防災
2020年10月2日更新
保育園の津波避難訓練|みんなの防災計画[18]
文・長堂政美
沖縄市にある愛の泉保育園は昨年11月、同園で作成した津波防災計画の実効性を確認するため、津波避難訓練を実施。安全に避難するには、地域の力が欠かせないことを再認識した。
地域の力が大きな援助
防災計画を訓練で検証沖縄市高原にある「愛の泉保育園」は海抜5㍍以下の低地帯に立地しています。東日本大震災を教訓にするとともに、南海トラフ巨大地震に伴う津波襲来も懸念されていることから、金城キヨ子園長は2014年に同園の津波防災計画を作成。私たち、防災サポート沖縄も支援しました。
昨年11月の「津波防災の日」には、県内一斉の津波防災訓練に合わせて、大津波が襲来することを想定した訓練を実施。作成した計画通りに避難できるのか検証してみました。
参加者は、園児96人を含む162人。保育園から公民館に避難し、そこで保護者に子どもたちを引き渡します。
訓練が始まると、2歳児以上の園児らは、机の下で身を守ったり、しっかり歩いて避難していました。避難支援協力員となっている地域住民や保護者が、園児の手を引いたり、駐車場で誘導したりと、協力してくれたことが大きな援助となったようです。
総合的に見て、計画通りに避難できたことで、現段階における計画の実効性は確認できました。ただし、今後も訓練を繰り返して、実際の津波に備え、計画を見直していくことが大切です。
訓練の流れ
【参加者】園児:96人 職員:26人 保護者:11人 地域住民:29人
①午前10時に沖縄県全域で強い揺れを観測したと想定。防災行政無線による緊急地震速報の訓練放送を受けて、身を守る行動を開始する
②大津波警報発表を、園内放送設備を使用して全職員に伝える。下写真は園内放送用のマイクを、防災行政無線の受信機に向けている様子
③津波第一波到達予定時刻をもとに、避難所である公民館まで避難できるかを判断。園長は職員に高原公民館への避難を指示する
④園庭に集合して人員確認した後、準備ができたら避難を開始する
避難の様子
⑤避難開始したことを、IP無線を使って沖縄市の保育・幼稚園課に報告する
⑥公民館に到着。二次行動として、園児、職員らは2階に垂直避難する
⑦保護者らに園児の安否情報を知らせる。方法は「公民館の電話を利用して、災害伝言ダイヤル171に録音」「緊急時連絡メールで一斉通知」「SNSを活用」など
⑧各担当主任は人員確認し、園児の健康状態などを園長に報告
⑨津波警報解除の連絡を受け、園児の引き渡し準備。保護者に引き渡しチェックシートを記入してもらう
⑩津波注意報も解除となり訓練終了。避難支援協力員など参加者と意見交換する
参加者の声
・園児らは放送や保育士の指示を聞き早歩きで避難できた。一方で、避難開始のタイミングが分かりにくかった
・信号がない場所は誘導係のおかげでスムーズに移動できた
・保育園の職員だけでの避難は厳しいので、日頃から地域住民に協力願いの声掛けをしておくことが大事
ながどう・まさみ/NPO法人防災サポート沖縄理事長、元沖縄市消防長
電話=098-923-4442
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1813号・2020年10月2日紙面から掲載