションなど幅広い区分があり、100を超える国や地域から1万点以上の応募が集まるもの。仲本さんが受賞したシルバーはその上位5%に贈られる。

仲本さんは「沖縄の伝統文化を元に生み出した住宅が世界中の作品が集まる国際コンペで受賞したのは意義がある。依頼主にとっては安心材料になると思うし、働いているスタッフのモチベーションにつながる」と喜んだ。

取材/徳正美
毎週金曜日発行「週刊タイムス住宅新聞」
第2015号・2024年08月16日紙面から掲載

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