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2021年7月23日更新

【沖縄】美ら海ビレッジ プール&テラス(本部町)|HOTELに習う空間づくり[20]

当連載では県内のホテルを例に、上質で心地良い空間をつくるヒントを紹介する。
今回は美ら海ビレッジ プール&テラス(本部町)の空間をクローズアップする。


リゾートも仕事も多世帯も障がい者も
美ら海ビレッジ プール&テラス(本部町)

バリアフリー面 研鑽中

海洋博公園まで車で3分足らず。本部町豊原に一棟貸しのコンドミニアム「美ら海ビレッジ プール&テラス」が8月に開業する。中庭にプールを備える平屋の3LDK。トイレや浴室も二つずつ備え、最大8人で宿泊できる。

開業のきっかけは同物件のオーナーが、両親や子どもたちと家族旅行したときのこと。「ホテルを予約すると2~4人ずつで2部屋以上に分けられた。3世代で行ったのに、皆でゆんたくできるのは食事の時くらいだった」

「多世帯が一緒に泊まれる場所を作りたい。赤ちゃんや高齢者、障がいの有無を問わず、家族や仲間と水入らずで過ごせる空間を目指している」

キッチンや洗面台は下部収納が無く、車椅子でも使えるものを導入。浴槽には着脱式の電動のリフトを用意。車椅子タイプのシャワーキャリーも備える。

また、世界を旅する車椅子トラベラー・三代達也さんがことし3月から沖縄に在住していることを知り、プレオープン時に宿泊してもらった。三代さんは、「公共や企業から助言してほしいという依頼はあるが、個人からの依頼は初めて。熱意を感じた。ただ、空間に関しては、ブラッシュアップの余地があると思う」と話す。

寝室の照明スイッチが車椅子では手が届きにくい場所にあったり、テラスに照明が少なく「夜間は危ない」。和室の襖などが健常者でも開閉しづらく、「力の弱い人はなおのこと不便」と利用者目線での意見を伝えた。

オーナーは「忌憚のない意見がいただけてありがたい。取り急ぎ改善し、皆に優しい場所にしていく」と話す。




同物件の真ん中にあるLDK。写真奥は和室。和室は43㌢の小上がりになっていて腰掛けることもできる。和室の襖(ふすま)は磁石がくっつくタイプで、ホワイトボードを張り付ければリビングが会議室に早変わりする

トイレは大きく開く折れ戸を採用。空間も広めに取っている


二つ並んだ洗面台。キッチン同様、下部収納が無いタイプ


キッチンはシンクが浅めで下部収納もないことから車椅子のまま使用できる
美ら海ビレッジプール&テラスの鳥瞰(ちょうかん)図。平屋の3LDK

ワーケーション利用も

やんばるの豊かな緑に囲まれて、プールで涼む。水辺のテラスでくつろぐのもいい。ビーチはなくともリゾート感あふれ、非日常を堪能できる。

「遊びだけでなく仕事もできるよう、ワーケーションを想定した造りになっています」

小上がりの和室の隅には掘り込み式の書斎を設けた。また、
和室の襖は磁石が付き、ホワイトボード代わりに使える。襖を閉めれば隣接するリビングが会議室に早変わりする。

多様な人が、多様な目的で使える。そんな欲張りな造りこそ、現代のニーズにマッチしている。



山原の緑が望めるテラス。奥にはプールがある。ソファやテーブル、バーベキューグリルなどが設置されている。オーニングが陰を作る心地良い空間


同物件、自慢のプライベートプール。7メートル×3.5メートルの広さがあり人目を気にせず泳ぐことができる


玄関から居室に上がる框部分は車椅子が自走で上がれる2センチの高さ。段差の角は斜めに削ってより上がりやすくしている

必要ならば浴槽に電動リフトも設置可能。車椅子型のシャワーキャリーも用意

モダンな外観。広々とした駐車場とスロープを備える

和室の隅には書斎を設置。ワ―ケーションの利用も想定している

同物件に宿泊して
車椅子トラベラー 三代達也さん


熱意を感じる物件。進化に期待

完成前から、図面で分かる範囲でアドバイスしていましたが、実際に宿泊してみると、まだブラッシュアップの余地があると感じました。寝室のスイッチの位置や、テラスの照明の数、室内外の建具の使い勝手などにもう少し配慮があればいいですね。

しかし、個人からのアドバイス依頼は初めてで、熱意のある物件だと思う。進化に期待しています。

僕は、さまざまな施設でバリアフリー面の助言をさせていただいています。その際、大事にしているのが「75点」。バリアフリーって、車椅子ユーザーだけが対象じゃない。だから僕にとって100点の造りじゃダメなんです。

例えば段差は、僕はない方がいいけど、室内への吹き込みや砂ぼこりの侵入を防ぐためにはある方が良い。車いすが自走で上がれる高さにしたり、段差の角を斜めに削るなどの工夫をして、皆にとっての「75点」になるようアドバイスしています。

「75点」を実現するためには積極的に外に出て、不便があれば声を出すことが大事だと思っています。


みよ・たつや/1988年、茨城県生まれ。18歳のときにバイク事故で頸椎(けいつい)を損傷。車椅子生活に。それでも「やりたいことをやれるうちに」と約9カ月かけ単独世界一周を達成。ことし3月から糸満市に移住。医療系専門学校で講演会を行うなど積極的に活動する。著書「No Rain No Rainbow 一度死んだ僕の、車いす世界一周(光文社)」。YouTubeチャンネル「Miyo channel」を運営
 



取材/東江菜穂
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1855号・2021年7月23日紙面から掲載

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東江菜穂

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編集者
週刊タイムス住宅新聞、編集部に属する。やーるんの中の人。普段、社内では言えないことをやーるんに託している。極度の方向音痴のため「南側の窓」「北側のドア」と言われても理解するまでに時間を要する。図面をにらみながら「どっちよ」「意味わからん」「知らんし」とぼやきながら原稿を書いている。

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