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2023年7月7日更新

売却すると相続税が倍に[失敗から学ぶ不動産相続⑯]

第二次世界大戦の痕跡として、沖縄には広大な米軍基地が残っています。軍用地と呼ばれるこの土地がいま、意外な形で注目されています。

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軍用地の相続税

売却すると相続税が倍に

第二次世界大戦の痕跡として、沖縄には広大な米軍基地が残っています。軍用地と呼ばれるこの土地がいま、意外な形で注目されています。


県外の富裕層が注目

米軍基地が集中する中南部地域でよく聞く「軍用地」という言葉。戦前に日本軍が強制接収し、戦後には米軍によって新たに強制接収された土地であり、現在では国が借り主となって所有者に借地料を支払っています。

そんな沖縄ならではの時代背景をもつ軍用地が今、県外から相続税対策に有益な不動産として注目を集めています。軍用地は国が借り上げている借地ですので、相続税評価額を算定する際には路線価ではなく、固定資産評価額に公用地の倍率を乗算し、さらに借地権割合を除算して計算します。簡単な例でざっくり説明すると、市場価格5000万円で取引されている軍用地が、相続税を計算する際の相続税評価額ではその半分程度の2500万円で評価されるということです(施設名や地目によって多少の違いがあります)。

相続税率が20%だった場合、現金5000万円のままだと相続税は1000万円ですが、その5000万円で軍用地を購入することで相続税評価額が2500万円となり、相続税は500万円になります。

相続税対策に購入し相続が発生して相続税の納付を終えた後は市場価格で売却することができますし、毎年借地料が支払われますのでそのまま所有してもリスクの低い資産として運用することができます。

上記のような理由から、県外の富裕層から相続税対策の商品として軍用地が注目され、市場価格も高騰しています。


軍用地担保の融資制度も

さて、今回の相談に戻りますが、被相続人が所有していた軍用地の相続税評価額は、市場価格5000万円の半分程度と推測されます。しかし売却してしまい現金5000万円に形を変えたことで、相続税評価額は5000万円となり、相続税の負担が大きくなるという結果になってしまいました。

軍用地を所有されている方で相続税の支払いが心配な方は、まずは専門家に相続税評価額の概算を調べてもらいましょう。その上で相続税の支払いに現金が必要な場合は、軍用地主会や金融機関で軍用地を担保に低金利で融資する制度がありますので、売却する前にこちらを上手に活用されてみてはいかがでしょうか。ご先祖さまから代々受け継いだ大事な資産である軍用地をしっかり守って次の世代に引き継ぐためにも、専門家を上手に活用しましょう。

 
【概要と経緯】
被相続人の財産は、自宅の土地・建物と先祖代々受け継いできた軍用地のほか、現金預金が300万円。被相続人は自分亡き後に、妻や子に相続税の負担を負わせたくないと考えていた。あるとき「価格が上がっている軍用地を手放せば、相続税が低く抑えられ、現金化することで相続税の支払いも問題なくなる」と思い、軍用地を5000万円で売却した。
 
売却すると相続税が倍に[失敗から学ぶ不動産相続⑯]


【どうなったか?】
被相続人が亡くなり、相続が発生。税理士に相続税の計算をお願いしたところ、軍用地を売却しないほうが相続税が低かったことが判明した。被相続人の妻はせめてもの思いで売却した軍用地を買い戻そうとしたが、現在の所有者に5500万円で売値を提示され、買い戻しを断念した。
 
【今回のポイント】
・相続税は不動産の市場価格ではなく相続税評価額で計算される
・軍用地は相続税評価額が低く、相続税対策に利用されている
・軍用地主会や金融機関は軍用地主向けに融資をおこなっている
・軍用地を所有する方の相続対策は自己判断せず専門家に相談を


用語説明
「軍用地」
米軍基地や自衛隊基地用に国が借り上げた土地のこと。毎年、国から借地料が支払われる。誰でも不動産会社を通じて購入することができるので、最近では相続税対策だけでなく超低リスクの不動産資産として、人気も価格も高騰している。


友利真由美/(株)エレファントライフ
[執筆者]
ともりまゆみ/(株)エレファントライフ・ともりまゆみ事務所代表。相続に特化した不動産専門ファイナンシャルプランナーとして各士業と連携し、もめない相続のためのカウンセリングを行う。
電話=098・988・8247

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毎週金曜日発行・週刊タイムス住宅新聞
第1957号・2023年7月7日紙面から掲載

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