防災
2019年3月1日更新
知恵を備える② 生活用水に湧き水を活用
非常時の持ち出し用品の中に飲料水は備蓄していても、生活用水まで備えるのは難しい。そこで、湧き水fun倶楽部のぐしともこさんが提言するのが、湧き水の活用。「災害時、地域の湧き水が生活用水として大きく役立つ」と話す。
生活用水に湧き水を活用
知恵を備える②災害時、生活用水の確保も重要。住んでいる地域の「湧き水」を知っておくと心強いですよ!
▼湧き水fnu倶楽部代表・ぐしともこさん
浦添市の仲間樋川。地域の人たちが定期的に清掃をしているそうで、とてもきれい。「普段から水を汚さないよう心掛け、きれいな状態を保つことも大切」とぐしさん
阪神・淡路大震災の後、西宮市が市民に「震災後、困ったこと」を調査したところ、1位は「生活用水の確保」だった。トイレや洗面、洗濯の水が確保できなかったことが最も苦しかったようだ。だが、大量の生活用水を備蓄するのは難しい。
県内の湧き水を調査するぐしともこさんは「生活用水に地域の湧き水を活用する」ことを提言する。「湧き水は昔から生活用水として使われてきました。水道の普及で使うことはほとんど無くなりましたが、災害時、地域に水があることは心強い」と話す。
大事なのは「自分の住む地域のどこに湧き水や井戸、川などの水場があるか知っておくこと」。
環境省が2016年度に実施した調査によると、県内には1236もの湧き水がある。「集落ができるためには水場が必須。自分の住む地域には無いと思っていても、意外なところにあるかもしれません」とぐしさん。情報を持っているのは、地域に長く住んでいるお年寄り。「自治会活動に参加して聞いてみたり、住まい周辺を散策するのもいいと思います」
衛生を保つ水として使用
ぐしさんに浦添市の仲間樋川に連れて行ってもらった。キレイな水がこんこんと湧き出ている。昔は飲用されており、「戦争時にはこの水に救われた」と手を合わせに来る人もいるのだそう。現在は「飲用するのに適しているかは判断できません。細かく定められている水道水質基準をクリアする必要があるからです。ただし、飲み水に適していなくても衛生を保つ水としては十分に使えます」とぐしさん。
では飲めないのか、というと「水をろ過するグッズなどで飲用可能な場合もありますが、非常事態においては飲むリスクと飲まないリスクを天秤にかけ、個々人で判断してほしい」と話した。
無駄なく水を使う知恵
仲間樋川には、貴重な水を有効に使う知恵が隠されている。それが地面に刻まれている十字=下写真。「ここから先(湧き水側)で洗濯をするのは禁止」という決まりを表す。湧き出た水は飲用水→洗濯用水→馬や農具を洗う水→農業用水の順に無駄なく利用された。その考えは災害時にも生かせる。洗顔や手洗いに使った水をトイレに使うなど、使い回す知恵もマネしたい。
防災マップに湧き水情報
「2019年浦添市防災マップ」には避難所の情報に加えて、市内16カ所の湧き水も記されている=下写真。ぐしさんは「全国でも珍しいと思う。災害時に水場の情報は欠かせない。多くの市町村でも実践してほしい」と呼びかけた。
知恵を備える①
知恵を備える③
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1730号・2019年3月1日紙面から掲載