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2020年9月25日更新

閉館中に畳を入れ替え 時間と闘い伝統を知る|私たちの首里城[6]

首里城の畳の表替えや新調などをする、仲里畳店の仲里力さんに首里城に対する思いを語ってもらった。

閉館中に畳を入れ替え 時間と闘い伝統を知る|私たちの首里城[6]


仲里畳店 代表者 仲里 力さん



系図座・用物座の畳。仲里さんは「首里城はたくさんの人が訪れる場所。隣り合う畳の高さを合わせるため底にむしろを敷くなど、スピードとともに丁寧な仕事を心掛けました」


友人の紹介がきっかけで、8年前から、首里城内で使われる畳の表替えや新調をしてきました。

手掛けていたのは正殿の南側にある、書院・鎖之間、奥書院、系図座・用物座など。立ち入り禁止の広間などではなく、主に廊下やベンチといった、人が通ったり座ったりする場所や、太陽の日差しが当たって劣化している場所の畳です。それらを毎年、入れ替えていました。


ベンチの座面にも畳が使われていた

首里城の畳ということで重責を感じる一方、誇らしくもありました。ですが、そんなことを考える暇もないくらい、作業は時間との闘いでした。閉館後すぐに畳を運び出し、浦添にある自分の事務所で作業して、翌日の開館までに再び首里城に納めなければならなかったからです。

一晩で入れ替えられる畳の枚数は6~8枚程度。中でも、畳の縁に紋の入った「紋縁」の場合、隣の紋と図柄の位置を合わせる必要があったので、より気を使いました。そのため、いつでもきれいに仕上げられるように、首里城と同じ紋縁を使い、練習を重ねたりもしていました。


紋の入った縁「紋縁(もんぺり)」。隣の畳と紋の位置をそろえることで、見栄えが良くなる
 

先祖は尚円王?

実は両親は伊平屋島出身なのですが、もともとの先祖は伊是名島の人。高校生くらいのとき、たまたま家系図を見る機会があり、ルーツをたどっていってみると、そこには、「金丸」と書かれていました。第二尚氏王朝の初代国王である尚円王の即位前の名前です。本当かどうかは分からないですが、なんとなく縁のようなものを感じました。だから初めて仕事をもらったときは驚きました。

また、首里城は自分にとって勉強の場でもありました。正殿にある厚さ20センチの畳のような、この場所ならではの畳を実際に見て触れることができ、知識も深められました。当時のものに近付けるため、畳の土台も昔ながらの「わら床」で、密度の高い一等級を使っており、「細かいこだわりが、かつての畳職人から引き継がれている」と感じた覚えがあります。

燃えてしまったのはとても残念ですが、再建に携われるなら、ぜひ協力したい。そして、以前と変わらない首里城によみがえってもらいたいと思います。


なかざと・りき/1975年、浦添市生まれ。中学生の頃から、父が営む仲里畳店を手伝う。県外の大学を卒業し、東京で仕事をしていたが、28歳のときに沖縄に戻り本格的に畳職人の道に。2016年、仲里畳店を父から継ぎ、代表者になる。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1812号・2020年9月25日紙面から掲載

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出嶋佳祐

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「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。

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