相続税の債務控除に落とし穴!?［相続計画始めよう！地主・家主の生前対策⑬］

相続税の債務控除に落とし穴!?

家族がもめないための「幸せ相続計画」の普及・啓蒙をしている全国幸せ相続計画ネットワークに寄せられた相談をもとに、生前対策を紹介する。
  アパートメーカーから提案された、所有する土地へのアパート建設についての相談。「1億6000万円を借り入れ、相続税の債務控除として活用すると相続税が0円になる」と説明された。本当かどうか知りたい。
分け方で相続税が変わる

地主さんの所には、アパートメーカーなどから今回のような提案が数多く来ると思います。その際「債務控除を使って相続税をゼロにしよう」「節税対策しよう」と言われることも多いでしょう。

相続税はプラスの財産からマイナスの財産を差し引いて算定されます。今回の場合は借り入れがマイナスの財産（債務）になるため、基礎控除も差し引くと、課税価格がゼロになるという考え方です。しかし、ここで注意しなければならないのは分け方です。

相談者も自分なりに分け方を考えていました。

【相談者が考えた分け方】
・配偶者→無し(持病があり体が弱いため)
・長男→築15年のアパート(保証人が長男。アパートローン残金は5000万円)
・長女→自宅＋隣接する更地＋畑＋軍用地(病弱な配偶者の世話をしてもらうため多めに分ける)
・次男→アパートメーカー提案の新築アパート(借り入れは1億6000万円)

相続税は個別に分けた財産について、課税対象となる額を決めます。相談者が考えた通りの分け方にすると、長男がもらう築15年のアパートの相続税評価額は約6500万円で債務が5000万円あるので、差し引いた1500万円に相続税がかかります。

長女は、自宅や更地など約1億3000万円の財産を受け取り、債務は0。そのため1億3000万円すべてに相続税がかかります。

一方、アパートを建てる予定の次男は、アパートの相続税評価額が約7000万円。アパートローンの借り入れ予定額が1億6000万円となり、結果的にマイナスの財産が多く、相続税は課税されないことになります。ここで出てきたマイナスの財産は他の兄弟に振り分けることができません。

債務の総額が2億1000万円でも、相談者の分け方に沿って考えると実際に使える債務控除の額は約1億2000万円。課税額の合計は0円にはなりません。

シミュレーションで最適化

相続税は「どの財産を誰が相続したか」が前提で、分け方が決まってから税額が計算されます。そのため、債務控除は財産の分け方をしっかり考えることが大切です。 今回の相談では、仮にアパートメーカーの提案通り進めていたら相続税がかからないはずが、相談者の分け方を加味すると、約1200万円の相続税がかかる羽目に！ 節税のつもりが逆に税額が高くなってしまいます。
 
相続税の節税対策も財産の分け方をシミュレーションしながら、自分や家族にとって何が最適か考えましょう。

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第2050号・2025年4月18日掲載