2023年11月24日更新
[沖縄]専門技術者育てる工業高校③ 工業化学・グラフィックアーツ・ITシステム|独自の魅力持つ3学科
ものづくりの知識と技術を磨ける工業高校には、さまざまな学科がある。今回は、機械や部品の設計・加工・制御などを学ぶ「機械系」と、電力からプログラミングまで扱う「電気・電子系」の学科について紹介。そのほか独自の魅力を持つ7学科についても取り上げる。
化学工学
環境分析
化学製品の基礎を学ぶ
服やペットボトル、インクなど―。身の回りにあふれる化学製品の開発を目指して、基礎を学んでいるのが沖縄工業の工業化学科だ。同科の知念豊孝先生は「この科があるのは県内で1校だけ。実際の生産現場を念頭に、化学式はもちろん、それにかかるコストや材料、生産する際の熱、パイプ内の摩擦といったことも考えながら勉強する」と話す。
授業では蛍光塗料を作るなど多くの実験を行うほか、せっけん工場の縮小版でせっけんの製作や、性能を良くするための研究もする。「工業化学はさまざまな分野に関わる。例えば建築なら、鉄筋のさび止めや早く乾くセメント、シックハウス症候群を抑える建材・塗料などの開発にもつながる」。
川の水や大気中に含まれる物質の分析方法や、特許に関する知識も身に付ける。生徒がアイデアを出し、実際に登録された特許や意匠もあるという。
卒業後は、化学系の会社で分析・開発をしたり、化学工場設備の管理、公害防止に取り組む仕事などを目指す。
知念先生は「化学や実験が好き、好奇心が強い人には向いている」と話した。
工業化学科で目指せる資格
◆毒物・劇物取扱責任者
◆危険物取扱者(甲・乙種)
◆公害防止管理者(水質1種~4種)◆高圧ガス(乙種化学、2種・3種冷凍)
◆ISO14001内部監査員
◆2級ボイラー技士
◆消防設備士(甲・乙種)
◆第2種電気工事士 など
グラフィックアーツ(那覇工業)
デジタル作画
紙積み
印刷もCGも
グラフィックアーツ(GA)科がある高校は全国でも6校。そのうちの1校が那覇工業だ。同科では印刷全般の知識や技能に加えて、チラシやロゴなどグラフィックデザイン、写真やCG、映像といったマルチメディアについても学べる。写真スタジオやデジタル作画の機器、3Dプリンターなど設備が充実した教育環境が整っている。
1年次にはDTP、印刷機器、シルクスクリーン印刷、写真などGAの基礎を学び、2年次の実習ではポスター制作をする。生徒が企画から撮影、イラスト作成をし、製本。印刷の全工程を手がける。3年次には進路を意識して、興味のある分野を選択し、より専門的な技術力を高める。同科の宮良勉先生は「入学時から進路のビジョンを持った生徒も多い。県内外の印刷やデザイン会社だけではなく、芸術大学への進学も目立つ」と話した。
目指せる資格
◆グラフィックデザイン検定(1~3級)
◆肖像写真技能検定(2級・3級)
◆色彩検定(2級・3級)
◆レタリング検定技能(2級・3級)◆表計算検定(2級・3級)など
ITシステム(美来工科)
ネットワーク
プログラミング
情報専門の学科
美来工科には、情報分野に特化した「ITシステム科」がある。
ネットワークシステムを構築する「ネットワーク」と、ソフトウエアなどを開発する「プログラミング」、情報の維持・管理・運用を行う「データベース」を3本柱に授業を行う。
「特にネットワークには力を入れていて県内で唯一、シスコ ネットワーキングアカデミーの認定を受けている。これはシスコシステムズが世界180カ国以上に提供しているITエンジニアを育成するためのプログラムです」と同科の仲程崇先生は話す。
将来はネットワークエンジニアやプログラマーとしての就職を目指す。
同校には「コンピューターデザイン科」もあり、動画、ウェブなどを分かりやすく見せるためのデザインや情報コンテンツのつくり方が学べる。
目指せる資格の一例
◆シスコ技術者認定試験(CCNA)
◆情報処理技術者試験(ITパスポート、基本情報技術者、情報セキュリティマネジメント)
◆情報処理技能検定(表計算、データベース、ホームページ作成)
◆日本語ワープロ検定など
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取材/東江菜穂、出嶋佳祐、市森知
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1977号・2023年11月24日紙面から掲載