[集まれ!スゴ技学生]拡大版|タイムス住宅新聞社ウェブマガジン

沖縄の住宅建築情報と建築に関わる企業様をご紹介

タイムス住宅新聞ウェブマガジン

スペシャルコンテンツ

地域情報(街・人・文化)

2022年2月4日更新

[集まれ!スゴ技学生]拡大版

建築業界は、プランニング、図面作成、施工や現場管理など業務が多岐にわたり、そこで必要になる技能もさまざま。今回は毎月第2週の連載「集まれ! スゴ技学生」の拡大版として、難関試験合格や技術大会入賞を果たし、未来の建築業界を担うであろう学生たちを紹介する。

建築技術磨き羽ばたく学生

 

①製図|操作スキルを習得|2級建築CAD検定に合格

大城拓未さん(左)、松田理希さん(名護商工高校電建システム科3年)

建物の設計図作成ソフトの技能が試されるCAD検定。名護商工高校3年の大城拓未さんと松田理希さんは、同校から初めて2級に合格した。

検定では簡易的に書かれた一般住宅の図面を読み解き、1階平面詳細図と立面図(建物正面から見た図)を書き起こす。平面図から立体を読み取る力、ドアや窓サッシなどの細かな書き込みなどが求められる。「3級は窓周りなどの部分的な作成だけど、2級は住宅全体なのでハードルが一気にあがった」と松田さん。「屋根伏せ図(建物を真上から見た図)から、屋根形状を読み取るのも難しい点だと思う。過去問では初めて見るような屋根の形もあった」と大城さんは続ける。

共に2度目の挑戦での合格。前回の検定では、先生の指導を受けながら過去問で特訓を重ねたが、指定範囲外に図面を書いたり、不要な線を消し忘れたりするなどの単純ミスが目立ったという。そこで今回は操作の時短も図り、「制限時間5時間のうち1~2時間を確認時間に充てられ、完璧な出来だった」と満面の笑みを浮かべた。

CADに加え、2級建築施工管理技士第一次検定も合格した2人。「建築士になるためにはいろいろな勉強と時間が必要」と、今後は進学を決めている。大城さんは「自分のアイデアをアピールできる大規模建築に携わりたい」、松田さんは「たくさんの住宅を設計したい」と夢を語った。


 

②構造|伝統工法を改良|全国壁-1グランプリ3賞

久高将隆さん、兼島晃輝さん、大城琉碧さん(沖縄職業能力開発大学校住居環境科2年)

去年10月に埼玉県で開かれた、木造の耐力壁の強さや総合的な技術を競う「壁-1グランプリ」には、大学や職業能力開発大学校を中心に全国から10組が参加。沖縄職業能力開発大学校2年の兼島晃輝さん、大城琉碧さん、久高将隆さんが作成した「うちなーの壁 改」が、環境部門賞、デザイン部門賞、審査員賞の3賞を獲得した。

作品の特徴は、くぎなどの金物を一切使わず、沖縄の伝統的な貫木屋(ヌチジャー)の工法を加工しやすく改良した点。「木だけでできており解体時間が早かったことが環境部門賞につながったと思う」と大城さん。続けて久高さんは、「伝統工法の活用も審査員賞として評価されてうれしい」と話す。

耐力壁のデザインや継ぎ手の細かな手作業を担当した兼島さん。壁にかかる力を分散させるために壁中央部に扇形のデザインを施した=下写真。「先輩たちが用いていた円形のデザインを応用して、圧縮により耐えられるようにした」とデザインと構造のポイントを話す。実際、強度を競うトーナメント戦では1回戦で敗退したものの、デザイン部門賞につながった。


「うちなーの壁 改」の模型


横と縦の部材を接合させる「蟻継ぎ」。階段のように2段にすることで加工や組みやすさを改善

コロナ禍の休校などで作製期間は約3カ月。「組み立ての練習時間が取れず、大会では他校よりも時間がかかった」と反省する3人。「悔しい部分もあるが、改善点も踏まえて後輩たちに託したい」と話した。

来年度、兼島さんと大城さんは建築会社へ就職、久高さんは九州の能力開発大学校へ進学する。「手を動かす作業が好き」という3人が、建築現場で活躍する日もそう遠くないだろう。

 

③施工|現場管理の第一歩|2級建築施工管理技士第一次検定に合格

金城海飛さん(左)、徳嶺青空さん(沖縄工業高校建築科2年)

沖縄工業高校2年の金城海飛さんと徳嶺青空さんは、2021年7月、国家試験「2級建築施工管理技士」の第一次検定に合格。工事の工程、安全性、品質などを管理する現場に欠かせない技術者になるための第一歩で、「建築を学ぶ高校生にとって最もハードルの高い試験に合格できた」と、2人は胸を張る。

検定の出題は3年生までの授業内容に相当。建物の構造、工法、材の品質、法律や工事現場の安全対策など、幅広い知識が求められるため、学校の特別講座に加えて自主学習も必要になる。金城さんは「今後の授業も理解しやすくなるように」と、コツコツ勉強。1年生の2学期から検定に向けた対策を始め、500ページの問題集を毎日50ページずつ解いた。「休み時間も使い、繰り返し解いてインプットした」

一方、徳嶺さんは「問題集を本格的に解き始めたのは検定の3週間前」。だが、危険物取り扱いや電気工事といったこれまでの資格試験合格の経験から、「これまで培った知識を応用できた。特に法律分野の問題で生かすことができた」と話す。

22年度も資格試験に挑むという2人。金城さんは、「多数の難関試験に合格すると与えられるジュニアマイスター認定を目指す。短い高校生活の中で頭一つ抜きんでて、建築現場で活躍したい」と意気込む。また、徳嶺さんは「今回の合格の勢いにのって簿記にチャレンジ。建築に限らず幅広い職業を見据えたい」と目を輝かせた。



 

④計画|発想まとめる力に|全国設計競技で2等受賞・入選

平良ゆうさん(左)、金城実佑さん(沖縄職業能力開発大学校住居環境科2年)

工業高校から大学院まで、全国の建築系学生が住宅プランを競う「建築設計競技(主催・実践教育訓練学会)」。本年度のテーマは「リモートワーク住宅」で、応募数は71作品。沖縄職業能力開発大学校2年の平良ゆうさんは2等賞を受賞、金城実佑さんは上位9作品に入選した。設計条件で決められているのはテーマと住宅の規模だけで、立地や家族構成を自分で想定しながらプランを練る。

2等賞に輝いた平良さんの作品は、コロナ禍の家庭における親子の絆を意識し、子どもの過ごし方に焦点を当てたプラン。「屋内外に子どもが遊べるスペースを設けることで、家族が家にずっといてもストレスなく過ごせると考えた」。向かいにコスモス畑がある立地を選び、秘密基地のようなロフトや工作スペースになるデッキなどを配した。一日のスケジュールと曜日ごとの過ごし方も提案したことで、「現実的で快適な家をうまくまとめている」と評価された。

入選した金城さんの作品は、多様なシーンの仕事スペースを設けたのが特徴。図書館でリモートワークの体験談などを読み、「自分で時間調整できるメリットを生かすために、時間帯や雰囲気に合わせた仕事環境が必要と考えた」。外から出入りすることで仕事モードに切り替えられる地下書斎、カフェ気分になれる2階テラスなどを配した。

約2カ月の制作期間で、初めて使う3Dソフトも駆使して提案をまとめた2人。「自分の考えを整理し、形にして伝える方法が学べた」と口をそろえる。今後は県外の職業能力開発大学校の応用課程へ進学。平良さんは「次は建築士試験に挑戦したい」。金城さんは「施工技術を学び、建築士を目指す」と意気込んだ。


3Dソフトで作成したパース(平良さんの作品より)。間取り図から立体にした後、建物の素材や色、周辺の景色などを作り込む


取材/赤嶺初美(ライター)
毎週金曜発行・週刊タイムス住宅新聞
第1880号・2022年1月14日紙面から掲載

地域情報(街・人・文化)

タグから記事を探す

この連載の記事

この記事のキュレーター

スタッフ
週刊タイムス住宅新聞編集部

これまでに書いた記事:2122

沖縄の住宅、建築、住まいのことを発信します。

TOPへ戻る