都市を歩いて 居場所探し|ロンドン住まい探訪[3]|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

建築

2019年6月21日更新

都市を歩いて 居場所探し|ロンドン住まい探訪[3]

文・比嘉俊一

イーストロンドンでの大学時代③
都市を歩く―。設計課題に悩んで悶々(もんもん)とした週の日曜は気晴らしに朝から街を歩いた。ロンドンの街はタウンハウス(都市型住居)が連なる街並み、点在する大小の庭園広場、テムズ川沿いの風景など、実に多くの見どころがある。何よりふらっと寄りたくなる自分の居場所を探すのは私の都市を歩く醍醐味(だいごみ)の一つで、その時の気分や状況、季節によってお気に入りの場があった。

プロジェクトが生む街の魅力
19世紀に造られた巨大な発電所を国立の近現代美術館にリノベーションした「テート・モダン」=下写真1=は私の居場所の一つだったように思う。国際設計コンペで設計者が選定されたこの美術館は、建物の外観は一部を除いてほぼ全面的に保存、内部は発電機のあったホールが大エントランスホール兼展示スペースとして計画されている=下写真2・4。その空間が何より「格好いい」のである。美術館の枠を超えて、多くの人が行き交い、集まれる場となっているように感じる。また大英博物館と同じく入場無料(別階の企画展は有料)なのは学生には特にうれしいところだった。










また同年に開通した「ミレニアムブリッジ」は、テムズ川を挟んでテート・モダンの対岸にあるセント・ポール大聖堂とを同一軸線上につなぐ=下写真3。橋を渡って美術館にアクセスするという、ロンドンならではの楽しい経験だ。




一方ロンドンで、「London's ugliest architecture(ロンドンで最も醜い建築物)」とメディアで取り上げられる建物には近現代の建築物も多く、都市開発と景観形成の問題については設計に携わる立場として考えさせられるが、いずれにしても優秀な設計者・技術者が携わったこのようなプロジェクトは明らかに街の魅力を創出しており、学生だった私に改めてこの仕事の素晴らしさを感じさせてくれた。独立して数年、改めて当時の気持ちを振り返られたことに感謝したい。






5・6テムズ川沿いは、ビッグ・ベン、セント・ポール大聖堂、ミレニアムブリッジ、テート・モダンなどロンドンのシンボルである建築物が点在しており、川沿いを歩く気持ちよさもあって定番ルートの一つ。散策、ランニングする人の姿もよく見られた
 

 

ひが・しゅんいち/1980年生まれ。読谷村出身。琉球大学工学部卒業後、2005年に渡英。ロンドンでの大学、設計事務所勤務を経て、16年に建築設計事務所アトリエセグエを設立。住み継がれる建築を目指す

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1746号・2019年6月21日紙面から掲載

建築

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2122

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る