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2020年10月16日更新

地元住民の車で回った南伊豆|多くの拠り所がある暮らし[7]

2019年の秋に約1カ月間、日本各地で多拠点生活してみた。その体験などを通して、定住にとらわれずにいくつかの生活の拠点を持つような新しい暮らし方について、連載で紹介する。(文・写真/久高友嗣)


個人の車をシェアして使う

鎌倉(第4回7月17日発行号)の次に訪れたのは静岡県伊豆半島の南端にある南伊豆町。この先関西圏へ向かうことを考えると、一つの家に寄るためだけにしては移動距離や交通費が割高になるため、行くかどうか迷った場所だった。だが、隣町の下田市にLivingAnywhereCommons(リビングエニウェアコモンズ。以下、LAC)という多拠点居住サービスを提供する団体の施設があり、タイミング良くイベントも開催されていたので行くことにした。


参加した下田市のイベント会場になっていた飲食施設。レストランのほか、ミーティングスペースなども設けられている。ここから3分歩いた先に元社員寮を改装したLACの施設がある

電車とレンタカーとで交通費に大差はなく、滞在する家周辺の移動手段はバスのみで本数も限られていたので、現地での動きやすさを考えてレンタカーを選んだ。レンタカーも、一般的なものでなく、以前から気になっていた個人間のカーシェアサービスを利用してみることにした。前日でも予約を受け付けてくれた同県三島市に住む人から車を借りて伊豆へ向かった。カーシェアで借りる車は「わ」ナンバーではない通常の地元ナンバーなので、観光客扱いをされず、地域になじんだ気分になった。


滞在した南伊豆の家。利用頻度が減った別荘の利活用として、所有者が多拠点居住サービス運営会社に貸している。車は地元住民からカーシェアで貸してもらったもの


元社員寮が多拠点生活施設に

下田市で開かれていたLAC主催のイベントは、地元住民とのまちあるきやワーケーション(観光地でテレワークする)体験などができるもの。10日間ほど開かれていたが、着いたのは最終日の食事会で、関係者らの打ち上げのようでもあり、多少アウェー感があった。以前、うるま市でも同じイベントがあって、そこで縁のあった主催者が施設を案内してくれ、会になじむよう取りはからってくれたおかげで、有意義な夜を過ごせた。


元は船会社の社員寮を改装した、LACの滞在施設の1階エントランス。4階建てで2~4階がゲストルームなっていて、LAC会員が滞在できる

LACが提供する施設は、主に企業の保養施設や廃校などの大型施設を改装し、コワーキングスペースやゲストルームなどを設けている。元々は船会社の社員寮だった下田の施設には37の個室、近くにある飲食施設にワーキングスペースがある。他の多拠点居住サービスのものとは違い、団体利用や中規模イベントなどとの相性の良さも感じた。当時は全国で2カ所だけだったが、現在はキャンプ場併設の施設や沖縄でも平安座島に開設されるなど、数も増えている。

南伊豆町に戻り、滞在した南伊豆の家は、敷地内に温泉があり、のどかな自然に囲まれた環境で居心地が良かった。当初は2泊の予定だったが、移動続きからの疲れもあって1泊延長し、リラックスできる滞在となった。


南伊豆の家は、別荘だったこともあり、離れに温泉があった。滞在中には1日に3回入った日もあり、とてもぜいたくな時間を味わえた


南伊豆から車で戻る際に寄った、同県沼津市にある、廃バスを改装した「休憩処The Old Bus」。ドリンクを飲みながら富士山を楽しめ、長年の営みの歴史が感じられる。今回の多拠点生活の中で最も印象深いお店だった

 
 久高友嗣/くだか・ともつぐ/1990年、那覇市生まれ。琉球大学卒業後、健康×ITの領域で起業。2018年からキャンプ団体「CAMPO(きゃんぽ)」の活動を開始。レジャーの枠を超えたキャンプをテーマに、用品の提供や遊休地などを利活用した場づくりなどを手掛ける

毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1815号・2020年10月16日紙面から掲載

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