庭・garden
2024年8月2日更新
【プロがつくる庭】旧家の材を生かした もてなしの琉球庭園
作庭/(有)浦西造園
旧家の材を生かした もてなしの琉球庭園
古民家食堂 上江門 (八重瀬町)
完成してまだ3カ月足らずとは思えないほど、年代を感じさせる琉球庭園。「以前からこの敷地にあったアコウの木(写真奥)を主木にし、石はすべてもともとあったものを使っている」と庭師の我如古さん。写真奥が高く、手前が低くなっている土地の形状を生かして水の流れを造った
せせらぎで 目に耳に涼
落ち方変えて水音に深み
ことし6月にオープンした「古民家食堂 上江門」は、八重瀬町にある上江門家門中の宗家を改修した沖縄そばの店。約600坪の敷地に琉球庭園やフクギの防風林、芝庭などがある。
琉球庭園の中央にあるせせらぎは涼やかな水音を響かせ、撮影時(7月19日)の記録的な猛暑も和らげてくれた。作庭した浦西造園の我如古満代表は「高低差がある敷地をを生かして水の流れを造った」と話す。もともと水がたまりやすく、沼地のようだった場所を整地し、コンクリートで池を製作。また、敷地に点在していた石を集めて滝石組みなどに利用した。
以前は、この高低差のせいで水がたまりやすく沼のようだった
中腹から流れ出た水は、軽やかな音を立てて滝石組みを落ち、池に波紋を広げる。滝石組みは小さめの石が積み重なっている。「クレーンが入れない場所だったので、人力で動かせる石で組んだ」。複雑な形状が水を幾筋にも分け、さまざまな音色を生み出す。
正面にある流木の筧からもチョロチョロと水が流れる。それを受け止める手水鉢は、もともとこの庭にあったもの。「大木が朽ち倒れ、そこから湧き水が染み出てきたイメージ。大自然のたくましさを表現している」。さまざまな水場を設けて「音に深みを出している」。
琉球庭園は手前に流木の筧があり、奥に滝石組みがある。「この庭は、奥に石や大木が多くて手前が軽く見えがちなので、重厚感のある流木でバランスを取っている」と我如古さん
建物内から見た庭。室内からでも美しく見えるよう配慮して作庭されている
防風林整え 芝生にもひと工夫
いつ来ても楽しめる庭
琉球庭園の植栽に関して、我如古さんは「昔からあった立派なアコウの木を主木にしている。ただアコウは落葉がすごいので、しっかり剪定した」と説明する。
同庭園は建物に隣接していて、食事をしながらも眺められる。「お客さんがいつ見ても楽しめるよう、多彩な植物を植えている」。撮影時は、コンロンカの赤やスパイダーリリーの白が映えていた。そのほかにもアジサイ、オクラレルカ、サクラ、リュウキュウアブラギリ、ナンテンなども葉を広げる。「オーナーの要望だった松竹梅も植えている」。
敷地外周のフクギの防風林も樹形を整え、その足元にサンダンカやアマリリスを植えて彩りをプラスした。
立派なフクギに守られた正門。クランク型に折れた道は、魔物は直進する性質を持つため、侵入を防ぐという風水思想にもとづいている。正面にはひんぷんがあり、奥に建物がある
出入り口前のフクギ防風林
敷地を守るように立ち並ぶフクギ。以前はうっそうとしていたが、剪定して整えた
随所の芝生は「日当たりが良い場所と悪い場所で種類を変えた」。日当たりが悪い場所は草丈の長いセントオーガスチンという種類にし、庭一面、青々とした状態を保つ。
「いつ来ても心地よくゆったり過ごせるよう気を配った。特に琉球庭園は、目にも耳にも涼やかなので今の時期にぴったり。ぜひ多くの人に足を運んでほしい」と我如古さんは話した。(東江菜穂)
芝生は、日影側(写真奥)は耐陰性が高いセントオーガスチン、それ以外はコウライ芝を使っている
広々&青々とした芝庭。琉球石灰岩の石垣やソテツ、リュウキュウマツなどで彩られ沖縄らしい景観
改修前
上江門家所有の古民家を大規模改修した「古民家食堂 上江門」。写真左側に庭園があり、庭を楽しみながら沖縄そばを食べられる
古民家食堂「上江門」
住所/八重瀬町安里198
営業/午前11時〜午後3時(ラストオーダー)
※月曜定休 電話/098・996・9069
https://sites.google.com/view/uejo-soba
作庭/(有)浦西造園
住所/浦添市沢岻1254
電話/098・877・3542
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2013号 2024年8月2日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 東江菜穂
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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。