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2021年5月14日更新
[沖縄・移住]暮らしをサイズダウン シニアから楽しむ沖縄移住[2]
[文・写真/青木 容子]
60代後半で沖縄に移住した青木容子さん。本連載は、青木さんが移住に伴って、資産整理や断捨離などの暮らしをサイズダウンした経験と、沖縄で生活する中での楽しみを紹介します。
店も引き継ぐ 奇跡の出会い
Yさんが受け継いだ後のギャラリー内。希望していたグランドピアノを置いたサロンには、青木さんたちから引き継いだ作家の作品も飾られている独立した子らへ継がず売却
同じ敷地内にある住宅とアートギャラリーとを、そのまま引き継ぐ形で購入したいという方が現れたのが、2016年2月。売りに出してから約5年たった頃でした。
実は物件を売りに出す前に、4人の息子たちにギャラリーを継ぐか相談していました。ですが、彼らはそれぞれに自分たちの決めた道をすでに歩いているので、継ぎたいとは誰も言いませんでした。確かにこの仕事は、こちらから頼んで継いでもらうものでもないとも思っていましたので、納得できる反応でした。住宅もギャラリーも売却して、単にこのロケーションと雰囲気を残しつつ、どなたかが新しい暮らしを始めてくださればいいなぁと思っていました。
そんな時、「店名もそのまま、ギャラリーも引き継ぎたい」と言って現れたYさんとの出会いは、私たちにとっては資産の売却ということだけでなはく、想像を超えたうれしいことでした。
Yさん(右)が引き継いだことを知らせるポストカードを作り、知人や客に配った。左2人が青木夫妻
味わいある空間に一目惚れ
Yさんは1年以上も前からネットで私たちの物件の情報を見ていて、ずっと気になっていたそうです。不動産業者さんを通して物件を見たいと連絡があり、当日に初めてお会いしました。
実際に物件を見たYさんは一目惚れ状態。思い描いていた通りの建物、雰囲気で即座に購入しようと決めたようです。夫が案内をして一通り見られた後、「決めました。いろいろ教えてください」と言われた時に、「私たちはこの方を待っていたんだなぁ」と直感しました。
後日聞いたのですが、同じ敷地内に住みつつ、ギャラリーを経営したい、グランドピアノを入れて音楽関係のレクチャーもしたい、という希望にぴったりの物件だったそうです。決め手のもう一つは、駐車場や庭にある木。あまり手を入れ込まず自然のままに育っているのが気に入っていただけたようです。敷地全体を見てYさんは、「一から作るのはとてもできない、長年営んだ味わいのある雰囲気を醸し出す空間がある」と、おしゃっていました。
私たちの会社を閉じる手続きやYさんの開業準備などが順調に進んで、9月末に引き渡しが決定。最後の営業日までの1週間、「ギャラリーの引き継ぎをさせてください」と彼女から申し出があり、これまでつながりがある作家の紹介、日々のルーティンなど、思いつく限り、提案させていただきました。
最後の営業日はくしくも彼女の誕生日。お祝いもできて忘れられない日となりました。
あおき・ようこ/1948年、長崎市生まれ。夫・嘉一郎とともに、90年から静岡県富士宮市で企画アートギャラリー「芸術空間あおき」を経営。2016年に沖縄移住し、北中城村瑞慶覧のカフェ「沖縄物語」内でアートショップを営む。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1845号・2021年5月14日紙面から掲載