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2024年5月17日更新

古都イスファハン 心癒やされる織り|ラグの世界④

イランやトルコなどの中東で手織りされるラグを取り扱う那覇市西の「Layout(レイアウト)」のバイヤー、平井香さんによるラグ買い付け旅。今回はイランの古都・イスファハンへ。繊細なペルシャラグの産地として有名な都市だが、ヴィンテージラグが集まるエリアへ出掛けた。

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エピソード④ イランでの買い付け旅

「イスファハン」はイランでも歴史ある町で、モスクや宮殿、大きな美しい橋があることから、京都に例えられる。外国からのツアーでは必ず立ち寄る町で、イラン国内からの観光客も多い。一番有名なのは世界遺産のイマーム広場で、イランの人々の憩いの場でもある。

夏場の日中は40度を超え、とにかく暑い。日が沈んで涼しくなってくると、続々と人が集まり、大人も子どもも夜な夜なピクニックをする。日本では見かけない不思議な光景だ。

世界遺産でサッカーをする子どもを横目に広場をぐるりと囲むバザールを歩いてみた。暑い季節はオフシーズンで、いつもより静かでゆったりできる。ラグと並び、この町を代表する手工芸品「ガラムカール(ペルシャ更紗(さらさ))」の職人技を見せてもらえた。木綿布に木彫りのスタンプで色を重ねていく。黙々と絵付けをする姿はまさに職人。私もやってみるが、力加減が分からなくてうまくスタンプできない。職人の経験と体に刻み込まれた技術は素晴らしく、やっぱり手しごとは魅力的だ。


イスファハンのヴィンテージラグが集まるビル。小さな倉庫がいくつも並ぶ


ヴィンテージがずらり

イスファハンは繊細な織りのペルシャンラグの産地だが、今回はまだ足を踏み入れたことのないヴィンテージラグ(織られてからある程度年代のたったラグ)の集まるエリアを開拓する。

広場から少し離れると、華やかな観光地とは一変し、そこで働く人たちの日常がある。ラグの倉庫が集まる場所の雰囲気は独特で、行き交う人は急に男性ばかりになる。仕事を始める前、早朝のシンとした倉庫街。ラグに囲まれたこの空気感が大好きだ。湯を沸かすサモワールから湯気が上がり、チャイを淹(い)れて、そろそろ始めるかという感じで少しずつ人が増えてくる。

ラグの店の数はとても多く、1週間でも回りきれないと聞いていたが、本当にどこまでもお店が続く。私たちが求めるラグがありそうな場所を聞いてまわり、ヴィンテージラグが集まる建物にたどり着いた。モスクのような入り口から入ると、かつては華やかであったであろうタイルや装飾がうっすらと残る古い建物に小さなラグの倉庫が何十もひしめき合っていた。どんなラグが見つかるのか、もうワクワクする!

 
イスファハンで出逢ったヴィンテージのギャッベ。毛足が長くゆったりと織られている

ラグと並ぶイランの名産品「ガラムカール(ペルシャ更紗)」の職人。木彫りのスタンプで色を重ねていく
 
世界遺産のイマーム広場でサッカーをする子ども達


買い付けは一期一会

小さく区切られた倉庫を端から目を凝らして見ていく。ここではヴィンテージのギャッベ(シラーズ周辺に住むカシュガイ族などが織るラグ。ざっくりと織られ毛足が長いのが特徴)とのいい出逢(あ)いがあった。現地の人たちが「ソンナティ」と呼ぶそれは、新しいギャッベと比べて織りがさらにゆったりとしていて、織り手が思うままに織ったデザインに心が癒やされる。シラーズでもあまりセレクトできなかったラグとここで出逢えた。

どこでどんなラグ、どんな人に出逢えるかは行ってみないとわからないのが、買い付けの旅の醍醐味(だいごみ)なのかもしれない。こんなラグを見つけたいと思って行っても大概は見つからないもので、私たちがラグと出逢うのも、お客さまがラグと出逢うのも一期一会。お気に入りのラグに出逢えることは本当に奇跡の連続なのかもしれない。



執筆者/ひらい・かおり
ラグ専門店Layout バイヤー
那覇市西2-2-1 電話/098・975・9798
https://shop.layout.casa

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2002号・2024年05月17日紙面から掲載

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