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2022年1月21日更新

[沖縄]建材ピックアップ|転倒事故が起こる前に床の滑り対策

高齢者が転んで骨折し、寝たきりになってしまうケースは少なくない。その転倒事故の多くが自宅で起きている。コロナ禍で、家にいる時間が増えた今だからこそ、転倒対策をしっかり行いたい。今回は、滑りにくい床材を紹介する。

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 ここが危険  玄関前や浴室などぬれる場所は注意

消費者庁の調査によると、高齢者の転倒事故のうち約半数が住み慣れた自宅で起きている。

豊見城市で床の滑り止め施工専門店を営む金城一さんは、「うちの父も10年前に自宅のリビングで転倒。骨折を機に長く入院した後、他界してしまった」と話す。その体験から「防滑」に取り組むようになった。「つまずき、ふらつき対策のために段差を無くしたり、手すりを設置する人は増えているが、滑り対策までしている家は少ない」と話す。

「人は加齢とともに身体機能が低下していく。家も長く住むうちに床などが摩耗して滑りやすくなる。つまり、高齢者はダブルで転倒リスクが高くなっていく」と警鐘を鳴らす。

消費者庁の調査によると、自宅で転倒事故が多いのは浴室・脱衣所、次いで庭・駐車場となっている。金城さんは「ぬれる場所は特に滑りやすい。そういうところは滑りにくい床材を使ったり、床の防滑施工をすると安心」とアドバイスする。

図1・転倒事故の発生場所

2015年4月~20年3月末に消費者庁に寄せられた転倒事故情報を精査(消費者庁・20年10月発表)


最近の防滑床材

ひと昔前は「滑りにくい床材」というと、ゴムマットだったり、靴底のように凹凸のついたものだったり〝見た目より機能性重視〟だった。「しかし、凹凸が付いていると汚れが付着しやすい。最近は、そのデメリットを軽減した製品が増えている」と金城さん。

凹凸を目に見えないほど小さくしたり、普段はフラットだが体重をかけることで凸部が出てくるという床材も登場している。

既存の床には「マットを敷いたり、床表面を削って凹凸を付けたり、骨材を吹き付けて凸部を造る方法がある。最近では、見た目を変えずに防滑性能を高められる溶剤もある」と話す。「タイルをはじめ、コンクリートやフローリングに施工できる工法もあるので、悩んでいる人は一度、プロに相談してほしい」

金城さんの会社でもさまざまな工法でニーズに対応している。「住宅で最も多いのが、浴室の滑り止め。駐車場や外階段も多い。廊下やリビングなどフローリングの依頼もある」と話す。

「転ぶと、多くの人が『恥ずかしい』『年を取ったな』で終わってしまうが、命に関わる危険が潜んでいる。放置せず対策してほしい」と力を込めた。

図2・場所別の事故件数
消費者庁・20年10月発表

消費者庁が2020年10月にリリースした資料によると、自宅で最も転倒事故が多い場所は浴室・脱衣所。次いで庭・駐車場。金城さんは「ぬれる場所は滑る危険が大きい上、床が固いのでケガの度合いも重くなりがち。注意が必要」と話す


 

 防滑建材  表面フラットでも滑りにくく衛生的

滑り止め専門店の技生かし幅広い床に対応
(株)一球さん(豊見城市)
住宅の浴室に滑り止め施工(スリップガード)を行う金城さん
住宅の浴室に滑り止め施工(スリップガード)を行う金城さん

床の滑り止め施工専門店、一球さんでは、要望に合わせてさまざまな防滑施工を行う。一番人気は、「スリップガード(溶剤工法)。石やタイル、コンクリートなどに科学的処理をして、見た目はそのままで防滑性能を高めることができる」と同社の金城一代表。スーパーのエントランスから一般住宅の浴室まで、幅広い場所での施工実績がある。

また、紫外線を照射して床に骨材を定着させる「UVコーティング(紫外線照射法)は、フローリングや塩ビ、石材や金属などあらゆる床材の上から施工できる。約2秒で硬化するので短時間で施工できるのもメリット」と話す。

とにかく滑り止め効果重視なら、「グリップコート(透明防滑塗料)がおすすめ、骨材が入った透明なコート剤を塗布する。駐車場などの要望が多い」と話した。


問い合わせ/(株)一球さん
豊見城市真玉橋67
電話=098・953・7681




室内外で使える防滑タイル「インドア・アウト・シリーズ」
(有)パンテックコーポレーション(宜野湾市)

磁器タイル「インドア・アウト・シリーズ」は、特殊な釉薬を使っており、表面は滑らかだがぬれても滑りにくい。屋内外で使えるのが特徴磁器タイル「インドア・アウト・シリーズ」は、特殊な釉薬を使っており、表面は滑らかだがぬれても滑りにくい。屋内外で使えるのが特徴

これまでの防滑タイルは、滑りにくくするために表面に凹凸を付けていたため清掃性に少々難点があった。しかし、(有)パンテックコーポレーションが取り扱う磁器タイル「インドア・アウト・シリーズ」は、特殊なエナメルをタイル表面に施釉(せゆう)することで、表面はフラットなまま防滑性能を高めた。同社の山内直幸代表は「室内にも屋外にも使えるのが魅力。例えばリビングとテラスに同じタイルを使えば、一体感が生まれる。居住空間に広がりをもたせることができる」と話す。デザインも豊富で、自然石の模様や木目をリアルに再現したものもある。

問い合わせ/(有)パンテックコーポレーション
宜野湾市大山6-45-10 
電話=098・890・5567




荷重かかると骨材が露出「アルトロ セーフティーフロア」
(株)ナイソ(浦添市)

同製品は厨房用として開発された。発売して40年以上たつが、「抗菌性もあり、人気の衰えないロングセラー商品」と宮田さん
同製品は厨房用として開発された。発売して40年以上たつが、「抗菌性もあり、人気の衰えないロングセラー商品」と宮田さん

通常はフラットだが、荷重がかかると骨材が露出する
通常はフラットだが、荷重がかかると骨材が露出する
 

水よりも滑りやすいのが油。両方を使う厨房はかなり滑りやすいので防滑性が要求される。だが、清潔さも大事なので掃除がしやすいフラットな床の方が良い。その両方を兼ね備えた床材が(株)エービーシー商会の「アルトロセーフティーフロア」だ。普段はフラットだが、体重がかかると表面の塩化ビニル樹脂部が沈み、シート中に練り込まれた骨材が露出。滑りにくくなる。同製品を取り扱う㈱ナイソの宮田達也さんは、「厨房のほか、非常用の外階段に使っているところもある」と話した。

問い合わせ/㈱ナイソ
浦添市大平2-20-1
電話=098・877・8700





見た目変えずに防滑性UP「ASL工法」
(有)さくら(名護市)

玄関タイルに施工している様子。施工前後で見た目に変化はない。特殊な溶剤を塗布して目に見えない微細な穴を開け、滑りにくくする

(有)さくらは、タイルや石の美観を変えずに滑りにくくする「ASL(エーエスエル)工法」を行っている。同工法は、特殊な溶剤を塗布してタイルや石の表面に1000分の数ミリの穴を形成。水の逃げ場を作ることで、ぬれても滑りにくくする。一般住宅なら、玄関先のタイルや浴室などにおすすめだそう。県内で初めて(一社)アンチスリップ・ラボ(横浜市)の正規施工店に認定された。


(一社)アンチスリップ・ラボ会員マーク

問い合わせ/(有)さくら
名護市東江1-13-8 
電話/0980・51・0033


編集/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1881号・2022年1月21日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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