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2025年1月4日更新
2025年以降の住宅取得市況|建築費、住宅施策、地価はどうなる?
2025年以降も建築資材や地価の高騰は続くのかや、住宅取得の動向などを建築関係者や建築資材の協会、シンクタンクの方々に聞いた。また、コスパ良くマイホームを建てるヒントも聞いた。
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2025年以降の住宅取得市況
建築費、住宅施策、地価はどうなる?
2025年以降も建築資材や地価の高騰は続くのかや、住宅取得の動向などを建築関係者や建築資材の協会、シンクタンクの方々に聞いた。また、コスパ良くマイホームを建てるヒントも聞いた。

沖縄県不動産鑑定士協会
仲本徹 地価調査委員長
全県的に住宅地価は上昇
―2024年の地価動向
24年7月1日時点の沖縄県地価調査の結果によりますと、県内住宅地の平均変動率はプラス5.8%と23年のプラス4.9%より上昇幅が拡大しています。地域によって差はありますが、コロナ禍後の沖縄経済が景気回復から拡大基調にある中で、住宅需要が低価格帯の郡部へと広がっており、ほぼ全県的に住宅需要の強さと底堅さが見られました。
その主な要因は、工期が短く建築コストを抑えられる小規模木造住宅の普及と、那覇市郊外部およびその周辺市町村への住宅需要の波及、一部離島と本島中南部、北部地区の海岸エリアなどのリゾート色の強い地域における県外市場参加者による移住や別荘需要の強さによるものと考えられます。
―今後の住宅取得市況
一方、人件費や為替の円安相場に伴う原材料価格の上昇による建築費の高騰と、開発業者の仕入れ競争による周辺地価への影響で、戸建住宅や分譲マンションの販売価格に高止まり感が見られます。県内の標準的所得層の世帯でも購入困難な水準まで上昇しているとの嘆きも聴かれます。
このような市場環境下において、近時では住宅ローン金利の上昇圧力の強まりも見られます。これらが需要者の住宅購入意欲の阻害要因となり市場への影響が危惧されます。そのため住宅取得市況は「晴れのち曇り」にしました。
建築費、住宅施策、地価はどうなる?
2025年以降も建築資材や地価の高騰は続くのかや、住宅取得の動向などを建築関係者や建築資材の協会、シンクタンクの方々に聞いた。また、コスパ良くマイホームを建てるヒントも聞いた。

沖縄県不動産鑑定士協会
仲本徹 地価調査委員長
全県的に住宅地価は上昇
―2024年の地価動向
24年7月1日時点の沖縄県地価調査の結果によりますと、県内住宅地の平均変動率はプラス5.8%と23年のプラス4.9%より上昇幅が拡大しています。地域によって差はありますが、コロナ禍後の沖縄経済が景気回復から拡大基調にある中で、住宅需要が低価格帯の郡部へと広がっており、ほぼ全県的に住宅需要の強さと底堅さが見られました。
その主な要因は、工期が短く建築コストを抑えられる小規模木造住宅の普及と、那覇市郊外部およびその周辺市町村への住宅需要の波及、一部離島と本島中南部、北部地区の海岸エリアなどのリゾート色の強い地域における県外市場参加者による移住や別荘需要の強さによるものと考えられます。
―今後の住宅取得市況
一方、人件費や為替の円安相場に伴う原材料価格の上昇による建築費の高騰と、開発業者の仕入れ競争による周辺地価への影響で、戸建住宅や分譲マンションの販売価格に高止まり感が見られます。県内の標準的所得層の世帯でも購入困難な水準まで上昇しているとの嘆きも聴かれます。
このような市場環境下において、近時では住宅ローン金利の上昇圧力の強まりも見られます。これらが需要者の住宅購入意欲の阻害要因となり市場への影響が危惧されます。そのため住宅取得市況は「晴れのち曇り」にしました。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

沖縄木造住宅協同組合
村山創 事務局長
新たな補助制度も木造後押し
―2025年以降、木材の価格はどうなる?
当面は現状の価格水準が続くと思われます。しかし、関係資材の上昇、賃金の向上の流れで価格水準はいずれ上昇していくでしょう。
また、世界情勢の変化によっては、ウッドショックのような急激な価格高騰も懸念しています。
―今後の木造住宅の動向
2023年度の沖縄県の一戸建て住宅の着工数で木造の割合は46.4%と半数近くを占めます。RC造は41.2%です。
ことし4月から始まる省エネ性能義務化・建築基準法改正の対応で建築費が増大することが予想され、住宅全体の着工数は減少する恐れがあります。しかし、木造住宅はコストと性能のバランスが良く、引き続き着工数で上位を占めると予想されます。それを踏まえ、木造の住宅取得市況は「曇りのち晴れ」です。
―コストパフォーマンスの側面から見た木造
来年度から、従来のZEH水準を大きく上回る省エネ性能を有する「GX(グリーントランスフォーメーション)志向型住宅」新築への補助制度が始まります。すべての世帯が対象で補助額は最大160万円。木造は他の構造と比べ、その性能をクリアするためのコストが安価です。
建設時に発生するCO2も大幅に削減でき、環境負荷の低減や経済性、快適性でも木造はコスパが良いと思います。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

りゅうぎん総合研究所
城間櫻 研究員
高騰続く 金利の影響も注視
―2025年の住宅取得環境は
資材価格の高止まりや人件費の上昇等によって建築コストは上昇しています。地価の高騰もあり、住宅購入費は上昇傾向が続くでしょう。
政策金利の見直しによる住宅ローン金利上昇の影響も注視する必要があります。こうした先行きの不透明さから、25年は曇りと判断します。
24年の新設住宅着工の動きをみると、貸家はコロナ禍からの回復の動きが続き好調でしたが、持ち家は減少傾向が続いています。特にRC造一戸建て住宅の建築単価は年々上昇しており、比較的価格の安い木造の分譲住宅にシフトしている動きがみられます。
また、これまで堅調だった分譲マンションの着工の勢いが弱まっています。背景には建築コストの上昇に加え、24年4月から適用された時間外労働の上限規制に伴う工期の長期化等があると考えられます。
―今後の見通しは
県内景気は底堅い消費マインドと旺盛な観光需要にけん引され、拡大基調が続くとみられます。賃金上昇の好循環が実現すれば、晴れ間がのぞくでしょう。
ただし、民間投資が活発になれば住宅建築に工期の遅れなどの影響が懸念されます。住宅取得は余裕を持って計画を立てることが望まれます。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

沖縄県生コンクリート工業組合
運天先俊 理事長
「コンクリが高騰の原因」は違う
—2025年以降、鉄筋コンクリート(RC)住宅の価格はどうなっていくか
セメントや骨材(砂・砂利)など、原料の価格が高騰していることや人件費の影響で、コンクリートの価格は確かに上がっています。今後も価格が下がる見込みは薄いと思われます。
ただ、新築一戸建て住宅でコンクリートの費用が建築費に占める割合は1割程度です。「コンクリートの高騰=RC住宅の高騰」というイメージを持っている人も多いようですが、それは違います。RC住宅は木造よりも現場での作業が多く、工期が長いことが人件費に影響していたり、鉄筋の価格などもあって高騰につながっています。
―コストパフォーマンスの側面から見たRC住宅
RC住宅は耐用年数が長く、定期的にきちんとメンテナンスをすれば50年、60年、100年と持たせることができます。
また、災害にも強い。耐久性の高さから、台風が多い沖縄で一気に広まりました。いつ起こるか分からない大地震や、災害級の大雨などの被害を抑えるのにもRC住宅は適していると言えるでしょう。
今後も建築資材は高騰傾向にあり、新築の購入は大変でしょう。しかし、子や孫の代まで安心して住み継いでいくと考えればコスパは決して悪くないと思います。なので、今年以降のRC住宅取得の市況は「曇りのち晴れ」です。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

沖縄県建築士会
伊佐強 会長
資材メーカーとも情報共有を
―今後の建築費動向は
建築費は高止まりが続くと思われます。特に鉄筋コンクリート造が高騰していて、木造との価格差が大きい状況でした。しかし、今年4月から施行される改正建築基準法では、木造一戸建ての審査項目(構造や省エネ関連)が増えることから、それをクリアするために木造のコストも上がる可能性があります。
―コスパ良く建てるには
設計だけでのコスト削減には、限界があります。もう1歩踏み込んでコストカットをするには、建材・資材メーカーとの情報共有もカギとなると考えます。単に製品情報を得られるだけでなく、例えば廃棄される赤瓦や琉球ガラスなどは空間の彩りに使えたりします。情報共有ができれば、有効に活用できるでしょう。SDGsの観点からも理にかなっています。
また、現状の家づくりは施主と建築士がやりとりをした上で、建設会社に相見積もりを依頼し価格競争をさせています。しかし、施主・建築士・施工会社がワンチームとなって家づくりをする方が、建築費を抑えつつ満足度の高い家づくりができると思います。
今は家づくりの転換期。良い方向へ変わっていくよう希望を込めて、市況は「曇りのち晴れ」です。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

沖縄県建築士事務所協会
池間守 会長
厳しいからこそ知恵生まれる
―建築費の動向は
引き続き、人件費や資材高騰などの影響で、建築費は今後も上昇が続くと思われます。
背景にあるのは慢性的な人手不足。これが劇的に解消されるような、例えば建設ロボットやAIの普及などの技術革新がない限り、建築費が下がる可能性は低いと思います。
―県内の建築現場の現状と、今後の住宅取得市況は
比較的、建築コストの低い木造が増えている現状ではありますが、やはり鉄筋コンクリート造の需要も根強い。
そのニーズに応えようと、各建築士も省コスト化に取り組んでいます。例えば建物の規模をコンパクトにしたり、躯体のボリュームを抑えたり、内装の仕上げを簡素化したりしながら、快適性・安全性などを追求し、予算とのバランスを図っています。
また、厳しい状況だからこそ、構造設計・設備設計・意匠設計・建設会社など建築に携わる専門家が一丸となってコスト減に努めることが必要不可欠です。関係者皆で知恵を絞って取り組むことで、先行きは明るくなるものだと信じています。
それを見込み、住宅取得の市況を「曇りのち晴れ」としました。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆

日本建築家協会沖縄支部
伊良波朝義 支部長
住宅も「保存と活用」の時代へ
―県内の建築費動向は
資材や人件費上昇の影響から、建築費はここ数年で急激に上昇しました。今は横ばいですが、今後下がる見込みはないでしょう。
―現状でもコスパ良く建てるには
比較的、地価の安い狭小地や変形地での建築相談が増えています。
立地によっては、賃貸併設型にしたり店舗兼住宅にして金銭的負担を軽減するという手もあります。
中古物件の活用も有効です。ただし、今年4月以降は建築物省エネ法の改正により、10平方メートル以上の増築などで確認申請が必要な場合、省エネ基準に適合させなければならず、費用がかさむケースもあるので注意が必要です。
―今後の住宅取得について
価格や環境面を考慮すると、「壊して建てる」という時代ではなくなっていくでしょう。空き家が増えている背景もあり、文化財だけでなく一般住宅も「保存・活用」にシフトチェンジしていかざるを得ないと思われます。
ヨーロッパなどの住まいは何百年も大切に住み継ぐのが当たり前で、その街らしい景観をつくり、歴史をつないでいます。
そうした変化を見据えて、住宅取得市況は「曇りのち晴れ」としました。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2035号・2025年01月04日紙面から掲載
第2035号・2025年01月04日紙面から掲載
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