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2019年8月2日更新

準備は1年がかりで|みんなの防災計画[5]

文・長堂政美
前回に引き続き、災害時に高齢者や障がい者などの避難を支援する「災害時避難行動要支援者避難支援事業」を紹介する。今回は事業を実施する際の流れについて。個人情報の扱い方と、時間をかけた準備が大切だ。

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■災害時避難行動要支援者避難支援事業②

個人情報は徹底管理を

避難誘導計画は非公開


災害時に自力での避難が困難であることを自主防災組織などに申し出て、登録された高齢者や障がい者などを「災害時避難行動要支援者」(要支援者)といいます。

その要支援者の避難を支援する取り組みとして「災害時避難行動要支援者避難支援事業」(避難支援事業)がありますが、実施する際は、下の①~⑪を時系列的に行う必要があります。全て終えるには、約1年を要すことをご留意ください。

実施するにあたり、注意したいのが個人情報の扱い方。要支援者個々の情報と避難誘導計画は非公開となります。当然、自主防災組織間で情報は共有しますが、第三者に漏えいしてはならないなど個人情報保護法と市町村条例で規定されていることは知っておきましょう。

特に、個々の情報をまとめた「個別計画書」には、病名や薬の種類、就寝場所を示した間取り図など多項目が記載されているので、管理体制の整備も必要です。


災害時避難行動要支援者避難支援事業の流れ

①自主防災組織会長への避難支援事業の説明
 行政やNPOなどが、自主防災組織を統括する会長に対して避難支援事業の内容説明を行い、自主防災組織役員会等で議題とするよう要請する

②避難支援事業について役員への説明会
 通常、役員会で避難支援事業を実施するか否かが確定する

③避難支援事業について住民への説明会
 あらかじめ事業内容を住民に周知しておけば事業がスムーズに進む

④防災ウオーク実施とそれを基にした地域独自の防災マップ作成
 住民が地域内を歩き、災害リスクや避難経路、避難場所などを把握する防災ウオークを実施。全世帯に配布するための防災マップ(公開用)を作成する。マップエリア内に住む要支援者個々の避難誘導計画(要支援者宅から避難場所までの経路などを示した個別の防災マップ。非公開)作成につながる

⑤要支援者とその避難支援を手伝う避難支援協力員の掘り起こし
 要支援者として登録するかどうか、またはその避難を手伝う避難支援協力員として登録するかどうかのアンケート用紙を作成。自治会会員・非会員に関わらず、地域内の全世帯に配布する。必要に応じて個別訪問を実施し、万全を期す。あらかじめ民生委員、ケアマネジャー、地域包括支援センター、社会福祉協議会等から要配慮者情報を入手し、特定しておくことも必要

⑥アンケートの回収
 公民館に回収箱(鍵付き)を設置するか、自治会長等が当事者や家族からアンケート用紙を直接受け取る。届け出がない場合は避難支援の対象外となる。しかし、アンケート自体を見ていない可能性を考慮し、⑤で民生委員などから得た情報を基に個別訪問も行う

⑦同意があった人の個人情報収集と避難誘導計画の作成
 届け出のあった要支援者宅へ行き(家族同伴)、個人情報を収集。それを基に個別計画書と避難誘導計画を作成。個人情報収集は、自主防災組織役員、民生委員、ケアマネジャー、地域包括支援センター、社会福祉協議会等が行う

⑧個人情報と避難誘導計画についての避難誘導支援員への説明会
 作成した要支援者個々の避難誘導計画や個人情報を、避難支援にあたる人に説明する。具体的には、どの避難支援員が、どこの要支援者を、どのようにして、どこに避難誘導するのかを説明し、訓練で検証するよう伝える

⑨総合防災訓練とセットとなった要 支援者避難誘導訓練の実施
 低地帯では津波警報や大津波警報が、高台では暴風特別警報などが発表された場合を想定し、要支援者を対象に災害実動訓練を実施。複合災害を想定して初期消火、救出救助、救急救命、要支援者の安否確認に避難誘導、炊き出しなどの訓練を併用実施する

⑩避難訓練検証会議と避難誘導計画の見直し

⑪ ⑤~⑩のPDCAサイクル
 計画(Plan)⇒実行(Do)⇒検証(Check)⇒改善(Act)を繰り返し行うことによって、避難支援事業が実際に機能するようになり、来るべき災害に対応できるようになる


災害時避難行動要支援者個別計画書のひな型例




ながどう・まさみ/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長 098-923-4442

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1752号・2019年8月2日紙面から掲載

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