防災
2019年1月11日更新
健常者と障がい者が共助で県内初 沖縄市東桃原で避難訓練|気になるコト調べます!㊽
沖縄市の東海岸に近い東桃原地域で、地域の自主防災会は2018年12月16日、防災訓練を行った。「訓練に障がい者も一緒に参加するのは県内でも初の試み」と、NPO防災サポート沖縄の長堂政美さんは話す。
11団体+地域住民ら80人強が参加
同日午前10時。「自治会だけでやると30人弱なのに」と、東桃原自主防災会の石原一昭会長は驚きを隠せずにいた。この日の防災訓練に参加したのは80人強。運営を支援する公共機関や地元企業、NPOなど11団体と地域住民が集まった。その中には、車いすに乗る人、白杖(はくじょう)を持つ人、手話で会話をする人なども参加していて、「避難訓練に参加するのは初めて」とみな口をそろえた。企画した長堂さんは「災害弱者がこれだけ参加する防災訓練は県内で初の試みだろう。障がい者が実際に参加して、健常者がどのように避難支援できるかをモデル化するための訓練になれば」と語った。
海抜約3メートルの東桃原地域には、津波などが起こった際に高台へ避難するための緊急避難経路が設けられたが、高低差約22メートルの急斜面を階段とスロープで上がらなければならない。障がい者や高齢者をはじめとする避難要配慮者が自らの力で避難するのは困難だ。車いすを使う山入端さん夫妻は、「介助する側とされる側の意思疎通が大切だと感じた」と体験を語った。全盲だという金城さんは、「どこへ向かっているのか、足元の様子などを話しながら誘導してもらえて助かった。階段の幅なども上りやすい」と話した。今回は手話通訳者の同行があったが、筆談などで聴覚障がい者に状況を知らせるなどの配慮も必要だろう。
訓練後の自主防災会の反省会で、役員から「自治会員が指揮を取る必要性を改めて感じた」との声も。体験して気付く点が多く、毎年実施して態勢を整えていく考えを示した。
下肢障がい(車いす)×共助
スロープでは、後ろから押す人と、タオルを車いすの手すりなどに掛けて前から引く人に分かれた
体の感覚がない場合、車いすからの転落を防止するため、ひもやタオルなどで車いすと体とを固定。「持ち上げます」と声かけして4人が車いすを持ち上げ、後ろから1人が支える。「交代要員も必要だね」と介助者ら
体の感覚があるから、乗ったままだと自分でバランスを取ろうとして車いすから落ちてしまうかもしれないと感じた山入端さん。「介助してくれる方々に『肩を担いでほしい』と頼んだら、試行錯誤しながらも助けてくれた」
視覚障がい×共助
介助者が「ここから階段が10段ほどありますよ、手すりはこっち」と声かけ。階段が終わりにさしかかると「残り3段です。3、2、1」と足元の様子を案内した。側溝の穴に白杖がはまってしまうこともあったという
けが人×共助
木棒2本とTシャツ3枚で簡易担架に。棒の端を持った状態で、着ているTシャツを脱がせて通すとスムーズにできる
平らな道では担架に乗った人の足を進行方向に向けるが、階段や坂道では頭を上り方向に向ける
緊急避難経路
18年7月に完成した、海抜約12メートル地点から約35メートル地点までを階段とスロープでつなぐ緊急避難経路。今回はこの避難経路を使った避難路確認のほか、取水訓練、給食訓練も実施した
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1723号・2019年1月11日紙面から掲載