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2021年7月2日更新

2021年5月 沖縄県不動産市場DIレポート コロナ禍で地価下落感1年続く

沖縄県不動産鑑定士協会は6月3日、「不動産市場DIレポート」2021年5月調査の結果を発表した。同調査は地価の上昇・下落などについて半年前と比べた実感と半年後の予測を不動産関連業者に聞き、景況感をとりまとめたもの。新型コロナ感染症拡大の影響が出た2020年から1年間下落感が続いている。一方で今回はその弱まりも見られ、不動産鑑定士の伴清敬さんは、「依然として影響はあるものの、最悪の状況からは脱しつつあるのではないか」と話す。(川本莉菜子)

図1 県内の地価動向DI

「DI」とは、現況や先行きの見通しの景況感指数。例えば地価動向DIであれば「上昇」と判断した事業者の割合から、「下落」と判断する事業者の割合を引いたもの。値がプラスであれば地価景況の上昇感を、マイナスであれば下落感を示す。


行き警戒し下落感強まる予測

住宅地は下落感の弱まりを実感

今回調査は、2021年5月時点で半年前と比べた実感と21年11月の予測を不動産関連1462社に聞き、305社から回答を得た(回答率20.9%)。

県内の地価景況について、21年5月時点のDIは住宅地がマイナス5.0、商業地マイナス28.7、軍用地マイナス41.4と、いずれも半年前と比べて下落感が見られた=図1。初めて緊急事態宣言が出された20年5月以降、マイナスで推移しており、「依然としてコロナの影響が見られる」と、不動産鑑定士の伴清敬さんは話す。

住宅地は前回20年11月と比べて、4.1ポイント上昇。下落感が弱まり、前回予測されたマイナス34.2よりも大きく回復している。今回は調査時期がまん延防止等重点措置中で先行き不透明感が強かったためか、半年後の11月はマイナス21.0と下落感が強まる予測となった。

商業地は前回と比べて8.4ポイント低下し、下落感が強まった。先行きのDIは、観光客数減少や外出自粛が続き、収益性が見通せずマイナス36.2とさらに低下する予測となった。軍用地は前回と比べて6.5ポイント低下。先行きは15.3ポイント上昇した。

前回調査では「下落」「やや下落」との予測が回答の5割前後を占めたが、今回結果は住宅地が約3割、商業地5割弱、軍用地4割となった。伴さんは「依然として厳しい状況が予測されるが、最悪の状況からは脱しつつあるというところかと思う。ただ、コロナ終息が見えない中で事業者は先行きに対する警戒感が強いようだ」と話す。


資厳しく売買に影響 ワーケーション需要は増

取引回復で住居系は増加予測

取引件数DIについても依然として減少感はあるものの、宅地、マンション、一戸建て、軍用地の全てで回復傾向が見られ、予測値も同様に回復を見せた。特に宅地と一戸建てでは増加感に転じる予測となり、伴さんは「コロナ対策の浸透、あるいはコロナ慣れによって、営業活動が以前に近い形で行えるようになったのではないか。影響を大きく受けず生活が安定している人にとっては、住宅購入にも踏み出せるようになったのではないかと思われる」と見解を示す。

 

図2 地域別 住宅地地価景況

住宅地地価DI値を天気マークに模したもの。快晴(10以上)、晴れ(5~10)、晴れ時々曇り(0~5)、曇り(-5~0)、曇り時々雨(-15~-5)、雨(-30~-15)、雷雨(-30以下)※日本不動産鑑定士協会連合会作製
住宅地地価DI値を天気マークに模したもの。快晴(10以上)、晴れ(5~10)、晴れ時々曇り(0~5)、曇り(-5~0)、曇り時々雨(-15~-5)、雨(-30~-15)、雷雨(-30以下)※日本不動産鑑定士協会連合会作製

【地域区分】
先島地区:石垣市、宮古島市、竹富町、与那国町、多良間村
本島北部:金武町以北
本島中部:宜野湾市~読谷村
那覇市周辺部:浦添市、豊見城市、南風原町
那覇市西部:新都心、久茂地、安里、壷川周辺
那覇市東部:首里、真和志周辺
那覇市小禄地区:小禄、赤嶺周辺
本島南部:南城市、糸満市、与那原町、八重瀬町


地域ではばらつきあり

地域別住宅地地価のDIを見ると、那覇市周辺部、本島南部、先島地区で上昇感を示す晴れマークが見られた。一方、その他の地域では下落感を示す曇りから雨マークとなり、地域によってばらつきが見られた=図2。11月予測では、本島北部のみ横ばい、その他の地域は県全体と同様に下落感の強まりが見られ、現状よりも今後のほうを悲観的に捉えた結果となった。

各事業者のコメントから特徴的な意見を取り上げると、「買い手への融資が厳しく、売買が減少した」という声が散見された。それに伴い、「賃貸需要が増加した」との声もあり、「宜野湾・浦添周辺は空きが少なく賃料増加が感じられる」、「古いアパートでも入居が決まる」など賃貸需要への影響が見られた。一方、「那覇新都心では賃貸マンションが供給過剰な状況で借り手がなかなかつかない」との声もあり、地域によってばらつきがある。本島北部や石垣島では、「ワーケーション」や「リモートワーク」で不動産需要が増加したとの声があり、コロナ禍の特徴が表れていた。

今後については、「1年後には持ち家や不動産を手放す人が増え、供給が多くなり価格も多少下落するのではないか」、「民泊やアパートの売却が増えるのではないか」などの売却の動きを懸念する声もあった。

 

図3 県内の賃貸動向DI



物件は住居系と商業系で両極化

県全体の賃貸動向のDIは、共同住宅、店舗ともに回復傾向=図3。下落感が強まるという前回予測を覆した。特に店舗はマイナスではあるものの、前回と比べて大きく回復。賃料は前回より23.5ポイント上昇してマイナス8.7、稼働率は21.6ポイント上昇してマイナス17.5となった。半年後の予測値は共同住宅が上昇感、店舗は下落感が強まり、両極化した。

 

図4 貸店舗・貸事務所の相談状況

①解約やその相談、②新規契約に関する問い合わせ、③賃料減額や猶予の相談について、半年前より増加したか、減少したかを聞いた。①解約やその相談、②新規契約に関する問い合わせ、③賃料減額や猶予の相談について、半年前より増加したか、減少したかを聞いた。①解約やその相談、②新規契約に関する問い合わせ、③賃料減額や猶予の相談について、半年前より増加したか、減少したかを聞いた。


コロナ後見込み新規の相談も

コロナ禍で特に影響を受けていると考えられる貸店舗や貸事務所について、同協会はその相談状況を追加調査した=図4。結果、どちらも半年前と比べて賃料減額などの相談が増加しており、新規契約の相談は減少した。解約では、貸事務所は増加と減少がほぼ同率、賃店舗はやや増加が高くなった。伴さんは「店舗などは引き続き厳しい状況が続いていると再認識した。一方、貸事務所に比べて貸店舗の新規契約の増加がみられるのが注目点で、特に先島地区は出店意欲が高い状況にある」。貸店舗新規相談は、先島地区のみ増加が32%で、減少26%を上回った。

伴さんは「飲食店や観光客向け店舗などは当面厳しい状況が続きそうだが、コロナ後を見込んで今から投資を考えている人も少なくないと思われる。オーナー側もその点を踏まえた戦略が必要になるだろう」と話した。


不動産市場DIレポートの詳細は、県不動産鑑定士協会のホームページ(http://www.fudousan-kanteishi.okinawa)で確認できる。

編集/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1852号・2021年7月2日紙面から掲載

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