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2023年9月1日更新

「認知症に備えた家族信託」|親の資産を柔軟に運用[失敗から学ぶ不動産相続⑱]

今週の旧盆では、ご先祖さまの思い出話や家族のこれからを語り合う良い時間を過ごされましたか。今後も家族みんな仲良く笑顔で暮らすためにも、気軽に相続の話題が出せるよう本コラムがお役に立てれば幸いです。

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「認知症に備えた家族信託」

親の資産を柔軟に運用

今週の旧盆では、ご先祖さまの思い出話や家族のこれからを語り合う良い時間を過ごされましたか。今後も家族みんな仲良く笑顔で暮らすためにも、気軽に相続の話題が出せるよう本コラムがお役に立てれば幸いです。


所有権移っても贈与税なし

超高齢化社会を迎え、寿命が大きく伸びていることが喜ばしい半面、認知症などもあって、最後まで判断能力を持ち続けるのが難しくなってきました。

ひとたび認知症と診断されると、契約行為ができなくなるどころか、自身名義の預貯金口座からの現金の引き出しもできなくなります。そうならないために活用されているのが「家族信託」という制度です。

これは、子や孫など信頼できる家族を受託者として、財産の管理や運用、処分を委託する制度。今回の場合、父が認知症になる前であれば、父を委託者、長男を受託者、父を受益者とすることで、住居兼アパートの所有権と管理運用は長男、そこから発生する賃料などは受益者である父が受け取るという内容の信託契約を組むことができます=下イメージ図。また、あらかじめ父が亡くなった後の受益者を母にしておくことで、父亡き後も母の生活を守ることができます。

家族信託は信託契約を結ぶ必要があることから、委託者に判断能力があることが前提となります。そのため今回は父が認知症になったことで残念ながら締結できませんでした。家族信託をはじめ「相続対策は元気なうちに!」が基本です。

また、一般的に家族信託は裁判所などに関係なく、柔軟に資産の運用方法を決めることが可能です。所有権が受託者に移った場合も贈与税は発生しません。お互いの都合が悪くなった場合は合意の上でキャンセルすることもできます。


家族信託の例(イメージ)


後見人制度なら裁判所の許可必要

認知症といえば後見人制度がよく知られていますが、家族信託と違って、財産の運用や処分方法を柔軟に指定できません。後見人制度の場合、住居兼アパートの所有権は被後見人(今回の場合は父)にあるため、被後見人の財産を守る義務がある後見人が住居兼アパートの建て替えや売却をするには家庭裁判所の許可が必要となります。

 
【概要と経緯】
相談者は長男。両親は、父が所有する住居兼アパートからの賃料収入で生活費を賄っている。この住居兼アパートは築40年を超えて老朽化が著しいため、5年後には長男名義で建て替え、または売却し両親の生活費に充てようと計画していた。しかし、昨年父が認知症と診断され施設へ入所することとなった。
 


【どうなったか?】
住居兼アパートの所有者である父が認知症による判断能力の低下で契約行為ができなくなったため、建物の取り壊しはもちろん、土地・建物の売却もできなくなってしまった。また大規模修繕もできないことから入居者が減ってしまい、生活費のもととなる賃料収入も大きく目減りしてしまった。
 
【今回のポイント】
・認知症と診断されると家族信託はできないので早めの取り組みを
・家族信託をしていれば、財産の活用や処分方法などを柔軟に指定できる。また、受益者や受益期間の指定もできるので安心して生活可能
・家族信託の場合、不動産を受託者の名義に移しても贈与税は発生しない


用語説明
「家族信託」
認知症などに備え、信頼できる家族に財産の運用や活用を託す仕組み。信託する内容が決まったら公正証書の作成や登記申請を行う必要があるため、専門家への依頼がおすすめ。


友利真由美/(株)エレファントライフ
[執筆者]
ともりまゆみ/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。
電話=098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1965号・2023年9月1日紙面から掲載

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