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2023年5月12日更新

漂着軽石の舗装材料で問題解決|知財 この人あの会社⑥

2021年8月に発生した小笠原諸島の海底火山噴火に由来する軽石が沖縄周辺に押し寄せ、船舶の航行、漁業、観光などにさまざま被害が生じた。現在、影響は限定的になっているが、その処理も課題だ。今回紹介するのは、この漂着軽石を透水性のある素材に加工し、雑草抑制に役立てようというアイデアだ。

石雑草抑制工法を開発した東門榮信さんと軽石雑草抑制材のブロック。サンプルのブロックは25センチ四方で重さは約2・5キログラムと軽量
石雑草抑制工法を開発した東門榮信さんと軽石雑草抑制材のブロック。サンプルのブロックは25センチ四方で重さは約2・5キログラムと軽量
 
 軽石雑草抑制工法/(有)東洋工設 東門榮信さん 

きっかけは漁船の故障対応から

うるま市出身の東門榮信さん(70歳)はプラント(工場設備や生産設備一式)の設計、施工が専門。県外で造船等の業界に身を置いた経験もあり、機械には強い。軽石の漂着が始まった際に漁業者から依頼され、軽石を吸い込んだエンジンの不具合を確認し、修理にあたった。その後、軽石の漂着が本格化すると、軽石の処理や活用が重要だと思い始めた。現在、漂着軽石は所定の場所に仮にストックされている。海岸や空き地などに盛土されているところもあり、観光や海水浴の妨げになる可能性がある。

1年前に軽石雑草抑制工法を施した歩道(行政機関の承諾のもと施工)。今も雑草は生えていない
1年前に軽石雑草抑制工法を施した歩道(行政機関の承諾のもと施工)。今も雑草は生えていない


表面は軽石の凹凸があり、断面は目が詰まっているが透水性はあり、水をまくとあっという間に吸水する


耐久性と雑草抑制効果を両立

東門さんは、仕事で配管工事なども手掛け、道路の掘削や埋め戻しなども行う。東門さんは、「軽石は歩道や敷地の植栽の雑草抑制に使えるのではないか」と考えた。

軽石は、細かな穴をたくさん有しており多孔質。柔らかい材質だが、他の材料と混合すれば使えそうだと思い、セメントなど他の材料と組み合わせて実験を重ねた。一定期間置いて耐久性などを確認。混合によっては容易に割れてしまったり、水が通らなかったりしたが、混合の手順と配合比率により、軽石の特徴である透水性を備え、水面に浮くほどの軽さを持った「軽石雑草抑制材料」を完成させた。東門さんの実験によると、一定の耐久性があり、人が上を歩いても割れたりすることはなく、透水性があるので、雑草以外の植物の成長を妨げることはない。昨年、試験的に同製品を流し込んだ場所では、通常年3回ほど草刈りが必要なところ、この1年間雑草が出ていない。知財総合支援窓口にも相談いただき、特許の出願を済ませた。


3年間で10万㎥の軽石使い切れる

現在、東門さんは近隣市町などに軽石雑草抑制材料を紹介し、街路樹の根元周りの雑草抑制工事に使用してもらうべく打診している。もし県内の自治体が、東門さんの工法で積極的に雑草抑制工事を行えば、現在10万立方メートルほど保管されている軽石を3年ほどで活用しきれると考えている。

雑草抑制工事の普及と合わせて、東門さんはこの材料を成型した「軽石雑草抑制ブロック」として二次製品にし、一般家庭でも庭や駐車場に敷き詰めて役立てようと計画している。東門さんは「廃棄物(軽石)の利用と雑草抑制を同時に実現できるメリットがある。さらに行政が頻繁に行う雑草作業の回数を削減できる。その予算を他の用途に有効に役立ててほしい」と語った。


本工法に関する問い合わせは、(有)東洋工設(電話=098・978・7414)まで。




[執筆者]
宮川準(みやかわじゅん)
1967年、東京都出身。大学卒業後、都内で就職。2012年、沖縄に移住し沖縄県発明協会に入職、以来INPIT沖縄県知財総合支援窓口を担当。

 
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 うるま外部窓口 
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名護市産業支援センター
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第1949号・2023年5月12日紙面から掲載

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