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2021年4月30日更新

[豊かな暮らしとエネルギー]多様な発電源で安定供給|教えて沖縄電力さん! 県内の電気事情

エネルギーを取り巻く環境は脱炭素へと向けて加速。ガス・電力の全面小売り自由化、地球温暖化対策や省エネへの意識の高まりなども踏まえ、自分たちのライフスタイルに合わせて家庭のエネルギーを自由に選ぶ時代になってきた。その選択時のヒントとなるよう、本コーナーは、エネルギーを供給する事業者に現状や今後の動きなどを聞き、県内のエネルギー事情を紹介する。今回は電気編。沖縄本島から離島まで電気を供給する沖縄電力に聞いた。

Q.県内の電気事情は?

A.人口に合わせて需要増 主力は火力発電

県内のこれまでの電力需要は、人口や観光客の増加がプラス要因になって増加傾向です。増加する需要に対して、県内の電気は、石炭などの化石燃料による火力発電で主につくられてきました。

これには、地形や地理的制約が大きく関わっています。具体的には、水力発電に必要な大きな山や川がないこと、原子力発電が必要なほど需要規模も大きくないことなどが理由に挙げられます。

1970年代のオイルショックでは、一つの発電エネルギー源に頼り過ぎたことで、料金高騰などの大きな影響を受けました。この経験から、現在では石炭やLNG(液化天然ガス)、太陽光といった、多様な発電エネルギー源を取り入れることで、安定的かつ経済的なエネルギー源の確保と発電体制を築いています。

電気はためることが難しく、消費量と発電量が一致するよう、24時間365日調整しています。そのバランスを保つことで、安定した品質の電気を送ることができます。


Q.地球温暖化対策は?

A.培ったノウハウも生かし 2050年CO排出ネットゼロへ

沖縄電力では、これまでも地球温暖化対策に取り組んできました。太陽光・風力発電を積極的に導入。加えて、2012年運転開始の吉の浦発電所では、新しいエネルギー源として、LNG(液化天然ガス)というCO2排出量の少ない燃料を使っています。県内経済が発展、電力需要も増加する中、これらの取り組みによって、CO2排出量の削減に成功しています=下グラフの棒グラフ。

LNG同様、環境負荷が少ないクリーン燃料として、木質ペレットという建築廃材をリサイクルした燃料を導入。10年から具志川火力発電所で、ことし3月からは金武でも、石炭と混焼して使っています。



●発電によるCO2排出の推移 (グラフ:沖縄電力提供)


増加する販売電力量(折れ線グラフ)に対し、太陽光・風力、LNGなどの使用で、CO2排出量(棒グラフ)を削減してきた。CO2排出量のピークは2008年の707万トン(販売電力量約74億76百万kWh)となっている

30年までに26%削減

地球温暖化対策、脱炭素社会の実現に向け、昨年12月に「沖縄電力 ゼロエミッション〜2050 CO2排出ネットゼロを目指して〜」を発表。まずは、30年までにCO2排出を05年度より26%削減、50年までにネットゼロを目指します。

このプロジェクトの大きな柱は二つ。「再エネ(太陽光・風力発電)主力化」と、クリーン燃料の利用などによる「火力電源のCO2排出削減」です。これまで培ったノウハウを生かし、新技術や新事業、新しいエネルギー源の検討も行います。

具体的な施策の一つとして、一般住宅などに太陽光と蓄電池を無償設置して電気を供給・販売する「かりーるーふ」を4月から展開。本年度は200件の導入が目標です。災害時などに停電しても電気を使える仕組みなので、今後、学校などの避難所になる施設にもマッチすると思います。

県とも連携し、地域とともに、地域のために脱炭素社会に向けて取り組んでいきます。

※「ネットゼロ」とは? 太陽光・風力発電や水素などのCO2を排出しない燃料、CO2を吸収する技術などを組み合わせて、発電時のCO2排出量を差し引いて、実質ゼロにすること。


●「沖縄電力 ゼロエミッション」取り組みイメージ

 

Q.離島の電気はどこでつくるの?

A.島内発電や海底ケーブルで供給 太陽光・風力発電も活躍

本島周辺の離島は海底ケーブルを通じて供給しています。離れた島では島内で発電。主燃料の重油は燃料費や輸送費のコストがかかる傾向にあります。このことから、コスト低減はもとより、地球温暖化対策や安定供給の強化に向けて、太陽光や風力発電の導入などに取り組んでいます。

波照間島では、台風などの災害に備え、倒せるよう設計した国内初の風車を導入。さらに実証事業として、モーター発電機と蓄電池などを組み合わせた安定供給の仕組みをつくりました。昨年11〜12月にかけては、風力発電によるエネルギーだけで10日間供給することができました。

また、来間島では、一定のエリアを対象に太陽光発電と蓄電池を組み合わせた実証事業を実施。需要に合わせた電力を極力島内でまかない、災害にも備えた自立的な供給体制づくりに取り組んでいます。沖縄の気候、小規模な電力需要にも合った、自然のエネルギーを使った技術の向上に取り組んでいます。

可倒式風車。90度近く倒すことができ、台風などでの倒壊を防ぐ。同風車は波照間、南大東、粟国、多良間にあり、4島合わせて7基を設置(写真:沖縄電力提供)


家で使うエネルギーのアレコレ【電気編】

エネルギー消費は2000年以降減少

暮らしの中で使うエネルギー源は、電気、ガス、灯油などがある。全国の家庭におけるデータで、その使い道を見ると、最も大きいのは照明や家電で、33.8%=下グラフ1。源となる電気は、エネルギー源全体の51.4%を占める=下グラフ2の(全国)。家電の大型化や多様化、オール電化などがプラス要因と見られている。

一方、消費総量は2000年以降減少傾向。少子化の影響、機器・設備の効率改善、東日本大震災や地球温暖化などで節電・省エネへの意識が高まったことなどが背景にある。

 グラフ1  全国の家庭エネルギーの使い道


 グラフ2  沖縄・全国の家庭エネルギー源の消費割合
県内は電気消費が6割

沖縄県のデータで家庭のエネルギー源消費を見てみよう。電気が最も高く、63.1%を占める=グラフ2の沖縄。全国に比べて1割ほど高く、夏場の冷房使用などが影響しているとみられる。次いで、LPガス24%、灯油8.8%、都市ガス2.6%。再生可能エネルギー(太陽光、バイオマス、地熱など)は1.6%と最も低いが、全国(0.4%)に比べると高いことが特徴だ。

過去10年の1人当たり消費量は16〜18ギガジュール。全国(15〜17ギガジュール)よりも高い消費量になっている。

*2018年時点データ。資源エネルギー庁「エネルギー白書」「エネルギー需給実績」、都道府県別統計より

取材/川本莉菜子
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1843号・2021年4月30日紙面から掲載

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