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2016年7月15日更新

命にかかわる「正確さ」「分かりやすさ」|みんなで考えよう!豊かなまち④

今回から、「情報バリア」をテーマに伝達や制度の壁を考える。なは市民活動支援センター学生スタッフの田畑秋香さん(車いす利用者)と渡嘉敷初音さん(聴覚障がい者サポート)、今年大学を卒業し、東京のカフェで働く聴覚障がい者のYさんに話を聞いた。

情報バリア①  伝達システム・制度


以前担当していた地域づくり演習で、学生が白つえを使って歩く体験をしているところ。足の裏とつえの先で状況を知り、頭に地図を描く

これまで見てきたように、道路・歩道、公共交通、自動車は、障がい者にとって必ずしも移動の利便性を高めるものではなかった。バリアフリー仕様でも、当事者視点で設置・運用しなければ、移動を阻む原因になる。
そもそも利便性を伝達する仕組みがないと、設備の目的を果たさない。「正確さ」「分かりやすさ」に最大の配慮を払った表示やアナウンスが求められる。さらに、道路や施設の状況を簡単に変えないこと、変更したら確実で丁寧な情報伝達が重要だ。
以前、全盲の女子学生Hさんに「自分の位置をどうやって知るの?」と聞いた。「足の裏で路面の状況を感じながら道を判断し、道路沿いの設置物に白つえをあてて道幅や障害物を確認しながら場所を判断します。パン屋さんの近くなどは匂いで覚え、それらを総合しながら頭の中に描かれている地図を頼りに動きます」という。
視覚障がい者は、全身で街を感じながら移動している。不正確な情報だけでなく、設置物の安易な変更や情報の未伝達は、命の危機につながる。
全盲の男子学生O君は、「交差点の視覚障がい者向け音声は、21時半に止まる。それ以降の時間には、社会参加できなくなる。近隣から苦情が出るというが、せめて午前0時まで流してほしい」。当事者に寄り沿った情報提供には、地域や人々の理解が必要だ。
車いす利用者にとっては、移動中の視界は健常者とは同じではないことが、田畑さんのインタビュー=左囲み=から分かる。同様に、高齢者も目線が下向きになりがちで、視界は限られている。
他県には、路上に大きな文字や絵で行き先表示がされている都市が多い。長崎市や神戸市など、坂道が多く歩きにくいと思われる都市ほど、実際は配慮が行き届いている気がする。


音声・文字・手話 「どれもある」が重要
-街の中で情報が足りず困ることは?
 田畑  車いすでは目線が低くなるので、高い所に書かれているものを身落とす。行き先表示や「避難所」「トイレ」など案内版はほとんど高い位置にある。
情報が不正確なことが最も困る。おもろまち駅からバスに乗ってアルバイト通勤しているが、全車ノンステップバスのはずなのに、たまに違うバスが来る。乗れないので仕方なく自力で車いすを動かして会社に向かうため、当然遅刻する。
 Yさん  地下鉄でプラットホームを歩いていて、後ろからものすごい勢いで列車が近づき非常に怖い思いをした。沖縄のモノレールにはない感覚だった。「電車が近づきます」と音声情報で告げているらしいが、私たちには聞こえない。
また、講演会などで話者の口の形と雰囲気から内容はある程度理解できるが、座席が遠くなると話者の顔が見えず分からなくなる。映像が使われる時に字幕がなかったり、講演者が何か言って周囲が笑っていても私たちには意味が分からなかったりすると、とてもつまらない気持ちになる。

-どういう状況が望ましい?
 田畑  行き先の表示が道路に書いてあると、分かりやすい。あまり知らない場所ではものすごく助かる。私たちは、ひとつ間違えると生命の危険や大きな経済的損失を被ってしまう。特に行き先や時間、方法などの公共の情報は正確であってほしい。
 Yさん  講演会では手話通訳が付くことが多くなったけど、私はずっと普通校で育ったから手話を知らない。できれば字幕をつけてほしい。鉄道は、慣れるしかないかな。
 

-渡嘉敷さんは、大学で聴覚障がい者の情報保障活動をしている。
 渡嘉敷  Yさんの「笑い」について、講義でもよくある。話す内容を文字で伝えるノートテイク活動をしていて、「笑い」は難しい。長い時間、笑いの雰囲気になった時は書けるが、一瞬のジョークは無理。だから、きっと味気ないだろうな。
いつも手話で話す学生が、入学式で手話通訳者の手話が自分のものと違いまったく分からなかったと話してくれた。話の内容をつかんで入力しスクリーンに映す、要約筆記者を併用する必要を強く感じた。補聴器に電波で音声を流すシステムもあり、障がいに関わらず音声・文字・手話が「どれもある」環境が大切だ。
公共交通では、空港は広いため音声案内が主で、聴覚障がい者に不利だ。飛行機は時間などよく変更になり、不安だという。メール配信など考える必要がある。



長崎市の路面にある大きな案内表示。車いす利用者や高齢者に非常に分かりやすい上、段差もまったくない​

文・稲垣 暁(いながき・さとる)
1960年、神戸市生まれ。なは市民活動支援センターで非常勤専門相談員。沖縄国際大学・沖縄大学特別研究員。社会福祉士・防災士。地域共助の実践やNHK防災番組での講師を務める。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 第1593号・2016年7月15日紙面から掲載

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