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2020年8月28日更新
異国感漂う不思議な場 鮮やかさは雨に負けず|私たちの首里城[5]
首里城公園のオープン時から、首里城を撮り続けてきた写真家の比嘉秀明さんに首里城に対する思いを語ってもらった。
異国感漂う不思議な場 鮮やかさは雨に負けず|私たちの首里城[5]
写真家 比嘉 秀明さん
正月の「新春の宴」での一コマ。赤いお城を背景に、中国語で行われる儀式は異国のような雰囲気
首里城と関わり始めたのは、首里城公園オープンの頃。パンフレット用の写真撮影を依頼されたのがきっかけでした。
当時、首里にスタジオを開いたばかりだった私は、初めてその姿を見て、大きな漆器が置かれているようで驚きました。
それから、さまざまな行事や新しい建物の公開、「九州沖縄サミット」など、節目節目に撮影させてもらいました。
一番の特等席でそれらを見てきたのですが、両肩に大きなレンズの付いたカメラをかけ、脚立も持って仕事をしていたので、楽しむ余裕はありませんでした。それでも、真っ赤なお城をバックに、独特な服を着た人たちが中国語で儀式を行う様子は、「異国感」のある、とても不思議な空間だった印象があります。
近年は、年月がたち少しずつ風格も出始めていました。また、これまでは仕事として、晴れた日の首里城ばかり撮ってきましたが、これからは趣味として雨や曇りの日に撮ろうと考えていました。あの赤いお城は雨や曇りなんかには負けない鮮やかさがあったからです。
その矢先、焼失しました。
県民目線で新築を
燃えてしまったのは本当にショック。ちょうど前日の夜に、免許を取ったばかりの息子の運転で、首里城のライトアップを見に行ったところでした。ニュースが飛び込んできたのは、その数時間後です。
私は足が動きませんでした。映像を信じられず、見たくもありませんでした。何十年も通ううちに、いつの間にか思い入れが強くなっていたのでしょう。今思うと、しっかり見て、目に焼き付けておきたかったです。
あれから約10カ月、いまだに原因も責任の所在もはっきりしないままですが、新築に向けて話は進んでいるようです。
ただ、寄付や援助に頼るだけでは、県民の思い入れは生まれにくい。かつては国頭から木を運ぶ苦労があったから歌や踊りが生まれ、県民から親しまれた。そんなふうに県民全体で取り組める仕掛けがあるといいですね。
そして県民が日常的に遊びに行ける場になれば、さらにいい。格式張った行事ばかりでなく、ストリートピアノのように、誰でも弾いていい三線を置いておくのも面白そう。県民主体、県民目線での首里城になってほしい。
写真右手から昇る朝日を浴びながら儀式が執り行われた
ひが・ひであき/名護市出身。26歳で東京のカメラマンに弟子入り。独立し、35歳で沖縄に戻る。料理や婚礼など幅広く撮影。タイムス住宅新聞の「お住まい拝見」や、ほーむぷらざの「彩職賢美」の写真も担当する。
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1808号・2020年8月28日紙面から掲載
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この記事のキュレーター
- スタッフ
- 出嶋佳祐
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編集者
「週刊タイムス住宅新聞」の記事を書く。映画、落語、図書館、散歩、糖分、変な生き物をこよなく愛し、周囲にもダダ漏れ状態のはずなのに、名前を入力すると考えていることが分かるサイトで表示されるのは「秘」のみ。誰にも見つからないように隠しているのは能ある鷹のごとくいざというときに出す「爪」程度だが、これに関してはきっちり隠し通せており、自分でもその在り処は分からない。取材しながら爪探し中。