リフォーム
2015年5月8日更新
費用積み立て確実に補修|メンテでお得 すまい長持ち[2]
本連載は資金の工面を踏まえ、確実にメンテナンスしていく術を取り上げる。今回は建築費に占めるメンテナンス費の割合や、30年間で出てくる補修を見ていく。建物の構造、設備の設計に詳しい建築士の新里尚次郎さん(37)は、「マンションのように費用を積み立て、10年ごとにメンテナンスしていけば、確実に長く住める」とアドバイスする。
管理しやすい家②
10年で建築費の1割必要
新築から30年間に想定されるメンテナンス(一例)
「10年ごとにメンテナンスを繰り返すことで建物の寿命が10年は延ばせる」と新里さん/表
新築から30年間住み続けるために、新里さんが想定されるメンテナンスとして挙げるのが、築10年での外壁塗装や屋上の防水塗装の塗り直し、衛生器具の交換など(表)。それを20年、30年と繰り返す。
根拠として、外壁や防水に使う塗料の耐久性を指摘する。紫外線の強い沖縄は塗料の劣化が早く、耐用年数は10年が限界だからだ。「10年単位でこまめに手入れする方が、コンクリートのはがれなどの劣化を防ぎ、大掛かりで多額な補修をしないで済む」と強調する。
金額は、外壁の塗装など建物に掛かる費用が100万~130万円ほど、衛生器具の交換など設備に関するものは100万~150万円ほど。合計すると、200万~280万円ほどになる(材料や機器のグレードによって変わる)。
そのほか、住み手の年齢や体の状態によっては、バリアフリー化の工事にも備える必要がある。「30万~100万円は、見積もっておきたい」と新里さん。
新築当初から工面
では、300万円弱にもなるメンテナンス費を、どう工面していけばいいか。新里さんが提案するのは、分譲マンションの修繕積立金のように、一戸建てでも月々積み立てる方法だ(下記参照)。
新里さんによると、積み立てる額をメンテナンス費から逆算すると、10年では建築費の10%ほどになるという。30年なら30%ほど。例えば建築費2500万円なら、メンテナンス費は250万円ほどだ。当然、建築費が上がるほど、メンテナンス費も高くなってくる。
専門家による定期点検の結果、築10年での補修をしないで済むケースも考えられる。その際、積立金はためておき、来るべき補修に備えるのも一つの手だ。
「一戸建てのメンテナンスが行き届かないのは、新築当初から費用を工面していないことに、大きな原因がある。そこが変われば、今のわが家で、確実に長く住み続けられると思う」と話した。
どうしたら工面できる?
生命保険見直し検討
本文で例として挙げた、建築費2500万円の住宅のメンテナンス費は、10年間で250万円ほど。月額だと2万1000円ほど積み立てる必要がある。
どうしたら捻出できるか、ファイナンシャル・プランナーの慶田城裕さん(50)に聞いた。
効果の大きさで挙げたのは、生命保険の見直し。住宅ローンの団体信用生命保険(団信)への加入で、保険金が必要以上に増えている場合が多いためだ。「残された家族が生活できるだけの保険金を確保した上で、以前から加入している生命保険を見直す。そうすれば、保険料を抑えられ、貯蓄にも回せる」と指摘。細かいことでは、外食や飲み会の回数を抑えるのも有効とした。
一方、国土交通省の修繕積立金に関するガイドラインを基に、分譲マンションでも算出した。それによると、専有面積50平方㍍の2LDKで月額1万900円、70平方メートルの3LDKで月額1万5260円と、一戸建てに比べて安い(1平方メートル当たり月額218円)。戸数の多さでカバーしている点が主な要因だ。
この人に聞きました
新里尚次郎(しんざと・しょうじろう)
1977年、浦添市生まれ。アーキテクトラボ.ハローム代表。二級建築士。建物の劣化診断や耐震基準適合証明書の発行、設備の定期調査を行う
編 集/我那覇宗貴
毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞 「メンテでお得 すまい長持ち」<2>」第1531号・2015年5月8日紙面から掲載