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2018年12月28日更新
どうなる? 建築物省エネ法|「施主への説明」義務化の方向
[知っておきたい〜消費税増税と建築物省エネ法〜]一定規模以上の建築物に対し、国が定める省エネ基準を満たすことで省エネ性能の向上を図ることを目的とする「建築物省エネ法」。日射熱取得率が高い鉄筋コンクリート造住宅が主流の沖縄では、冷房効率を高める断熱材や断熱サッシなどにかかる建築費用・高効率設備の導入費用に加え、開口部を小さくするなどの仕様変更が必要となる可能性があることから、住宅への省エネ基準適合義務化に向けた国の動きが注視されてきた。国は12月3日に審議した「今後の住宅・建築物の省エネルギー対策のあり方について(第二次報告案)」で、300㎡以下の住宅は「建築主に省エネ基準への適合可否等の説明を義務付ける新制度創設を目指す」との方向性を示した。その背景や、県内建築団体、県の意向を、県建築指導課の伊良部孝一班長に聞いた。
沖縄は反対が5割強
3日に示されたのは、延べ床面積2千㎡以上の住宅以外の建築物が対象だった省エネ基準への適合義務化を、住宅を除く300㎡以上の中規模建築物にまで広げるよう検討するというものだ。300㎡以上の住宅については、従来の設計計画の届け出義務に加え、建築主に基準適合への理解を求める方向。300㎡以下の住宅や建物は、省エネ基準に適合しているか否か、建築士から施主への説明を義務付ける新制度創設を目指す。将来の義務化を見据え、まずは施主に省エネ性能への理解を求める意向だ。
背景にあるのは、地域別の住宅の省エネ性能や設計者の意識を把握するため、今春、国土交通省が行った「300㎡未満の住宅の省エネ設計に関する調査」。全国15市町村の区域で、814業者、4377物件と9割の回答を得た。
省エネ基準の適合義務化への賛否は、反対が34%、賛成20%弱=グラフ1。地域別では南に行くほど反対が多く=グラフ2、沖縄は5割強が反対で賛成は1割以下だった。反対の理由で最も多かったのは「建築コストの上昇について建築主の理解が得られない」で74.4%=グラフ3。空調を使いたい、使わずに暮らしたいなどの住まい方は個人の価値観で「画一的規制になじまない」、「地域に根差した設計の多様性が損なわれる」が各61.5%だった。
県民の声求める
全ての新築建築物への省エネ基準適合義務化への動きを受け、「全国の関係団体から慎重な対応を求める声が挙がった」と伊良部班長。県も、建築3団体からなる「沖縄の気候風土適応住宅推進連絡会議」と協議。昨年12月、沖縄独自の基準を作る意向を国に示したところ、「制度の見直しを予定。そこに沖縄の声を反映させてはどうかと提案を受けた」。ことし3月末には「沖縄は断熱より遮熱が肝心だが、花ブロックや緑化といった日射対策が評価されていない。評価が難しければ、エネルギー使用量の基準のみにしてほしい」と見直しを要望。12月3日の審議に至る。
県や連絡会議では「基準そのものが流動的な段階で、建築士に説明義務を負わせるのは疑問」とし、「沖縄の気候風土に根差した建築形態への配慮を引き続き働きかける」考えだ。国は今回示した方向性に対し、広く国民の声を求めるパブリックコメントを2019年1月5日まで実施中=下囲み。伊良部班長は「義務化の動きは、温室効果ガス排出削減に向けた建築分野の取り組みの遅れに端を発している。まずは住宅の省エネ化に関心を持ち、県民に意見を寄せてほしい」と呼びかけた。