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2025年9月19日更新

[イランでの買い付け旅]初めての出逢い大切に 寄り道しつつカスピ海へ|ラグの世界⑱

イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅記。イラン北部を巡る平井さんは道中、魚のバザールで有名なラシュトの町などに寄り道しながらカスピ海へ。大らかな湖に癒やされ、さらに北へ進みます。

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エピソード⑱ イランでの買い付け旅


世界最大の湖、カスピ海に昇る朝日
 
イラン北部のガズヴィーンから山を越えて今回の北部の旅の目的の一つ、カスピ海を目指す。

山道を車で走っていると、黒いつぶつぶが山盛りになり、赤い文字で「シャートゥートゥ」と書いてあるのが見えた。おどろおどろしくて少し怖かったが、近くで見るとキイチゴのような果実だった。日本名では「クロミグワ」と呼ばれるクワ科の植物の実で、ペルシャ語でシャーは王様、トゥートゥは桑なので「桑の王様」とかっこいい名前で呼ばれているよう。イランではナッツやドライフルーツと一緒に桑の実を食べるが、こんなに大きくて赤いものは初めて出合った。


魚跳ねるバザール

カスピ海に近いラシュトの町に着いた。ここにラグはないが、魚のバザールが有名と聞き休憩がてら見に行くことに。魚のにおいがしてきたと思ったら、右も左も魚がぴょんぴょん飛び跳ねる! 生きた魚が苦手な私はドキドキしながらバザールを見て歩くが、ぶつかってきそうなほど魚が道の方まで並べられていたのはさすがに驚いた。鮮魚のほかにもスモークされた魚やラグの糸の染料にも使われる茜(あかね)(ロンナス)を使って漬けた不思議なショッキングピンクの魚など、知らない食文化をのぞくことができた。

ラシュトの町は魚のバザールで有名。活きの良過ぎる鮮魚が道にまで並ぶ


鮮やかな手編みの靴下

夜にはカスピ海沿いの町へ着き、翌朝に昇る朝日とともに初めてカスピ海を見ることができた。日本の国土面積と同じくらいある世界最大の湖だけあり、向こう岸が全く見えない。空との境が曖昧で静穏なカスピ海は、ここへバカンスへ来る人たちを癒やす穏やかさがあった。

カスピ海をほんの少しの間満喫し、さらに北へ。イラン北部の今まで見たことのない緑の奥行きの深さや豊かさに感動が止まらないドライブだった。

途中、寄り道したハルハールの町のバザールで面白いお店を見つけた。トゲトゲの強そうな首輪や、ラクダや羊の毛で織られた防寒用のベストやズボン、ロバの鞍(くら)、羊のベルなど羊飼いや遊牧民に欠かせない道具がそろうお店だ。のちに、ここで暖かいベストを買っておけばよかったと後悔するが、この時の私は知るよしもない。

一角にはカラフルな色糸と手編みの靴下がたくさん置いてある。カスピ海近くに手編みの靴下をつくる村があることは聞いていたが、どうやらこの町の近くらしい。ラグの糸とは少し違う、カラフルな毛糸は鮮やか。編み込まれる紋様にも意味があるらしい。私が手に持っているのはくるぶしほどまでの長さで、足の甲まで覆う木靴のような形。大きさや柄は一つずつ違い、手しごとの温かみと1点モノの面白さはラグに通ずるものがある。お店中の靴下を見てじっくり選び、ベテラン店主と、選ぶのを手伝ってくれた男の子と一緒に写真を撮る。


ハルハールの町で、羊飼いや遊牧民に欠かせない道具を扱う店を見つけた。手編みの靴下もあり、店の男の子と一緒に選んだ

旅の序盤は初めて行く地域ばかりなので、寄り道しながらその時の出逢(あ)いを大切に、新しい景色をたくさん見たい。ずっと行きたかったラグの町、アルダビールまであと少し。




執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1
電話=098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2072号・2025年9月19日紙面から掲載

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