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2019年6月28日更新

沖縄美ら海水族館 平成14年(2002年)開館|設計/故・国場幸房+国建

【建築士は時代を造る|沖縄 平成の名建築】7月1日は建築士の日。時代を超えて人々の心をつかむ名建築を手掛けた県内の建築士や、新たな時代を造る建材&工法を生み出した建築士を紹介する。

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県内には世界中の人々の心をつかむ建築物がある。その中から平成に完成したものをピックアップ。手掛けた建築士の裏話と共に紹介する。

公園の景観に配慮し、ボリュームを小さく見せるため屋根を細分化。マンタの群泳をイメージさせるデザインにした。マンタの中央部分はトップライト(天窓)になっていて、ここから水槽へ自然光が注ぐ
 

“世界一”に臨む勇気

柔軟な発想で挑む​
のちに世界中の人が驚きの声を上げる場所。まだ屋根すらない工事現場で、国建の国場幸房さん(享年77)と安谷健(現在54)さんは語り合っていた。「ここに、かつてない水族館ができるぞ」。

3年後、開館式典を終えた同社のプロジェクトメンバーは、あのときと同じ場所にいた。目の前には世界最大級の水槽。子どもたちの歓声を聞き、国場さんは安谷さんの手を握った。「良い仕事したね」。安谷さんは「その手の温かさも相まって、胸が熱くなった」。

1995年度に行われたプロポーザルコンペにより、国建が新しい水族館の実施設計を行うことになった。公共建築やホテルなど、さまざまな大型建築の設計を手掛けてきた同社にとっても、トップクラスの大きさで特殊な建物。「社の総力を挙げて挑んだプロジェクトだった」と安谷さんは振り返る。それを引っ張ったのは「幸房さんの常識にとらわれない柔軟な発想」だ。

その一つが大水槽の巨大アクリルパネル。基本計画ではパネルに4本の補柱を建てることが決まっていた。しかし、国場さんは「一枚の大型パネルで沖縄の海を表現したい」と、技術者に話を聞いてまわった。当時、日プラ(香川県)が鹿児島県の水族館で補柱のない大型パネルを手掛けたことを知り、早速現場を見に行った。国場さんはこの時のことを「可能性が見えたので、どうしても実現したくなった。皆もそれを期待するものと信じた」と記している。日プラもその気概に共感し、高さ8.2メートル×幅22.5メートル×厚さ60センチの巨大アクリルパネルが完成=下写真。当時、世界一の大きさで、ギネス世界記録に認定された。


美ら海水族館の目玉である大水槽。国場さんの提案で上部にトップライト(天窓)を設け、自然光を取り入れる。左下に見えるのはアクアルーム。基本計画では水中トンネルをつくる予定だったが、国場さんが「トンネルだとゆっくり観賞できない」と、座って観賞できるアクアルームに変更した
    
こんなこともあった。水族館の実施設計を終えた後、「入り口までの動線にエスカレーターを設置してほしい」との変更の依頼が来た。
 
すでに工事は始まっていた。急ピッチで設計変更をしながら、国場さんはエントランス上部のパーゴラ=下写真=やレストランの変更も提案した。「幸房さんは『公共建築には皆が集えるパーゴラ空間が必要だ』と、細部までこだわっていた。当初パーゴラは、現場打ちコンクリートで造る予定だったが施工が難しいなどの課題があった。そこでPC(工場で製造したコンクリートパーツ)にし、デザインも細めに変更した」。それが水族館の玄関口である「海んちゅゲート」だ。空と海へ視線が抜けるそこで、沖縄の自然美を味わう。「エントランスは、その先への期待を膨らませる場所でなくてはならない」との国場さんの言葉通りの空間となった。

かつてないものを造るには、「勇気と責任が必要。幸房さんと仕事をした皆がそれを教えてもらった」と安谷さんは話した。 


伊江島まで見える「海んちゅゲート」は国場さんお気に入りの場所


2001年、美ら海水族館工事現場で。左から設計を手掛けた国建の国場幸房さん、安谷健さん、新城安雄さん(当時社長)、福田俊次さん。福田さんは国場さんの右腕的存在で、国場さんの苦手な会議対応や関係機関との調整などを一手に引き受け、プロジェクトチームをバックアップした

※写真はすべて国建提供



<建築士の日特集>
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編集・取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1747号・2019年6月28日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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