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2019年5月3日更新

スキル生かし組織を導く|みんなの防災計画[2]

文・長堂政美
大規模災害直後は公助による災害防除活動は期待できず、住民のみで対応しなければならない。その際に状況を判断し、住民の行動を指揮するスキルを持つのが「防災リーダー」。重要性や育成方法などについて紹介する。

■防災リーダー育成の重要性

障がい者・高齢者も資格あり
自主防災組織の要

防災リーダーは、災害発生のおそれがあるとき、または発生時に、地域住民がどのように行動すべきかを的確に判断し、指導・指揮できる人のことを指します。

平常時であっても、消防・警察などの公助はすぐに駆け付けることはできません。仮に大規模災害が発生した場合、消防施設が損壊し、隊員宅も被災、隊員の非常招集にも時間を要す他、出動したとしても渋滞したり、道路が地震動で波打ったりして消防車・救急車が走行できないなど、最悪の状況に陥ることが予測されます。

ここで最も期待されるのが、隣・近所の住民同士でつくる自主防災組織。その組織がうまく機能するよう導くのが防災リーダーです。そのため、組織内で防災リーダーの育成をしていくことが重要になってきます。


沖縄市在住の消防団員、会社員、特別支援学校の職員など、防災リーダーやこれから目指す人が集まり情報交換する様子

リーダー育成の循環
■どんな人がなるのか?
防災リーダーは、消防団、消防や警察のOB、防災士、地域住民、会社員、団体職員など、誰でもなることができます。災害弱者に位置づけられる障がい者でもです。理由は、防災が健常者だけのためではなく、指導は障がい者でもできるからです。

実際、これまで私が指導してきた各地域にも、素晴らしい素質をもった方がいることを実感しています。

県外の例ですが、愛知県東海市の「船島防災まちづくり研究会」という自主防災組織は平均年齢が70代。高齢者が果たして災害時に何ができるのかと思うかもしれません。しかし、東海地震に備え、自助・共助の方法を住民に指導しています。そのための学びが生きがいにもなっているそうです。

■人材探しの方法は?
自発的に手を挙げる人を待っても、なかなか出てきません。そこで、防災訓練を開き、他地域で活動する防災リーダーなどを講師に招きましょう。

スキルを持った人の話を聞き、指導を体験することで、地域における必要性を感じて「自分もなりたい」という人が現れ、次なる防災リーダーへとつながると考えるからです。

どうやって育てる?
最初は簡単なゲームから入っていき、次第に自主防災組織の活動方針の決定のほか、住民でもできる範囲での対策本部の設置方法や資器材の運用方法、救急救命、救出救助、初期消火、避難誘導、避難所開設などを具体的に学んでいきます。

そうして学んだことを、地域はもちろん、近隣の施設や会社などさまざまな場所でほかの人に伝えることでさらなるスキルアップを図ります。例えば、講演や、防災訓練の方法の指導、小学校で次代を担う子どもたちへの防災教育をしたり、保育園で親子防災教室の方法の指導なども行います。

このような活動を重ねることで防災スキルだけでなく、指導力もアップします。そうすると、このリーダーが属する地域・会社・団体の中でも次のリーダーが育ち、防災力・減災力の強い組織となります。

リーダーから次のリーダーへといろいろな分野でスキルを伝えながら、防災力のある自治会、市町村、県へと発展させていくことが目標です。助けてほしい人が多い地域ではなく、助けてあげられる人の多い地域づくりを目指しましょう。


障がい者施設の職員に、担架を使った応急搬送の方法を指導する防災リーダーの男性(左端)


沖縄市東桃原の自主防災組織の役員が防災リーダーとして、避難所運営ゲームを住民に指導する様子。指導を受けた住民は、このゲームを指導する次のリーダーとなる




ながどう・まさみ/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長 098-923-4442
 

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1739号・2019年5月3日紙面から掲載

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